「デフレの正体」、「里山資本主義」などの著書で有名な藻谷浩介さんが福井の大野市で講演をされるというので、話を聞きに行きました。テーマは、「大野に住む私たちは、これから何を行い、何を残していくか」。用意した椅子が足りなくなるほど、結局市内外から250人以上が熱心に聞いていました。
以下は、記憶に残ったポイントです。
・大野は「奥地」などではなく、中部縦貫道が通れば名古屋へ、またリニア経由で東京まで、福井県内で最も早く行けるところ。
・地域活性化とは、交通が便利になることや工場誘致、景気回復ではなく、人口が減らなくなること。そのためには、若者が戻り、子供が生まれ続けることが必要。何よりも、地元の人が自らの地域に誇りを感じていないから人口が流出してしまう。域外の人に褒めてもらえると、自分の地域の良さがわかる
・「うちには何もない」「そんなの当たり前」と言っている地域に将来はない。地域のモノを「ありがたい」と思う地域こそが生き残る。
・子供や生産年齢人口が減るのは、大野・東京含め、全国どこでもあること。ただし、大野は高齢者が微増だが、東京は高齢者が今後激増して医療・福祉が足りなくなる。大野は、その点、老人が大きく増えるわけではない分、今若者受け入れや子育て支援に投資すれば、人口を下げ止めることにできる。
・高度成長期の大都市のように、若者を集めた地域は将来急速に高齢化が進む。逆に、長野県下條村のように、かつて批判されながらも子育て支援に投資してきたところは、子供も老人も全体の人口も安定的に推移する。
・島根県邑南町は、数年前から子育て支援や移住促進強化を行ってきた結果、転入者が転出者を上回ることになったほか、出生率も2.65と高い。こちらでは、地域食材を使った本格イタリアンレストランなどで、外貨を獲得し、カネを域内で回している。
・地域への入込客数を増やすより、地域でのカネの使い方を工夫すべき。「域外のものに金を使う」、「カネを稼いだ地元の人が貯め込むだけ」、のではだめで、高品質の地場のモノで外貨を獲得し、カネを稼いだ人が地域内で使い、カネが地域で循環する仕組みを作るべき。例えば、兼業を認める、雇用を増やす、地産地消を心掛ける、地域内業者に発注する、地代・家賃を地元向けには安くする、地産エネルギーの消費など。例えば、大野市民が一人年間100万円消費するとして、その1%を地域での消費に回せば、3億円が地元に落ちる。この場合、年間300万円の人件費がかかる人が100人雇える。
・東京は20-30代の女性の就業率が低い一方で出生率も低い。福井はどちらも高い。このような地域こそ可能性がある。
藻谷氏の講演、書を読むより、迫力あって興味深かったです!