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車椅子ユーザー叩き

2024年03月29日 | 話題
最近、X(旧ツイッター)のあちこちで炎上していて、YouTubeのコメント欄にもちょっと延焼していた事柄に車椅子ユーザーのあるクレームがありました。

Xを代表とするsnsの記事って、読んでいて精神衛生に物凄く悪いものが多いので、読まない方が良いのだけれど、くだんの車椅子ユーザーを叩く人達の在り方・考え方は結構普段から目にし耳にしていたので、ちょっと書いてみたいと思います。

私の記憶なので若干の間違いもあるかもしれませんが、そもそもの話は、ある女性の車椅子ユーザーが、いつも利用している映画館で、車椅子専用の席は一番前になっていて、脊椎に障害もあって2時間も見上げて見るのが辛いので、追加料金を払ってリクライニングの席に行くのに、段差があってスタッフが二人がかりで車椅子を持ち上げなければならなかったらしい。

いつものようにそのようにして映画を見終わると、映画館の支配人が彼女の元に訪れ、スタッフの数も限られているし、何か事故があっても責任が取れないので、次回からは車椅子ユーザーに対応できる別の映画館に行ってほしいと言われ、久しぶりに悔しい思いをしたということをXに書き込んだことが発端だったみたいです。

このこと自体は色々と背景の事情もあるのでここでは踏み込みません。問題なのはその後に続いた何百という車椅子ユーザーへの非難の嵐の方でした。
誰かが別の場所で少しでもその車椅子ユーザーを擁護する発言をXですると、そこでもまた同じ炎上が勃発するわけです。
一言でいうと、人に迷惑をかける存在でありながら、権利ばかり主張する、ワガママな障碍者というわけです。

叩く人は徹底的に叩きのめさないと気が済まないみたいです。
その車椅子ユーザーが正しいか正しくないかは関係なく、何百人がかりで寄ってたかって叩くその執拗さに驚くし、日本の社会って荒れてんなと思います。
ネットリンチで、これじゃあ自殺者も出るのもよく分かります。

ただ私の母も、元気で生きていた時はテレビで障碍者が何か言うと「障碍者なのに偉そうに」などと言っていました。
その母も亡くなる8年くらい前から失明し、車椅子を利用する障碍者になってましたけど。

日本人って、子供のしつけのいの一番は「人様に迷惑をかけるな」で、障碍者はそのルールから外れた存在なので、当然のように小さくなって生きていなくてはならないと思いこんでいたのだと思います。
かくいう私も、自覚せず同じような思い込みを持っていたみたいです。

そういう思い込みが無くなったのは、私自身が車椅子ユーザーになる経験をしたからです。
私は今まで2度車椅子ユーザーになってます。

ちょっと前にも触れたのですが、30代の半ばくらいの頃、胃にポリープができて、取った方が良いということになりました。
医師は最初は日帰りでできる処置だと言ってました。

ところが私は、血小板減少症という、一度出血すると止まりにくい血液の病気を持っています。
それを慮ってか、医師は念のために一泊入院してもらうと言いました。
そして処置の時、ポリーブを取るや否や「出血が止まらん」と医師は言い、看護師に安静の指示を出し、トイレに行くにも車椅子で行くことになったのです。
入院は1週間続きました。

私は4人部屋に連れていかれたのですが、看護師さんは私がトイレに行かなくてもよいようにベッドの脇にポータブルトイレを置き、そこで用を足すように言いました。
もちろん用を足すときはカーテンを閉めます。
ところが、カーテンを閉めて用を足そうとしても出来ないのです。
用を足せない、平たく言うとおしっこが出ない・・・。

原因は場所による心理的緊張だったみたいです。
私のベッドの位置は部屋の扉のすぐ横で、人の出入りが一番響く所。
そして人はしょっちゅう出入りします。
看護師さんや医師だけでなく、お見舞いの人達やら入院患者自身も歩き回っていて、そんな場所で薄いカーテンをしただけで用など足せない。
カーテンを閉めるから用を足してるって分かるし。

