神戸・三宮のキノシネマ(神戸国際会館のある11階の映画館)で「土を喰らう十二ヵ月」を観てきました。二回も続けて(^^;
★松たか子「おいしいものをおいしく食べることしかしていなかった」とホクホク!『土を喰らう十二ヵ月』初日舞台挨拶に登壇
★『土を喰らう十二ヵ月』沢田研二の恋人役 松たか子に作用する歌舞伎の家で学んだこと
館内に、多くのパネルが飾ってあるのが嬉しいです(^-^)
滋味深く、味わい深く、人生の生と死を考えさせ、郷愁を思い起こさせ、ちょびっとだけ我が身も振り返ることになった映画でした。
1年半も撮影に要したという、降り積もる雪景色も美しい白馬の村、築何年の古民家なのか?建物好きの私の眼を注目させる立派な古民家で、野菜を育て料理をし、本を読み執筆し、四季の流れの中で淡々と生活をするジュリー。。。いや、ツトムさん。
温かい心地の良い関西弁で話すツトムさん、今まで関西弁で話す映画にジュリーは出たことあったかな?関西人の私は素直に、その素朴で優し気な語り口が嬉しい。※(大阪弁の映画は大阪物語と、幸福のスイッチが有りました)
真っ白い雪景色から一転、春の芽吹きの中でわらびやゼンマイを採り、手際よく料理をするツトムの手の指は丸くて、その爪は乾燥している。あの細くて白く優美だったジュリーの指は、2022年の今ではこうなっているのか。手際よく料理をするその二の腕には、子供時代の古傷がチラリと見えて、やっぱり今はこれがジュリーの指なのだと納得した。
老いたツトムの背中は丸く、後ろを向いた時のお尻はいつの間にか大きくなって、知らぬ間に存在感がドンと増していた。ライブのジュリーのお尻もこうだった? デビューからずっと半世紀以上も見続けて来ているというのに、いつの間に・・(^^; 田舎住まいで土にまみれる人を演じて、ごく自然な俳優になったんやね。そんなジュリー演じるツトムさんの姿を見ていたはずなのに。
いつのまにか私の胸の内では、亡き母が私のためにと毎春わらびを採りに行き、つくしの甘辛い煮物や、冬には白菜の漬物をつけてくれていたっけ・・と思いだし、実家の母の姿と愛を思い郷愁に浸ってしまった。映画はまだプロローグ、なのにそれだけでもう胸がいっぱいになっている。
泥のついたほうれんを丁寧に洗うツトム。田舎育ちの私は、都会の人はスーパーの土のついていない綺麗な野菜しか知らんやろ、冷たい水も、汚れた土も触りたくないでしょと、ついそんな皮肉な見方をしていることに気がつく。やっぱ育ちよね、根っからの。自分の出自が田舎出だということを恥じていない、むしろ誇りに思う自分がいて、思わず我が身を振り返ることになった映画でもあった。
土を耕し畑を作り、野菜を収穫し、時間をかけて手際よく下ごしらえをし、料理をする。大胆なぶつ切り筍の煮物など(松さん、柔らかい筍の穂先ばかり食べてたね)湯気を立てる精進料理は、ダイナミックで美味しそうだった。胡麻の実をサヤから落とすところから始まる胡麻豆腐には、通夜のふるまいに間に合うのかと心配になったけれども、かつては皆がそうして、長い時間をかけて丹念に丁寧に、いちから全部を作り出してきたんだよなぁ と思う。
周囲が秋を迎え色づいた湖で船に乗ったシーンは、絵画のように幻想的で美しかった。ツトムは自らの死と向き合うことにより、自分の中で気持ちの区切りがついたんだろうか。その心情を思って、とても切なく綺麗な情感のあるシーンだった。
松さんの演じる歳の離れた編集者は可愛くて、よく食べよく笑う快活な女性。夜、寝屋で横になりながらも何を思うのか、目を見開いた表情にドキッとした。映画のシーンでは何も起きなかったんだけど。
いつも何気ないカジュアルな服装でツトムの家にやって来るのに、映画のラスト近くでは、鮮やかな真っ赤なスーツでツトムの前に現れたのは、彼女の内で起こったものが彼女を毅然とさせ、何かを決意させたのだろうか。
ラスト近くのツトムのクローズアップの表情は、年齢と共に刻まれた皺の中で、真剣な眼差しの力が強く光って、見ているとその表情に気圧され、思わず怖くなるほど。いまだかつて、こんな表情のジュリーを見たことがあっただろうか。かつて若さを謳歌し誰よりも美貌を誇ったジュリーは、今は生と死と隣り合わせの年齢になったのだと、そしてそれは全く同じく、私もそういう年齢に近くなったのだと、強く感じさせるシーンだった。
ラストで「いつか君は」が静かに流れて、ジュリーの透明感のある歌声がとても綺麗✨ 映画を見て漣が起きた気持ちを、穏やかに緩やかに鎮めてくれる。もともと大好きな優しい曲だけれど、この映画の中で新たにスポットが当たって、とても嬉しい。一人でも多くの人の耳に届きますように・・。
エンドロールが終わって、J友さんと小さく控えめにだけど、作品に拍手をせずにいられなかった。
買って帰った映画パンフレットが、とても読みごたえがあって、書かれてある小さなエピソード(土井さん、1976年にパリでジュリーとすれ違ったとか、ジュリーがフランスでレコード出した頃やね!)も、いちいち面白くて、今日から当分、この映画の与える余韻から抜け出せそうにない・・
twitterより、パンフレットの画像
最初の上映は9時からなのに、入館開始が8時45分。上映前の15分で、手拭いとパンフレットを買おうとしたら、店員のお兄さんが慣れていないのか、時間がかかるかかる。それは買うお客の方も同じで、前の人お願い! 行列しているんだから、さっさと早く支払いを済ませてください!!
映画の上映が始まってしまわないかと焦りました。😓
一回目の上映後のランチは豆腐料理、ごま豆腐が出てきて、ツトムさんの気持ちになりました。色は黒い、黒ごま豆腐だけど(^-^) 右の一番上です。
多くの種類の豆腐料理が出てきて、目移りしました。