Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

いい女 

2020年06月26日 05時30分59秒 | まち歩き
            
   久しぶりに、2月末以来だから実に4か月ぶりにバスと地下鉄に乗った。
   車で街中へ出るのは、ちょいちょいあるが、
   公共交通機関を利用するのはそれほど月日が開いていた。
                        
珍しく定刻通り来た12時50分のバスに乗り、13時09分発の地下鉄に乗り換えた。
こんな時間だからバスも地下鉄も乗客は多くない。
ソーシャルディスタンスを保つには十分で、
しかも見回せば皆さんきちっとマスクを着用されている。
そうとあってか、いつものようにスマホを熱心にいじっている人たちを、
束の間コロナを忘れた安心感がふわり覆っている。

                     
   
   それは帰りのバスでのことだった。
   16時23分発の地下鉄から16時40分のバスに乗り継いだ。
   どちらも行きの時より、乗客はやや多め。
   それでも、“密”というほどではまったくなく、
   またマスク着用の人ばかりとあって、
   やはり、コロナがちょっと遠のいたかのように思えた。

ただ、座れる席はなく降車停留所の2つ前まで吊革をしっかり掴んでいた。
ようやく席が空いた。やれやれ。
そして、無意識に目が前に立っている若い女性に向いた。
薄いグリーンのTシャツ、黒のジーンズ、足元はadidasのグレーのサンダル、
そして黒のベースボールキャップ。
そこまで見ていたのだから、しっかり観察していたのだろう、
そう言われても仕方ない。反論はしない。
あれっ、この女性、何だか体の動きが妙だ。
吊革に掴まりながら、遠慮がちに体を揺らしている。
バスの揺れと合わせた動きではない。
すぐにピンときた。髪を透かしてイヤホンの黒いコードがちらり見える。
やっぱり。何か音楽を聞きながら、体を緩く動かしているのだ。
何だか、いい雰囲気。思わず、「かっこいい」と叫んでしまった。
もちろん声には出さず。

   同じ停留所で彼女が先に降りた。すると、ぱっと帽子を取る。
   薄い茶のロングヘアがはらり。風に吹かれ背へなびいた。
   またまた「かっこいい」──鼻の下が少し伸びたろうか。
   コロナを忘れた平和なひと時。我ながら呆れ、苦笑しつつ妻の元へ急いだ。