星間物質を模した有機物の加熱実験で、水が大量に生じるという結果が得られました。
このことが示しているのは、地球の水の起源が彗星や炭素質小惑星ではないという可能性。
星間有機物が地球型惑星の水の起源になりうることでした。
地球にある水はどこから来たのか
地球や火星などに存在している水はどこからやってきたのでしょうか?
このことについては、現在もよく分かっていません。
原始惑星系円盤の中では、太陽から約2.5天文単位(火星軌道と木星軌道の間)の距離を境にして、これより内側では水は気体の状態でしか存在できません。
この境界をスノーラインといいます。
なので、地球型惑星の材料にもともと含まれていた水は、惑星ができる過程で水蒸気になって散逸してしまったと考えられています。
そこで気になるのが、現在地球に存在している水の起源ですよね。
仮説として提唱されているのは、現在の地球型惑星の水が、後の時代に小天体が大量に衝突したことで持ち込まれたというものです。
ただ、2014年にヨーロッパ宇宙機関の探査機“ロゼッタ”が行った、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査により状況が変わってきます。
この探査で得られたデータから示されたのは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に含まれる水は地球の水とは重水素の比率が異なっていること。
そう、地球の水が彗星に由来するとは考えづらいという見方が出てきたんですねー
また、“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウのような、炭素質に富んだ“C型小惑星”にも水が比較的多く含まれています。
このため、スノーラインの外からやってきたC型小惑星の衝突で水がもたらされたという仮説もあります。
でも、このモデルの場合、逆に地球型惑星の水が多くなりすぎるという問題が指摘されているんですねー
地球の水の起源は星間有機物かも
今回、北海道大学と桐蔭横浜大学の研究チームが目を付けたのは、太陽などの恒星の生まれ故郷である星間分子雲でした。
この星間分子雲にたくさん含まれているチリの有機物が、水の起源として重要ではないかと考えたわけです。
星間分子雲のチリには、氷や鉱物と同じくらいの割合で有機物も含まれています。
でも、これまでの惑星形成論では星間有機物の役割はあまり重要視されてこなかったんですねー
星間有機物は、水・一酸化炭素・アンモニアなどの氷に恒星からの紫外線が当たることで作られます。
過去の実験からは、星間有機物にはヒドロキシ酸やアミド、多環芳香族炭化水素、脂肪酸など、多種多様な有機分子が含まれていることが分かっています。
そこで研究チームでは、これらの有機分子を混ぜ合わせた模擬的な星間有機物を作り、これを加熱して変化を観察しています。
すると、模擬星間有機物を200度まで加熱すると2相の有機物に分離し、350度になると水が生成されることが分かります。
さらに、400度まで加熱して生じたのが、有機物が黒くなった石油のような物質でした。
この黒い生成物を分析してみると、地球上で産出する石油によく似た組成であることが確認されます。
また、最初の模擬星間有機物の組成を大きく変えても、加熱によって水と石油が生じるという結果は変わらないことも分かりました。
このような星間有機物は原始惑星系円盤の成分として広く存在しているはず。
しかも、水の氷とは違って、スノーラインより内側でも揮発することなく存在できるんですねー
このことから、研究チームでは、こうした星間有機物が地球型惑星の水の起源になりうると考えています。
今回の成果から、これまで考えられてきたような炭素質の天体がなくても、地球の水の起源を説明できるようになりました。
さらに、現在の小惑星や氷衛星の内部に、星間有機物から生じた石油が大量に存在するという可能性も考えられます。
今年の年末には“はやぶさ2”が、リュウグウの試料を地球に持ち帰る予定です。
研究チームのメンバーは、この試料の分析にも携わることになっています。
地球型惑星や隕石中に存在する水・有機物の起源解明につながることを期待しているようですよ。
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地球の水は誕生当時から存在した?
このことが示しているのは、地球の水の起源が彗星や炭素質小惑星ではないという可能性。
星間有機物が地球型惑星の水の起源になりうることでした。
地球にある水はどこから来たのか
地球や火星などに存在している水はどこからやってきたのでしょうか?
