今は子どもが将来の夢を訊かれて「別に」と答え、草食系と言われる学生は大企業指向で折角、中小企業に求人があるのに見向きもしないで就職難に喘ぎ、企業は海外へ雄飛する人達を求めているのに、国内での安定した仕事を求めるというミスマッチ、国は科学技術向上のために外国留学を勧めているのに、就職に不利だとかで中国、韓国では増えている海外留学生が日本だけ減少しているそうです。
そして引きこもりの青年が増えているのにその面倒を見る親達の高齢化が社会
問題になっている日本。
何時までも果てるとも知れないデフレ、停滞している政治など世の中の所為にするのは簡単ですが、これでは日本の将来はどうなるのでしょう。
こう言う時こそ少年の大きな夢を与える必要はないでしょうか。
私の子どもころはそれこそ夢は「大臣か大将」と言われていました。 (もっとも当時の自分のことを考えると、貧乏人の伜の現実から。早く親達を楽にさせたいくらいの小さな夢しかありませんでしたが。)
そのような少年達に夢を与え続けてきたのが小学校後半から中学校前半の少年を対象として出版された少年倶楽部(後に少年クラブの改名)でした。 (当然少女向けには少女クラブがありました。)
私の家は父がいまで言う契約社員、子どもが5人と言う貧乏人の子沢山の家庭で、雑誌など年に数回買って貰う程度で、後は友達のを借りて見るだけでしたが、それでも子ども心に大きな影響を与えられました。
その中で大きな影響を与えてきたのは次のような小説やマンガでした。
吉川英治『神州天馬侠』、佐藤紅緑『あゝ玉杯に花うけて』、『一直線』、『少年讃歌』、『少年連盟』、佐々木邦『苦心の学友』、山中峯太郎『敵中横断三百里』、『亜細亜の曙』 (当時国士、壮士と言う人達がアジアで活躍していた世相を反映したもの)、高垣眸『快傑黒頭巾』、平田晋策『新戦艦高千穂』(空中戦艦)、江戸川乱歩『怪人二十面相』、マンガの田河水泡『のらくろ』(野良犬が軍隊に入り失敗しながらの出世物語)、島田啓三『冒険ダン吉』 (南洋で酋長となって活躍)、川内康範『月光仮面』
一目見てお判りのように少年に夢を与えるものばかりです。
特に少年たちに理想を説く小説を書き続けて多くの少年に夢を与え続けた(作詞家で詩人のサトウハチローさん、作家の佐藤愛子さんの父親の)で佐藤紅緑さんの小説です。
その中でネット上でも一番多く紹介されている、そして私が一番感銘を受けた『あゝ玉杯に花うけて 』の概要を紹介します。
これに就いてはご奇特な方もおられるもので、全文をテキストの形でネット上に出されているのでこれを参考にしました。 (もしご興味のある方がおられましたら是非通読をお勧めいたします。)
・主人公の千三(せんぞう)あだ名チビ公は母親とともに同居している伯父の豆腐屋を助けて売り歩いて家計を助けている。
・学校でも悪いことばかりする阪井巌と言う悪(わる)が、千三の豆腐を盗んだり彼を苛めたりしている。
・その千三をいつも助けているのが小学校時代の友達の光一とその親だ。
・光一の誕生日に招ばれた千三がお土産の折り詰めを巌に奪われうえ、負傷させられた。
・怒った伯父が巌の父の助役に抗議の行き、相手を傷つけ逮捕され、刑務所にいれられた。
・巌は試験のカンニングで協力をしなかったといって、光一の額に怪我させた。巌は停学になったが自主的に退学した。
・間もなく全校生徒から慕われている校長が転勤になった。それは巌の父の坂井が裏で手を回したという噂が立った。
・町会議員の選挙で出所した千三の伯父が坂井反対の旗を振った。かねがねの坂井のあくどいやり方で評判の悪い坂井が落選した。
・選挙後、一部の議員と阪井とがぐるになって、道路の修繕費をごまかして選挙費用に使ったという噂が立ち、息子の巌の耳にも入った
・坂井がある夜急に出ていったので、巌も心配で尾行した。そして坂井の行動に疑問を持っていた千三の伯父もそれにつづいた。
・坂井は役所に忍び込み着服の証拠書類を燃やし役所に火をつけて逃げた。巌はその火を消そうとし、それを心配した坂井が戻って二人とも火に包まれたのを、千三の伯父が助けだした。
・坂井は放火は千三の伯父だといったが、誰も信じるものはなかったが、事件は有耶無耶で片づいた。そして巌は今まで従っていた「力は総て」の父親の教えが間違っているのに気付いた。
・坂井親子は土地を離れた。
・光一は千三に父親が学費を補助するからと言って学校に戻るように勧めたが、千三は自分で生きる道を選んだ。
・千三は伯父の勧めに従い、月謝の制定がない、五円もあれば五十銭もある、米や豆やいもなどを持ってくるものもあると言う黙々塾に入り、ユニークな教師の教えを受けた。
・黙々塾と中学の野球と、地域上げての弁論大会の話
その間にタイトルの「あゝ玉杯に花うけて」の歌詞が散りばめられ、所々に読者諸君と筆者のお説経が入っているのが変わっています。
そして最後の記述です。
読者諸君、回数にかぎりあり、この物語はこれにて擱筆します。もし諸君が人々の消息を知りたければ六年前に一高の寮舎にありし人について聞くがよい。青木千三と柳光一はどの室の窓からその元気のいい顔をだしてどんな声で玉杯をうたったか。それから一年おくれて入校した生蕃とあだなのつく阪井巌という青年が非常な勉強をもって首席で大学にはいったことも同時に聞くがいい。
このような若い人達を奮い立たせ、夢を持たせるような小説は時代遅れだと言う人も居るかも知れませんが、前に書いたように、何時までも果てるとも知れないデフレ、停滞している政治、そして何もかも他人の所為にしている、今こそこのこのような読み物が必要な気がしています。
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