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低金属量の恒星の周囲には、複数の岩石惑星を持つ小さな惑星系が形成されやすい

2018年12月03日 | 宇宙 space
700個の恒星とその周りの系外惑星に関する研究から、複数の岩石惑星を持つ小さな惑星系は、重元素が多い恒星よりも低金属量の恒星の周囲に形成されやすいことが分かったそうです。


太陽よりも金属量が少ない恒星

イェール大学の研究チームの研究によると、複数の惑星を持つ小さな惑星系は、ヘリウムより重い全ての元素(天文学では“重元素”や“金属”と呼ぶ)が好きではないようです。

酸素やケイ素、鉄などは、地球のような小さい岩石惑星の主成分になる元素です。

研究チームは、700個の恒星とその周囲の惑星を観測してあることに気付きます。
それは、複数の惑星からなる小さな惑星系は、太陽よりも金属量(重元素量)が少ない低金属量星の周囲に作られやすいということでした。
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低金属量星の周囲に存在するコンパクトな複数惑星系(イメージ図)。
最近まで系外惑星探しは、大きい惑星に対して重点的に行われてきました。

これは、小さい惑星を検出するには観測機器の精度が不十分だったため。
ただ、今後は超精密分光器“EXPRES”などの活躍によって、小さい惑星の発見も可能になるそうです。

今回の研究成果と合わせると、小さな複数惑星系はこれまでに想像されていたよりも多く存在していると考えられます。

また、低金属量星の寿命が長く、こうした小さな複数惑星系は最初に作られた惑星系かもしれないとも考えられるので、地球外生命を探す上で理想的な対象になるようです。


鉄に対するケイ素の比率が高いと小さな惑星が作られやすい

研究チームが2005年に発表した成果として、恒星に含まれる重元素が多いほど、その周囲に木星のような巨大ガス惑星が形成される可能性が高くなるというものがあります。

この説は、微惑星同士の衝突合体でできたコアが、原子惑星系円盤中のガスを捕獲して木星型惑星が形成されるという“コア集積モデル”を強く支持するもので、惑星形成のメカニズムとして確立されています。

でも、小さい惑星の形成に関する理解は、困難な課題として残っていました。

複数の惑星が存在するコンパクトな惑星系が、低金属量星の周囲に形成される可能性が高いという発見は、天の川銀河内で最も一般的な惑星系の理解に繋がる、新しく重要な手がかりを示す成果になります。

さらに、今回の研究で示されたのは、低金属量星では鉄に対するケイ素の比率が高いこと。
惑星の誕生現場における鉄とケイ素の関係を調べていくと、別の面白いことが分かるかもしれません。

鉄に対するケイ素の比率が、温度を調整するためのサーモスタットのような役割を果たし、この比率が上昇すると小さな岩石惑星の形成が増えるようです。

小さな岩石惑星の形成にとって、ケイ素は秘密の材料なのかもしれませんね。


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