このことについては、現在もよく分かっていません。
原始惑星系円盤の中では、太陽から約2.5天文単位(火星軌道と木星軌道の間)の距離を境にして、これより内側では水は気体の状態でしか存在できません。
この境界をスノーラインといいます。
原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
なので、地球型惑星の材料にもともと含まれていた水は、惑星ができる過程で水蒸気になって散逸してしまったと考えられています。
そこで気になるのが、現在地球に存在している水の起源ですよね。
仮説として提唱されているのは、現在の地球型惑星の水が、後の時代に小天体が大量に衝突したことで持ち込まれたというものです。
ただ、2014年にヨーロッパ宇宙機関の探査機“ロゼッタ”が行った、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査により状況が変わってきます。
この探査で得られたデータから示されたのは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に含まれる水は地球の水とは重水素の比率が異なっていること。
そう、地球の水が彗星に由来するとは考えづらいという見方が出てきたんですねー
また、“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウのような、炭素質に富んだ“C型小惑星”にも水が比較的多く含まれています。
このため、スノーラインの外からやってきたC型小惑星の衝突で水がもたらされたという仮説もあります。
でも、このモデルの場合、逆に地球型惑星の水が多くなりすぎるという問題が指摘されているんですねー
地球の水の起源は星間有機物かも
今回、北海道大学と桐蔭横浜大学の研究チームが目を付けたのは、太陽などの恒星の生まれ故郷である星間分子雲でした。
この星間分子雲にたくさん含まれているチリの有機物が、水の起源として重要ではないかと考えたわけです。
星間分子雲のチリには、氷や鉱物と同じくらいの割合で有機物も含まれています。
でも、これまでの惑星形成論では星間有機物の役割はあまり重要視されてこなかったんですねー
星間有機物は、水・一酸化炭素・アンモニアなどの氷に恒星からの紫外線が当たることで作られます。
過去の実験からは、星間有機物にはヒドロキシ酸やアミド、多環芳香族炭化水素、脂肪酸など、多種多様な有機分子が含まれていることが分かっています。
そこで研究チームでは、これらの有機分子を混ぜ合わせた模擬的な星間有機物を作り、これを加熱して変化を観察しています。
すると、模擬星間有機物を200度まで加熱すると2相の有機物に分離し、350度になると水が生成されることが分かります。
さらに、400度まで加熱して生じたのが、有機物が黒くなった石油のような物質でした。
模擬星間有機物を加熱したときの様子を撮影した顕微鏡写真。350度まで加熱すると水が生成され、400度に達すると黒い石油ができる。(Credit: Nakano et al. 2020) |
また、最初の模擬星間有機物の組成を大きく変えても、加熱によって水と石油が生じるという結果は変わらないことも分かりました。
(a)実験前の模擬星間有機物。(b)模擬星間有機物を400度まで加熱して得られた物質。上層に黒い石油がたまり、下層には水溶性物質が解けた液ができた。(Credit: Nakano et al. 2020) |
しかも、水の氷とは違って、スノーラインより内側でも揮発することなく存在できるんですねー
このことから、研究チームでは、こうした星間有機物が地球型惑星の水の起源になりうると考えています。
今回の成果から、これまで考えられてきたような炭素質の天体がなくても、地球の水の起源を説明できるようになりました。
さらに、現在の小惑星や氷衛星の内部に、星間有機物から生じた石油が大量に存在するという可能性も考えられます。
今年の年末には“はやぶさ2”が、リュウグウの試料を地球に持ち帰る予定です。
研究チームのメンバーは、この試料の分析にも携わることになっています。
地球型惑星や隕石中に存在する水・有機物の起源解明につながることを期待しているようですよ。
惑星の材料物質の分布とそれぞれの天体の形成過程。これまではスノーラインの外側からやってきた大量の彗星や炭素質の小天体が、地球に衝突することで水が持ち込まれたと考えられていた。今回の研究では新たに、スノーラインの内側にある岩石質の小惑星でも星間有機物が加熱されることで水ができ、これが地球に供給されうることが明らかになった(太い青矢印)。(Credit: Nakano et al. 2020) |
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