これまで存在は予測されていても、決定的な証拠が見つかっていない中間質量ブラックホール。
潜伏先の一つとされる天体をハッブル宇宙望遠鏡で観測してみると、その天体は8億光年彼方にある星団だと分かります。
さらに、その星団には太陽5万個分の質量を持つブラックホールが潜んでいることがほぼ確実になったようです。
存在は予測されているけど決定的な証拠が見つかっていないブラックホール
多くの銀河の中心部には、太陽の約100万~100億倍もの超大質量ブラックホールがあることが知られています。
もちろん、太陽系が属している天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*”が存在しています。
また、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~10数倍程度の質量意を持つ恒星質量ブラックホールも宇宙には多数存在しています。
一方で、存在は予測されているのですが、決定的な証拠が見つかっていないブラックホールもあります。
それが、太陽質量の数千倍から数十万倍という中間質量ブラックホールです。
超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体してできるとも考えられています。
なので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ“中間質量ブラックホール”もあるはずなんですねー
中間質量ブラックホールの見つけ方
超大質量ブラックホールや恒星質量ブラックホールは、その重力に引き寄せられた物質が加熱されて放つX線を観測したり、周囲の天体の運動を調べたりすることで存在が確認できます。
同じ方法を使えば中間質量ブラックホールの存在も確認できると思いますよね。
それでは、なぜ決定的な証拠が見つからないのでしょうか?
その理由として考えられているのは、中間質量ブラックホールの周りには物質が少なく、超大質量ブラックホールほど重力が強くないため他の恒星や星間物質を引き寄せにくいこと。
そう、見つからない理由は中間質量ブラックホールが目立たないことにあると考えられています。
そんな中間質量ブラックホールを見つける数少ないチャンスもあります。
その一つが、ブラックホールが星を飲み込むという比較的珍しい現象をとらえることです。
2006年のこと、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”とヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”がみずがめ座方向に強力なX線フレアを検出します。
このX線源“3XMM J215022.4-055108”に注目したのがアメリカ・ニューハンプシャー大学の研究チーム。
中間質量ブラックホールではないかと考えたんですねー
中間質量ブラックホールが潜みそうな場所
“3XMM J215022.4-055108”のすぐ近くには、地球から約8億光年離れたレンズ状銀河が存在しています。
検出されたX線が中間質量ブラックホールからのものだとすると、思いつくのは“3XMM J215022.4-055108”がこの銀河の外れに位置する星団に存在していること。
超大質量ブラックホールであれば銀河の中心にあるはずなので、この星団は中間質量ブラックホールが潜みそうな場所としては妥当といえます。
ただ、これまでの観測では“3XMM J215022.4-055108”が8億光年彼方ではなく、天の川銀河の一角に存在する中性子星である可能性も残されていました。
ハッブル宇宙望遠鏡は2003年に“3XMM J215022.4-055108”周辺を撮影したことがありました。
今回の研究では、その2倍の露出時間をかけることで、より解像度の高い画像を得ています。
その結果分かったのは、可視光線で見た“3XMM J215022.4-055108”の光が、8億光年離れた位置では半径100光年前後の高密度な星団に相当すること。
また、“XMMニュートン”による追加観測からも、“3XMM J215022.4-055108”が放ったX線の変化は、恒星が引き裂かれる現象で放射されるものと一致していることが確認されたんですねー
これらのことから、“3XMM J215022.4-055108”は天の川銀河内の中性子星ではなく、8億光年彼方にある中間質量ブラックホールだと判明。
このブラックホールの質量は、太陽の約5万倍あると見積もられます。
これまで、中間質量ブラックホールの質量を求めるのに調べていたのは、ブラックホールによって引き裂かれた星からのX線の明るさをでした。
でも、今回はスペクトルの形状を組み合わせるという信頼度の高い手法を採用したそうです。
これまでの研究で、銀河が大きいほど、その中心に位置するブラックホールの質量も大きいことが分かっています。
このことから、“3XMM J215022.4-055108”の中間質量ブラックホールは、元々その質量に見合ったサイズの矮小銀河の中心核に位置していた可能性があります。
その矮小銀河がレンズ状銀河に接近して、重力で破壊された後に残ったのが現在の高密度星団なのかもしれません。
今回の研究により、中間質量ブラックホールの存在が1つ確認されました。
今後期待されるのは、まだ発見されていない多くの中間質量ブラックホールが、すぐ近くを通過する星を飲み込むこと。
研究チームでは、今回の手法を使って中間質量ブラックホール探しを続けるそうです。
中間質量ブラックホールの研究は、どうやって超大質量ブラックホールが出来るのか? っといった疑問を解くカギになります。
超大質量ブラックホールが中間質量ブラックホールの成長した姿なのか? それとも別の方法により中間質量ブラックホールが形成されるのか?
そもそも、高密度の星団が中間質量ブラックホールの故郷として適した場所なのでしょうか?