でも用を足さないわけにはいかない。
特に胃を養生しているので、栄養輸液を24時間点滴で体内に入れており、普段は行かない夜中でも用を足したいのでした。
仕方なく看護師さんを呼んでトイレまで車椅子で連れて行ってもらってました。

もちろん私はポータブルトイレが使用出来ないことを謝罪し、「申し訳ないです」とか「すみません」とか、終わってからは「ありがとうございました」とか、言えるだけのことは繰り返し言って連れて行ってもらっていたのです。
看護師さんも「みどりさんの年齢ならできないでしょうね」と言ってくれてました。

部屋のポータブルトイレが使用できるかどうか、年齢が関係あるのかと思われそうですが、高齢になるとそんなことが平気になってしまうみたいです。
事実、別の病気での入院時、同じ部屋の高齢女性はカーテンも閉めずに用を足していて、最中に目が合って気まずい思いをしたこともありました。
齢を取った今、私が大部屋でベッドのわきのポータブルトイレを使用できるかどうか分かりません。

ただ真夜中で、人の出入りがなく、誰もが寝静まっている時は、私もベッドわきのポータブルトイレを使用することができました。
別の病気で入院時、一人部屋だった時は昼間でも部屋に置いてあったポータブルトイレを使用できていました。
やはり人の耳や目が気になっていたのだと思います。

とにかく、そうやって毎日、昼間にトイレに連れて行ってもらっていたのですが、さすがに「申し訳ありません」とか「ありがとうございました」と言い続けることに疲労感を覚えてきました。
そこまで言わなあかんのかと。
私にそれを言わせているのは何かとか。

それは、それこそ人に迷惑をかける存在は小さくなって生きていなければならないという考えだったのでした。
とりわけその時の私は、せっかく病院が用意したベッドわきのポータブルトイレを心理的抵抗感から使用できないという負い目が大きかったのでした。
でも、それって私のワガママ?

私はすぐに良くなって退院しましたが、自分の意識はかなり変わりました。
それが必要なら、車椅子ユーザーは少々のワガママを言っていいと私は思っています。
車椅子を介助する場合も、相手からお礼を言われたら「お気遣いはいりませんよ。当然のことですから」と言おうと思ってます。

誰もなりたくって車椅子ユーザーになるわけではないし、高齢になれば誰だって障碍者になる確率が高くなりますからね。




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8 コメント

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Unknown (suisuimeda)
2024-03-30 00:08:05
う〜ん確かに権利ばかり主張する障害者も居るんですけどね・・障害者って事に甘えてるなって感じることもあります。
私は車椅子を使わない軽度の肢体障害者ですが、使ってる施設(障害者のための施設)では「私達は肢体障害者なんだから、もっと優しくして」など、障害者を前面に出してくる人がいます。出来ることでも「そんなの障害者に、やらせないで」って。人様に迷惑をかけないって親から言われてる筈の人達が、障害者になった時に【障害者】と言う言葉に甘えてる事も確かなんですよね。
ただ、今回の映画館の出来事をSNSで流したことによって叩かれると云うのは、あってはならない事だと思います・・
よくSNSの誹謗中傷を耳にしますが、実名を出さないから好き勝手な事を言うんだろうなって思ってます(私も不愉快になりたくないからツイッター、今はXでしたか?それは見ませんけどね)
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X嫌悪 (にゃんころりん)
2024-03-30 09:30:32
こんにちは。

イオンシネマでのやりとりですね。
グランシアターはバリアフリーではないと知っていたようですから助っ人を
同伴するか、事前に施設側に確認すればよかったのにと思います。
ご本人は「以前はしてくれたのに」と言っていますが、スタッフも変わるし
毎回OKかどうかはわからないと思います。
もし事故が起きたら、本人もシアターのスタッフも大変なことになります。
なので支配人の提案も理解できます。

