惑星同士の公転軌道の傾きは、どのように生じているのでしょうか?
このことは惑星科学における謎の1つになっています。
有力視されているメカニズムの1つに、惑星同士の重力相互作用による公転軌道の変化があります。
でも、このメカニズムの詳細については判明していない点があります。
今回の研究では、太陽系外惑星“TOI-2202b”の公転軌道の傾きを測定。
その結果、“TOI-2202b”の公転軌道の傾きが、約26度とかなり傾いていること分かりました。
ただ、“TOI-2202b”は、公転軌道が変化しにくい軌道共鳴の状態にあると予測されているんですねー
このため、今回の研究成果は、重力相互作用によって軌道が傾くという仮説とは一致しない、とても重要な発見になるそうです。
惑星の公転軌道が傾くメカニズム
太陽の赤道を基準として、太陽系の惑星の公転軌道の傾きを測定すると、8つの惑星全てが10度以内に収まっています。(かつて惑星に分類されていた冥王星を除いている)
一方で知られているのが、太陽系以外の惑星系について同様に公転軌道の傾きを調べると、約3分の1が非常に大きく傾いていることです。
恒星が誕生する現場では、恒星の周りに広がる水素を主成分とするガスやチリからなる円盤状の構造“原始惑星系円盤”が存在し、その中で惑星が誕生しています。
原始惑星系円盤の回転は中心の恒星の自転と一致するので、惑星の公転軌道は恒星の赤道から見てそれほど傾かないはずです。
このため、極端に公転軌道が傾いた惑星系が誕生するには、何か別のメカニズムが働いていることが予想されます。
そのメカニズムの中で有力視されているのが、惑星同士の重力相互作用になります。
惑星が複数ある場合、公転を繰り返している間に惑星同士の距離が近くなり、重力相互作用によって惑星の公転軌道が乱れる場合があります。
この公転軌道の乱れが、極端な傾きを生じさせると考えられます。
でも、太陽系外惑星の公転軌道の傾きを測定することは困難なんですねー
なので、これまでに公転軌道が判明しているのは約100の惑星系のみでした。
この少なさから、公転軌道の変化に関する詳細なモデルを組むことが難しくなり、メカニズムの検討も上手く行っていませんでした。
軌道共鳴に近い惑星系における公転軌道の傾き
今回、研究の対象になったのは、みずへび座の方向約770光年彼方に位置する恒星“TOI-2202”を公転する系外惑星“TOI-2202b”です。
研究では、太陽系外惑星“TOI-2202b”の軌道傾斜の度合いを測定。
観測に用いられたのは、ケント山天文台のミネルヴァ・オーストレイリス望遠鏡(オーストラリア・クイーンズランド州)でした。
この観測では、“TOI-2202”からの光が惑星の公転によって変化する“ロシター・マクローリン効果”(※1)を測定しています。
光の変化は小さいので、精密な観測が必要ですが、これによって公転軌道の傾きを調べることが可能になります。
この値は、“TOI-2022”の惑星系を考えると、予想外の発見でした。
それは、“TOI-2022”の周りには、今回観測された“TOI-2022b”だけでなく、もう1つの惑星“TOI-2022c”があり、それぞれの公転周期が2:1の“軌道共鳴”の関係にあると考えられていたからです。
軌道共鳴は、惑星同士の重力相互作用に関する力学的な安定によって生じるもので、裏を返せば、軌道共鳴が生じている惑星系では公転軌道を激しく変化させる力学的に不安定な状況は発生しないと考えられています。
つまり、“TOI-2022”の惑星系は誕生時からほとんど変化しておらず、公転軌道の傾きが生じる理由を説明するために提唱された“重力相互作用による軌道の乱れ”のメカニズムは適用されないことになります。
一方、“TOI-2022”の惑星系が軌道共鳴に見えているのは偶然であり、実際にそのような状態になっていない可能性もあるので、より詳細な研究も必要になります。
太陽系外惑星には、恒星に極端に接近した公転軌道を持つ木星のようなガス惑星“ホットジュピタ-”をはじめ、生成メカニズムが不明な惑星がいくつもあります。
“TOI-2022b”の公転軌道の傾きの測定は、軌道共鳴に近い惑星系における公転軌道の傾きの最初の測定例で、研究は始まったばかりと言えます。
他の惑星系の公転軌道の傾きが測定されることで、この謎を解く手掛かりは増えていくことになるのでしょうね。
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このことは惑星科学における謎の1つになっています。
有力視されているメカニズムの1つに、惑星同士の重力相互作用による公転軌道の変化があります。
でも、このメカニズムの詳細については判明していない点があります。
今回の研究では、太陽系外惑星“TOI-2202b”の公転軌道の傾きを測定。
その結果、“TOI-2202b”の公転軌道の傾きが、約26度とかなり傾いていること分かりました。
