久しぶりに、2月末以来だから実に4か月ぶりにバスと地下鉄に乗った。
車で街中へ出るのは、ちょいちょいあるが、
公共交通機関を利用するのはそれほど月日が開いていた。
珍しく定刻通り来た12時50分のバスに乗り、13時09分発の地下鉄に乗り換えた。
こんな時間だからバスも地下鉄も乗客は多くない。
ソーシャルディスタンスを保つには十分で、
しかも見回せば皆さんきちっとマスクを着用されている。
そうとあってか、いつものようにスマホを熱心にいじっている人たちを、
束の間コロナを忘れた安心感がふわり覆っている。
それは帰りのバスでのことだった。
16時23分発の地下鉄から16時40分のバスに乗り継いだ。
どちらも行きの時より、乗客はやや多め。
それでも、“密”というほどではまったくなく、
またマスク着用の人ばかりとあって、
やはり、コロナがちょっと遠のいたかのように思えた。
ただ、座れる席はなく降車停留所の2つ前まで吊革をしっかり掴んでいた。
ようやく席が空いた。やれやれ。
そして、無意識に目が前に立っている若い女性に向いた。
薄いグリーンのTシャツ、黒のジーンズ、足元はadidasのグレーのサンダル、
そして黒のベースボールキャップ。
そこまで見ていたのだから、しっかり観察していたのだろう、
そう言われても仕方ない。反論はしない。
あれっ、この女性、何だか体の動きが妙だ。
吊革に掴まりながら、遠慮がちに体を揺らしている。
バスの揺れと合わせた動きではない。
すぐにピンときた。髪を透かしてイヤホンの黒いコードがちらり見える。
やっぱり。何か音楽を聞きながら、体を緩く動かしているのだ。
何だか、いい雰囲気。思わず、「かっこいい」と叫んでしまった。
もちろん声には出さず。
同じ停留所で彼女が先に降りた。すると、ぱっと帽子を取る。
薄い茶のロングヘアがはらり。風に吹かれ背へなびいた。
またまた「かっこいい」──鼻の下が少し伸びたろうか。
コロナを忘れた平和なひと時。我ながら呆れ、苦笑しつつ妻の元へ急いだ。