少しばかり偉そうなタイトルになりました。スミマセン。
少し前に、従業員数十名のある会社の会長ご夫妻にご来店戴きました。初めは馴染み客様の紹介でした。今では毎年1~2回お買い物に立ち寄って戴いてます。私より少し(多分5歳ぐらい)年上だと思います。最近社長業を息子さんに譲られ、会長職に就かれました。
会長さんの趣味は「車」だそうです。いつも通勤に使っている車はレクサス(?)、休日に遊びに行かれる時は3,000cc超のスポーツカーです。家にはお金を懸けないけど(外観は建売住宅?)、自分が気持ちの良くなれるのならと、趣味のものや調度品などにはこだわりを持って見えます。そんなことで、弊社ではムートンカーペットをすでに5~6枚、また、シルキーマット(ベッド)も購入戴いてます。
105,000円のカシミヤの毛布B品のイメージ写真
日曜日の夜です。名古屋のデパートへ行った帰りに立ち寄られたそうです。「ダブルサイズのカシミヤ毛布」が欲しいと、松▲屋へ行ったが、定価八万円程度の品が1枚だけあったそうだ。もちろん、気に入らない。弊店では、84,000円・136,500円・105,000円(367,500円のA品と遜色ないB品)の3種類があった。品質をご自分の目で確かめ、136,500円と105,000円の二枚のカシミヤ毛布をお買い上げ戴いた。
毎日「鉄」を特殊加工する仕事をされているが、繊維のことをメチャ詳しい。なぜ、そんなに詳しいのかとお尋ねしました。会長さんの性格だろうが、身体が納得するものを買うことにしているそうだ。
つまり・・・・洋服でも、靴でも最高のものを試着してから、自分の予算と相談しながら、できるだけ最高に近いものを買うようにしている。本物を触っていると自然に良いものが分かってくる。最近のデパートは最高が無くなってきた。そこそこの上クラスしかない。寝具などは、綿桂さんのほうが良いものがいっぱいあるよ。・・・
実のところ、面映ゆい言葉を戴いたと思った。品ぞろえはまだまだ不十分だからだ。
会長さんの会社は商品を大量生産する仕事ではなく、一品ごとに受注生産する仕事内容だそうだ。 「相手の会社の要求をしっかり聞いて、満足のいく商品を届けるようにしている。もちろん、昨今の不景気で売り上げは落ちているが、変な仕事をするといつかしっぺ返しがくる。本物は裏切らないよ。良い品を作るためには、良い機械が要るよ。うちでは、一台一億(円)の機械はざらだよ。本物を売るには、本物を使ってみなけりゃ分からん。メーカーの言いなりでは、メーカーの下請と同じだよ。綿桂さんも良い物をどんどん着てみないかんよ。」正論である。一代で高収益会社を立ち上げただけあって、話がずっしりとくる。少ない在庫で商いができることが経営的には良い。受注生産が一番良いのかもしれない。売れてから仕入れるのが最高かもしれない。
だが、物販という商いは、品ぞろえが不十分であったり偏りがあったりすれば、お客様に支持されない。販売以上に、安くて良い品を探す「仕入れ」が大切となってくる。 「良い品を見分ける仕入れ力」と「一人一人にあった商品をお薦めする販売力」とがバランス良く必要であろう。
どちらも納得できるように商いができれば良いのだが、なかなか難しい。
メーカー・問屋さんと小売店とが対等に話ができなければいけないと思う。簡単に言うが現実は難しい。
我々は小売店である。だが、物を売るだけなら存在意義が弱い。大手が勝つのは明白だ。船井流にいえば「包み込みの戦略」だろう。小さな小売店が勝つには、特色を出さなければならない。本当の意味での「専門店」になれるか? どちらかといえば、ランチェスターの法則に基づいて、より専門的に強くなったほうが良いだろう。そんなことは分かっている。具体的にどう行動したらよいのか。
メーカーは商品を作る。その時は、最小のリスクで最大の利益を追求しようとする。すなわち、消費者をマスで捉え、マスで考えた販促になる。キャンペーンを張って小売店に大量に販売するように、販売コンクールなどを行う。そこにはお客様の都合などは無い。メーカーと小売店との都合が商品販売での圧力となる。ローンを組んで販売する。キャンペーン商品をたくさん売る店は、表彰される。メーカーからみた「良い店」だからだ。だが、お客さまにとってその店は「良い店」か?
お客様一人ひとりに合った商品販売で表彰される事は、嬉しい。
先ほどの会長さんのように、確かな目を持っていれば良い。だが、我々でも確かな目が十分に持てないのに、一般客様が確かな目を持つことは到底無理な話である。例えば、羽毛ふとん。1枚だけ出され、品質を見極め値段を当てるのは案外難しい。数枚比較することができるから、また、品質を知ることができるから、価格の判断が着けられる。プロと思っている羽毛ふとんでさえ、品質の情報無しで、しかも1枚だけだされたならば、正確にその商品(羽毛ふとん)を当てることは不可能である。
ましてや、一般消費者のみなさんが訪問販売で、1枚だけ見せられ購入を判断することは、ハッキリ言って博打と同レベルと言えよう。
行き着くところ、専門店の存在意義は、お客様に代わって商品を選び、妥当な価格でお届けすることであろう。お客様一人ひとりに合った寝具を薦めることが専門店の存在意義であって、メーカーのキャンペーン販売でたくさん売ることが優秀な専門店と言えるとは限らない。確率的にはメーカーのキャンペーン商品は世の中の多くの方が潜在的に欲している商品かもしれない。その点を判断できる専門店でなければお客様の味方とは言い切れないところがあろう。お客様が欲している商品を探し仕入れる力が求められていると思う。 世の中評判の良い寝具はたくさんあります。でも、その評判の良い寝具が貴方にとって良い寝具かどうかは、別の問題です。
専門店の出番とは、必要なお客様に最適な商品(寝具)を薦めるということだ。メーカーの側に立って商品を選び薦めるのと、顧客の側に立って商品を薦めるのとでは、違ってくる。
経営は数字で見なければいけない。商売は顧客の顔が見えなければいけない。「ぐっすり寝れたよ。」この言葉をお客様から戴くことが、専門店にとっての最高の評価だと思います。
トヨタ自動車のリコールの問題が、どう解決されるかは興味の尽きぬところである。