ただ、“TOI-2202b”は、公転軌道が変化しにくい軌道共鳴の状態にあると予測されているんですねー
このため、今回の研究成果は、重力相互作用によって軌道が傾くという仮説とは一致しない、とても重要な発見になるそうです。
この研究は、イェール大学のMalena Riceさんたちの研究チームが進めています。
図1.恒星の自転軸に対して、2つの惑星の公転軌道が傾いている概念図。(Credit: Malena Rice) |
惑星の公転軌道が傾くメカニズム
太陽の赤道を基準として、太陽系の惑星の公転軌道の傾きを測定すると、8つの惑星全てが10度以内に収まっています。(かつて惑星に分類されていた冥王星を除いている)
一方で知られているのが、太陽系以外の惑星系について同様に公転軌道の傾きを調べると、約3分の1が非常に大きく傾いていることです。
恒星が誕生する現場では、恒星の周りに広がる水素を主成分とするガスやチリからなる円盤状の構造“原始惑星系円盤”が存在し、その中で惑星が誕生しています。
原始惑星系円盤の回転は中心の恒星の自転と一致するので、惑星の公転軌道は恒星の赤道から見てそれほど傾かないはずです。
このため、極端に公転軌道が傾いた惑星系が誕生するには、何か別のメカニズムが働いていることが予想されます。
そのメカニズムの中で有力視されているのが、惑星同士の重力相互作用になります。
惑星が複数ある場合、公転を繰り返している間に惑星同士の距離が近くなり、重力相互作用によって惑星の公転軌道が乱れる場合があります。
この公転軌道の乱れが、極端な傾きを生じさせると考えられます。
でも、太陽系外惑星の公転軌道の傾きを測定することは困難なんですねー
なので、これまでに公転軌道が判明しているのは約100の惑星系のみでした。
この少なさから、公転軌道の変化に関する詳細なモデルを組むことが難しくなり、メカニズムの検討も上手く行っていませんでした。
軌道共鳴に近い惑星系における公転軌道の傾き
今回、研究の対象になったのは、みずへび座の方向約770光年彼方に位置する恒星“TOI-2202”を公転する系外惑星“TOI-2202b”です。
研究では、太陽系外惑星“TOI-2202b”の軌道傾斜の度合いを測定。
観測に用いられたのは、ケント山天文台のミネルヴァ・オーストレイリス望遠鏡(オーストラリア・クイーンズランド州)でした。
この観測では、“TOI-2202”からの光が惑星の公転によって変化する“ロシター・マクローリン効果”(※1)を測定しています。
光の変化は小さいので、精密な観測が必要ですが、これによって公転軌道の傾きを調べることが可能になります。
自転している恒星を遠くから観察すると、片側の半球は観測者に近付いて見え、もう片側の半球は観測者から遠ざかって見えるため、ドップラー効果によって近付く半球からの光は青方偏移、遠ざかる半球からの光は赤方偏移することになる。恒星の手前を惑星が通過するときは、青方偏移している側か赤方偏移している側のどちらかの光が遮られるので、恒星の光の波長には偏りが生じる。こうして波長に表れるドップラー効果の違いがロシター・マクローリン効果。この効果を観測することで、惑星の公転軌道がどの程度傾いているかを測定できる。
測定の結果分かったのは、“TOI-2022b”の公転軌道の傾きが約26℃(11~38度)ということ。この値は、“TOI-2022”の惑星系を考えると、予想外の発見でした。
それは、“TOI-2022”の周りには、今回観測された“TOI-2022b”だけでなく、もう1つの惑星“TOI-2022c”があり、それぞれの公転周期が2:1の“軌道共鳴”の関係にあると考えられていたからです。
軌道共鳴は、惑星同士の重力相互作用に関する力学的な安定によって生じるもので、裏を返せば、軌道共鳴が生じている惑星系では公転軌道を激しく変化させる力学的に不安定な状況は発生しないと考えられています。
つまり、“TOI-2022”の惑星系は誕生時からほとんど変化しておらず、公転軌道の傾きが生じる理由を説明するために提唱された“重力相互作用による軌道の乱れ”のメカニズムは適用されないことになります。
一方、“TOI-2022”の惑星系が軌道共鳴に見えているのは偶然であり、実際にそのような状態になっていない可能性もあるので、より詳細な研究も必要になります。
太陽系外惑星には、恒星に極端に接近した公転軌道を持つ木星のようなガス惑星“ホットジュピタ-”をはじめ、生成メカニズムが不明な惑星がいくつもあります。
“TOI-2022b”の公転軌道の傾きの測定は、軌道共鳴に近い惑星系における公転軌道の傾きの最初の測定例で、研究は始まったばかりと言えます。
他の惑星系の公転軌道の傾きが測定されることで、この謎を解く手掛かりは増えていくことになるのでしょうね。
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