まだまだ多くの謎が残されていますね (^_^;)
こちらの記事もどうぞ
これで暗いブラックホールも発見できる! ガス雲の運動を解析して見つけたのは中間質量ブラックホールだった
潜伏先の一つとされる天体をハッブル宇宙望遠鏡で観測してみると、その天体は8億光年彼方にある星団だと分かります。
さらに、その星団には太陽5万個分の質量を持つブラックホールが潜んでいることがほぼ確実になったようです。
存在は予測されているけど決定的な証拠が見つかっていないブラックホール
多くの銀河の中心部には、太陽の約100万~100億倍もの超大質量ブラックホールがあることが知られています。
もちろん、太陽系が属している天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*”が存在しています。
また、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~10数倍程度の質量意を持つ恒星質量ブラックホールも宇宙には多数存在しています。
一方で、存在は予測されているのですが、決定的な証拠が見つかっていないブラックホールもあります。
それが、太陽質量の数千倍から数十万倍という中間質量ブラックホールです。
超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体してできるとも考えられています。
なので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ“中間質量ブラックホール”もあるはずなんですねー
中間質量ブラックホールの見つけ方
超大質量ブラックホールや恒星質量ブラックホールは、その重力に引き寄せられた物質が加熱されて放つX線を観測したり、周囲の天体の運動を調べたりすることで存在が確認できます。
同じ方法を使えば中間質量ブラックホールの存在も確認できると思いますよね。
それでは、なぜ決定的な証拠が見つからないのでしょうか?
その理由として考えられているのは、中間質量ブラックホールの周りには物質が少なく、超大質量ブラックホールほど重力が強くないため他の恒星や星間物質を引き寄せにくいこと。
そう、見つからない理由は中間質量ブラックホールが目立たないことにあると考えられています。
そんな中間質量ブラックホールを見つける数少ないチャンスもあります。
その一つが、ブラックホールが星を飲み込むという比較的珍しい現象をとらえることです。
2006年のこと、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”とヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”がみずがめ座方向に強力なX線フレアを検出します。
このX線源“3XMM J215022.4-055108”に注目したのがアメリカ・ニューハンプシャー大学の研究チーム。
中間質量ブラックホールではないかと考えたんですねー
恒星(左)を引き裂く中間質量ブラックホール(右奥)のイメージ図(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)。 |
中間質量ブラックホールが潜みそうな場所
“3XMM J215022.4-055108”のすぐ近くには、地球から約8億光年離れたレンズ状銀河が存在しています。
検出されたX線が中間質量ブラックホールからのものだとすると、思いつくのは“3XMM J215022.4-055108”がこの銀河の外れに位置する星団に存在していること。
超大質量ブラックホールであれば銀河の中心にあるはずなので、この星団は中間質量ブラックホールが潜みそうな場所としては妥当といえます。
ただ、これまでの観測では“3XMM J215022.4-055108”が8億光年彼方ではなく、天の川銀河の一角に存在する中性子星である可能性も残されていました。
みずがめ座方向のX線源“3XMM J215022.4-055108”の周辺。“3XMM J215022.4-055108”は白い円内の星団中に存在している(Credit: NASA, ESA, and STScI)。 |
今回の研究では、その2倍の露出時間をかけることで、より解像度の高い画像を得ています。
その結果分かったのは、可視光線で見た“3XMM J215022.4-055108”の光が、8億光年離れた位置では半径100光年前後の高密度な星団に相当すること。
また、“XMMニュートン”による追加観測からも、“3XMM J215022.4-055108”が放ったX線の変化は、恒星が引き裂かれる現象で放射されるものと一致していることが確認されたんですねー
これらのことから、“3XMM J215022.4-055108”は天の川銀河内の中性子星ではなく、8億光年彼方にある中間質量ブラックホールだと判明。
このブラックホールの質量は、太陽の約5万倍あると見積もられます。
これまで、中間質量ブラックホールの質量を求めるのに調べていたのは、ブラックホールによって引き裂かれた星からのX線の明るさをでした。
でも、今回はスペクトルの形状を組み合わせるという信頼度の高い手法を採用したそうです。
これまでの研究で、銀河が大きいほど、その中心に位置するブラックホールの質量も大きいことが分かっています。
このことから、“3XMM J215022.4-055108”の中間質量ブラックホールは、元々その質量に見合ったサイズの矮小銀河の中心核に位置していた可能性があります。
その矮小銀河がレンズ状銀河に接近して、重力で破壊された後に残ったのが現在の高密度星団なのかもしれません。
今回の研究により、中間質量ブラックホールの存在が1つ確認されました。
今後期待されるのは、まだ発見されていない多くの中間質量ブラックホールが、すぐ近くを通過する星を飲み込むこと。
研究チームでは、今回の手法を使って中間質量ブラックホール探しを続けるそうです。
中間質量ブラックホールの研究は、どうやって超大質量ブラックホールが出来るのか? っといった疑問を解くカギになります。
超大質量ブラックホールが中間質量ブラックホールの成長した姿なのか? それとも別の方法により中間質量ブラックホールが形成されるのか?
そもそも、高密度の星団が中間質量ブラックホールの故郷として適した場所なのでしょうか?
まだまだ多くの謎が残されていますね (^_^;)
今回の観測と研究成果の紹介動画“ハッブルが見つけた中間質量ブラックホールの証拠”(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)。 |
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