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木星からガスを剥いだような系外惑星を発見! 巨大ガス惑星の核を観測するチャンスかも

2020年07月15日 | 宇宙 space
地球のような高密度の惑星としては観測史上最大のものが見つかりました。
ただ、この惑星は変わっていて、巨大ガス惑星からガスをとって核だけをむき出しにしたような姿をしていたんですねー


地球並みの密度を持つ最大質量の惑星

今回、イギリス・ウォーリック大学の研究チームが見つけたのは、ろ座の方向約730光年の彼方に位置する恒星“TOI 849 b”。

観測には、ヨーロッパ南天天文台のパラナル天文台に設置されている望遠鏡群“次世代トランジットサーベイ”と、同じくヨーロッパ南天天文台のラ・シーヤ観測所3.6メートル望遠鏡に備え付けられた分光器“HARPS”が用いられました。

太陽とよく似た恒星のすぐ近くを回っている“TOI 849 b”の公転周期はわずか18時間、表面温度は摂氏1500度ほどと見られています。

“次世代トランジットサーベイ”の観測から分かったのは、“TOI 849 b”のサイズが海王星とほぼ同じだということ。

もう一方の“HARPS”では“ドップラーシフト法”により惑星の質量を計測。
“TOI 849 b”の質量が海王星の2.3倍ほどだと分かります。
主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりする。“ドップラーシフト法”では、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取り惑星の質量を計測している。

観測結果は、“TOI 849 b”の密度が岩石惑星である地球とほぼ同じであることを意味していました。

地球と同じくらい高密度な系外惑星で、これほど質量が大きなものが見つかるのは異例なこと。
でも、そもそも海王星より一回り質量が大きく、木星よりはずっと小さな系外惑星自体が“海王星級惑星の砂漠地帯(Neptunian desert)”と呼ばれるほど珍しい存在なんですねー

“TOI 849 b”は観測史上最大の質量を持つ地球型惑星(密度が地球並みの惑星という意味)になります。

これだけ質量が大きな惑星であれば、普通なら誕生したときに大量の水素やヘリウムを集めて、木星のようなガス天体に成長するはずです。

そのガスが見当たらないということは、この天体が露出した惑星の核(コア)だということに…
もちろん巨大ガス惑星の核が、露出した状態で恒星の周りを回っているのを見つけたのは初めてのことになります。
発見されたガス惑星の核“TOI 849 b”と中心星のイメージ図。(Credit: University of Warwick/Mark Garlick)
発見されたガス惑星の核“TOI 849 b”と中心星のイメージ図。(Credit: University of Warwick/Mark Garlick)


惑星の核がむき出しになっている理由

なぜ、普通の巨大ガス惑星でなく、その核だけがむき出しで見えているのでしょうか?

研究チームが考えている可能性は以下の2つ。
  1. かつては木星のような姿だったけど外層のガスをほとんど失ってしまった。 
    その理由としては中心星に近づき過ぎて引き裂かれたことや、他の惑星と衝突したことが考えられます。
    星の光によって大気が散逸した可能性もありますが、それだけではこれだけ多くのガスが失われることはないようです。
  2. ガス惑星に成りそこなった可能性
    つまり、核だけはできたけど何かがうまくいかず、大気が形成されなかったというシナリオです。
    生まれたての恒星を取り囲むガスとチリの円盤“原始惑星系円盤”の中で、巨大なガス惑星がどのようにして大気を獲得していたのかは、以前この記事で説明しています。
    大気が獲得できなかったということは、“原始惑星系円盤”の中で惑星が形成される際、“TOI 849 b”が誕生した部分がたまたま空隙になっていたか、形成されるのが遅すぎて円盤に物質が残っていなかったのかもしれません。
今回の“TOI 849 b”発見は初めての事例であり、このような惑星が存在すること、発見されえることを私たちに教えてくれました。

太陽系では惑星の核を見ることは不可能です。
でも、この天体は、それができるチャンスを与えてくれているのかもしれません。

例えば、木星の核の性質については数々の大きな問題が未解決のまま残っています。
“TOI 849 b”のような奇妙で特異な系外惑星の観測が、惑星形成に関しての知見を得るための唯一無二の手段になるのかもしれません。


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