正しく言うならば、娘さんがお母さんに枕を作ってあげたいと、1週間程前に下見に来られていました。そして、火曜日の午後、車で40~50分程の距離ですが、お母さんを連れて来られました。
下見の時に店員が私(爺)の事(睡眠環境診断士・睡眠指導士〔上級〕)を話したようです。婆が「難しいお客様だから出て来て」と、奥の事務所まで呼びにきた。店頭へ出ると、私の顔を見るなり先ほどの娘さんが、いきなり「居た居た、良かった」と。どうやら私の顔をネットか雑誌で見て知っていたようだ。
お母さんの首筋を見た途端、婆が「難しいお客さま」と言った意味が判った。生まれて「初めてみる首」でした。
首に大きな野球のボールほどもあろうかと思われる
病名を聞くと「デスモイド腫瘍(良性)」と言われました。もちろん聞いたことのない病名です。始めは肩こりや首周りの違和感を訴えておられたのですが、膨らみ始めたらあれよあれよと、半年少々でこんなに大きくなったそうです。低反発まくらはもちろん、ありとあらゆる枕を買われたようです。敷きふとんも買い替えたそうです。でも、どれもダメでした。
「朝までぐっすり寝たい」「4~5時間すると、背中から首にかけて痛さで目が覚める」そうです。計測しましたが、パソコンもびっくりしたのか2度もエラーが出ました。三度目の正直でやっと計測できました。
左右の横寝の部分は若干の微調整をしましたが、ほぼデータに近いものでOKでした。だが、仰向け寝の場合は、出てきたデータに基づき枕を作ろうものなら、全く合う可能性はありませんでした。
中央部の高さについては、爺の経験とそして無い頭をフル回転させ高さをはじき出しました。いろんな中材の中から、硬さが気に入っって戴いたキトサン(偶然ネットを見ていたらキトサンの記述がありました。・・・天然素材[主にカニの殻など}から精製される、動物性食物繊維の高分子多糖体。腫瘍に対して抑制効果があるということが最近の研究でわかってきたそうです。キトサンの中でも「高分子水溶性キトサン」は特に免疫効果が高いとのこと。)入りパイプを入れました。実際のところ、いつものふとんで寝てみないと枕が合っているかは判りません。木曜日の夜、会社が終わってから再来店戴くことにしました。
昨夜閉店(7時)少し前に電話がありました。「今から調整に行きたい」と。1時間ほど後会社の制服を着たまま枕を持って見えました。
「調子はいかがですか?」「(いままでの枕より)いいですね。でも、気持ち高いかな。それと気持ち硬い感じがする」ということでした。以前はもっと柔らかい低反発まくらを使用されてました。だが、低反発では柔らか過ぎて「首が落ち着かなかった」そうです。私たちは直感的にもっと柔らかい素材のほうが良いのではと思うところでしたが、腫瘍は強く圧迫しなければ痛みは無いので、かえって少し硬めの物を選ばれたようです。
とはいえ、デリケートな首です。枕の中材を1ランク柔らかいものに変えました。ベースを3㎝から2㎝に替え中材の量を少し増やしました。「ああ、良い感じです」と言われ、内心ホットしました。
これで完璧とは思いません。また、一晩お休みになると「少し低かった」ということになるかもしれません。何度でも調整させて戴きます。
首に「デスモイド腫瘍」という方は、たぶん全国でも数十人でしょう。そんな症例の方の枕を作らせて戴けたのはひょっとして日本で爺が初めてかもしれません。中心性頚椎損傷の時もそうでしたが、まだまだ爺の知らない病気がこの世の中にはあるんですね。
「睡眠指導士(上級)」といっても、お医者様では無い。勿論、病気を治すことはできない。でも、枕を敷きを通して「快眠」の一助になるなら、商売(人)冥利に尽きます。
一人のお客様の快眠のために・・・
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます