『それゆえ、主(しゅ)みずから、あなたがたに一つのしるし(=奇跡)を与えられる。
見よ。処女がみごもっている。
そして、男の子を産み、
その名を、『インマヌエル ※』と名づける。』
(旧約聖書・イザヤ書 7章14節)
※「インマヌエル」=神はわたしたちとともにおられる、の意。
世間はクリスマスらしい。
そういうわけで、せっかくなので、クリスマスの元ネタの一つ、キリストの誕生を取り扱った映画の紹介でもしよう、と思う。
女優さんが美しかったので、観てみようと思った映画『マリア』。
年老いたエリザベツの懐妊、
マリアへの天使(御使い)のお告げ、
処女懐胎(受胎告知)、
村の人々の反応、
マリアのエリザベツ訪問、
ベツレヘムでのイエスの誕生、
羊飼いたちのイエス訪問、
ヘロデ王と(3人の)占星術の博士たちの旅とイエスへの礼拝、
ヘロデによる幼子虐殺、
エジプトへの逃避・・・。
新約聖書の4福音書(イエスの言動をまとめたもの)のうち、イエスの誕生を扱ったものは、マタイの福音書と、ルカの福音書のみ。
それにしても、御使いガブリエルがマリアに「おめでとう!」という場面、と、その時のマリアのとまどいや葛藤(かっとう)をどう描くのか(難しいのでは?)、と思っていたが、なかなか斬新(だった気がする)。
(レオナルド・ダヴィンチ『受胎告知』,1472-75年頃)
村の人々の反応と、マリアのエリザベツ訪問のあたりが、なかなかしっかりした描写であったため、
ルカの福音書での、
「どうして、この時点で、マリアはエリザベツを訪問したのだろう」
という疑問が氷解。合点がいった。
後半は、ある種お決まりのようなものだったので…私には、白々しく感じたが、
もしかすると、お好きな方もいるかもしれない。
だが、少なくとも、前半部分は、そのときのマリアの状況を理解するのに、良い映画だったと思う。
処女なのに、子を身ごもってしまった・・・。
今でも、中東では、結婚外でみごもったら(=姦淫したら)、石うちの刑があるが、この当時もそうだった(ただし、ローマ帝国の支配下のため、勝手に死罪をすることは不可能)。
今の日本では、それがどれだけ辛い状況か、どれほど白眼視されるか、理解できないかもしれない。
今でこそ、イエスの母マリアは、たとえばカトリックでは「聖母マリア」と称(とな)えられ、とても高く上げられているが、このときのマリアが、
「わがたましいは主をあがめ、
わが霊は、わが救い主なる神を喜びたたえます。
主は この卑(いや)しいはしために
目を留めてくださったからです。
ほんとうに、これから後、どの時代の人々も、
私をしあわせ者と思うでしょう。・・・」
(ルカの福音書 1章46-48節)
と言えたとき、どれほどの状況下であったのか。どれほど、夫ヨセフが悩んだのか。
『マリア』
100分/アメリカ/2006年
監督:キャサリン・ハードウィック
キャスト:ケイシャ・キャッスル・ヒューズ,オスカー・アイザック,ヒアム・アッバス,ショーン・トーブ