
「弱きを助け、強きをくじく」というと、一見カッコよく、道徳的に聞こえますが、弱者をすべて善人、強者をすべて悪人と見るのも、はなはだあわてた結論でしょう。また、弱い者を偏愛することになり、そのため、やたらと強い者を憎み、これに刃向(はむ)かう気風をつくってしまうという一面があります。
このようにせっかちな考え方は、落ち着いた理性から生まれたものではなく、一時的な感情から出ることが多いものです。
同情や親切は大切な道徳ですが、深い理性と真に人を愛する心が伴ってこそ、質のよい価値ある道徳といえましょう。