まっ、そんなことより恐ろしいのはSNSでの非難中傷です。匿名だから言
いたい放題ですが、それにしてもえげつない。一体どんな輩なのだろうかと、
本人をみてみたいです。
もっと法的に取り締まるべきだと思いますが、法とシステムの壁に阻まれて
なかなか難しそうですね。
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suisuimeda様 (みどり)
2024-03-30 12:04:22
suisuimedaさん、こんにちは。
私の考えでは、できないことに対する介助や介護であって、当人ができることなのに「障碍者だからやって」はないと思います。
そういう人もいるんでしょうけど。
障碍者だけでなく社会的弱者を売りにする人は一定数いつもいるように思います。
当事者だけでなく所謂活動家みたいな人達も。
本来は障碍者と健常者は画然と分けられるものではなく、一人の人の中でも入り混じってあるものだと思うのです。
だからこそ障碍者を特別扱いするのではなく、誰でも障碍の時も生きやすいようにするのが理想だと思うのです。
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にゃんころりん様 (みどり)
2024-03-30 12:14:45
今回の件、当人とイオン側とは話し合いの場が持たれ、建設的な方向で決着がついたみたいですね。
問題はsnsでの炎上でしょうか。
すでにsnsだけでなく、本人は講演なんかも行っているインフルエンサーなので、実生活の方でも嫌がらせを受けているようです。
皇室バッシングなんかでも共通するのは、自分達の支払った税金で優遇された生活を送っている人間がいるという強烈な被害者意識でしょうか。
で、叩きやすい人間を叩いている感じ。
どうにかならないでしょうかね。
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Unknown (keba)
2024-03-30 23:35:13
その方の書き振りがどうだったのか?というのもありかもしれませんが、
あたしはそういうのにあえて反論で反応するメンタリティは持ち合わせてないです。

日本に帰国して1番最初に感じたのは、路上に身障者がいないってことでした。
街の様子が違うんですよ、車椅子や杖をついた人が歩行者ちしているかないかで。
イギリスではそういうのが当たり前で、当たり前にみんな接していたので、日本の状況が異常に感じました。
もう40年近く前のことなのですけど。

自分が支援を受けないでいい身だという、五体満足に産んでもらったことや
事故や病気で身体障害者になったりしていないことに対する感謝の念、
感じられないんでしょうね、そんなコメントするなんて。
それはそれで不幸な人生ですよね。
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Unknown (pukariko)
2024-03-31 09:04:48
こんにちは。
世の中がどんどん不寛容になっている気がします。
公園の子供の声がうるさい、などもそう。弱者に厳しい。
世の中、健常者強者だけで出来ているわけじゃなく、
自分もいつ弱者になるかもしれないのに、
想像力がないんでしょうかね。
snsは匿名で何でも書けてしまうことが問題ですね。
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keba様 (みどり)
2024-03-31 16:51:43
日本も昔と比べれば随分よくなった方だと思います。
バスや電車で車椅子の乗車は当たり前になってますから。
昼間バスに乗ると、高齢者と身体障害者しか乗っていません。(私もその内の一人)
バッシングしている人達は余裕が全くない印象です。
今はどこも人手不足で、働いている人達はしんどい思いをしています。
それは分かるのですが、その鬱憤晴らしが映画館の対応にクレームをつけた障碍者にだけ向かっている。
彼ら、映画館で働く人には物凄く同情的なのですよ。
短絡的というか近視眼的というか、障碍者には思いが及ばないのです。
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pukariko様 (みどり)
2024-03-31 17:07:06
バッシングしている人、自分達がバッシングしているとは思っていないだろうし、自分達が強者だとも思っていないみたい。
誰にも迷惑をかけず、まじめに働いていて、健常者であるがゆえに何一つとして優遇されてもいない、そういう存在だと思っている感じ。
今回の障碍者は人に迷惑かけまくりの癖に健常者に対してまだ理解やら権利やらを要求する悪質なクレーマーってところでしょうか。
他者に対する寛容さって、結局余裕から生まれるものかもしれません。
今の日本、特に現役世代の人達、まったく余裕というものがないのかもしれません。
だからといって、自分とは異なる立場の人をsnsでバッシングして良いわけではないですけど。
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