予想していた最悪のシナリオが現実になった。放射線治療によって快方に向かっていると思われていた癌が、肺炎の悪化によって一挙に不治の病に逆戻りしてしまった。食道と肺の間の壁が放射線によって破壊されて肺が慢性的な炎症を患うことになった。そのため放射線治療は無期限に中断された。私は放射線治療が綱渡りだと自覚していたから起こるべきことが起こったと思いさほど驚かなかったが、そういう意識ではなかった親戚等は「なぜ再発したのか」と的外れな疑問を投げ掛けて私を煩わせる。
殆んどの内臓は病原体などの異物に弱い。だからこそ幾重にもガードされている。そんな中で肺と胃は比較的病原体などの異物に強い。これらは外部と繋がることによってしかその機能を果たせないためある程度の耐性を備えている。しかし肺に備わっているのはあくまで気体に対する耐性であり液体や固体に対する耐性など無い。液体が気管に入った時に激しく咳込んで苦しい思いをするのは気体以外の流入が危険だという警鐘だ。食道と肺が繋がってしまえば肺に液体や固体が流入する。これが慢性的な炎症つまり肺炎の常態化を招く。
肺炎を過去の病気だと思っている人がいるかも知れないが、肺炎は現代日本人の死因の第三位だ。私は第一位の癌と第三位の肺炎の両方を患っている訳だから絶望的な状況と言えるだろう。
こんな困った状況に対する放射線科医の指示は意外なものだった。「今日にも入院してステントを使った延命策を始めよ」とのことだった。私は唖然とした。ステントを拒否して放射線治療を始めたのにそれでは元の木阿弥だ。医師に対する信頼感が一挙に薄れた。
指示に従って内科に行き、かれこれ4か月来の長い付き合いになってすっかり顔馴染みになってしまった内科医と相談することになった。医師は私の意向を知っているからステントを勧めようとはせず、薬による肺炎治療を始めるということであっさり合意した。肺炎が完治すれば放射線治療の再開も夢ではなくなる。どんな結果になるかは分からないが決して無駄な抵抗ではなかろう。
前回ステント治療を勧められた時と今回とでは状況が違う。前回は固形物を受け付けず水分補給さえままならない切羽詰まった状況だったが、今回はたとえ少量とは言え飲食が可能な状況だ。緊急性は前回より大幅に薄らいでいる。癌は不完全ではあってもそれなりに治療されているからしばらくは放置できるので肺炎の治療に専念するだけの時間的余裕がある。肺炎が完治できた時点で放射線治療ができるならそれで済むことだ。肺炎がもし治らないならそれは食道と肺の間にできた穴が修復不可能ということだからそれに対応する延命策あるいは比較的快適な状態で死を迎えるための対策を練れば良い。いずれにせよ肺炎治療の成否によって決まることであって現時点であれこれ思案をしても仕方がないことだ。現在可能なベストのために励むしか無い。
殆んどの内臓は病原体などの異物に弱い。だからこそ幾重にもガードされている。そんな中で肺と胃は比較的病原体などの異物に強い。これらは外部と繋がることによってしかその機能を果たせないためある程度の耐性を備えている。しかし肺に備わっているのはあくまで気体に対する耐性であり液体や固体に対する耐性など無い。液体が気管に入った時に激しく咳込んで苦しい思いをするのは気体以外の流入が危険だという警鐘だ。食道と肺が繋がってしまえば肺に液体や固体が流入する。これが慢性的な炎症つまり肺炎の常態化を招く。
肺炎を過去の病気だと思っている人がいるかも知れないが、肺炎は現代日本人の死因の第三位だ。私は第一位の癌と第三位の肺炎の両方を患っている訳だから絶望的な状況と言えるだろう。
こんな困った状況に対する放射線科医の指示は意外なものだった。「今日にも入院してステントを使った延命策を始めよ」とのことだった。私は唖然とした。ステントを拒否して放射線治療を始めたのにそれでは元の木阿弥だ。医師に対する信頼感が一挙に薄れた。
指示に従って内科に行き、かれこれ4か月来の長い付き合いになってすっかり顔馴染みになってしまった内科医と相談することになった。医師は私の意向を知っているからステントを勧めようとはせず、薬による肺炎治療を始めるということであっさり合意した。肺炎が完治すれば放射線治療の再開も夢ではなくなる。どんな結果になるかは分からないが決して無駄な抵抗ではなかろう。
前回ステント治療を勧められた時と今回とでは状況が違う。前回は固形物を受け付けず水分補給さえままならない切羽詰まった状況だったが、今回はたとえ少量とは言え飲食が可能な状況だ。緊急性は前回より大幅に薄らいでいる。癌は不完全ではあってもそれなりに治療されているからしばらくは放置できるので肺炎の治療に専念するだけの時間的余裕がある。肺炎が完治できた時点で放射線治療ができるならそれで済むことだ。肺炎がもし治らないならそれは食道と肺の間にできた穴が修復不可能ということだからそれに対応する延命策あるいは比較的快適な状態で死を迎えるための対策を練れば良い。いずれにせよ肺炎治療の成否によって決まることであって現時点であれこれ思案をしても仕方がないことだ。現在可能なベストのために励むしか無い。