宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙の加速膨張に迫る “バリオン音響振動分光サーベイ”

2014年01月11日 | 宇宙 space
観測プロジェクト“バリオン音響振動分光サーベイ”が、60億光年彼方の銀河までの距離を、
誤差1%の高精度で観測することに成功しました。

このことは、宇宙の膨張を加速させると考えられている、謎のダークエネルギーの正体解明につながると期待されているんですねー





バリオン音響振動の波紋
宇宙誕生まもない頃の密度のゆらぎ(左端:緑と赤の濃淡)が、数十億年後の銀河密度分布として表れる(右端)



これまで、これほどの高い精度で距離が測定できた天体は、天の川銀河の中にある太陽から数千光年以内の星々だけでした。

今回の測定は“バリオン音響振動”と呼ばれる、宇宙に存在する銀河の分布に周期的に現れる波紋を測定するという、新しい方法で行われています。

近傍(現代)から遠方(昔)まで、およそ120万個の銀河の位置を測定して、その密度分布から波紋の大きさ(みかけの角度)を観測すると、銀河までの正確な距離が分かります。

そして、宇宙の歴史における、各時代ごとの波紋の大きさを調べることにより、宇宙膨張が時間と共にどのように変化してきたのか? なぜ膨張が加速し始めたのか? の手掛かりを得ることができるんですねー

正体不明のエネルギー(ダークエネルギー)によると考えられている宇宙の加速膨張を、アインシュタインの重力理論の修正によって説明しようとする試みがあるのですが、今回測定された銀河地図を利用した別の研究成果で、この理論を検証しています。

この重力理論の検証は、1億光年という大きなスケールで、重力的に銀河がどう集まっているのかを観測し、赤方偏移歪みと呼ばれる効果を精密に測定しておこなわれています。

残念ながら、今回の観測ではアインシュタインの重力理論に修正が必要な、積極的な証拠は見つかりませんでした。

赤方偏移歪みによる重力理論の検証は、宇宙加速膨張の謎に迫るうえで、“バリオン音響振動”による距離測定とは相補的な役割を果たすそうです。

今のところ“バリオン音響振動分光サーベイ”の測定結果では、ダークエネルギーの働きは宇宙誕生以来変化していないことを示唆しています。

現在の宇宙の姿や、大規模構造を説明する宇宙モデルは、さらに裏付けを得て強固なものになったようですよ。