~本記事は全5話からなるシリーズです~
その1(前編)より続く;
※前編で書き忘れましたが、灰白くんも白黄くんも(未去勢と思われる)♂です。
自分も妻もそのときは本当に頑張っていた。とにかくBさんの安眠のために。深夜だろうが未明だろうが、外猫の喧嘩しそうな声を聞けばすぐさま飛び出して事前に収めた。早朝5時前におねだりの声が始まれば飛び起きてご飯を与え、30分後におかわりの催促あればまた飛び起きた。それはもう、自分たちの生活の崩壊でした。その結果として当家は、"周辺住民から非難されるエサやりさん"になっていたのでした。
それにしても7,8件の苦情とは。少なくともわが家の周辺では、先のお三方以外にはそれなりに事情を理解してもらっていたはずだった。そもそも飼い猫じゃなくてノラの話だ。自宅の周辺で鳴き喚いても、それがどんなに続いても、何もしなければよかったのか。2匹はここに来る前にも誰かの世話になっていたはず。同じ町内だったかもしれない。しかし何らかの事情でこの界隈に流れて来た。それは誰のせいでもないことだ。ノラの問題は地域みんなの問題なのに、誰かに押し付けて非難する方に回る。そんなご都合主義に空しさを覚えた。
いやいやいや、待て待て。そういう思考では当のニャンコたちはおろか誰も幸せにならない。みんなが困っている。そして当の猫たちに一番近いのが自分なのだ。苦情と言っても2,3週間前の、2匹の騒音が凄まじかった頃のものかもしれない。ここはひとつ、頭を働かせるときだと考えました。
苦情件数だけがやけに具体的で、回覧の内容が不明朗なことも気になった。おそらく新しい会長さんが誰も傷つかないようにと気を遣った結果なのだろう。だが、それがアダにもなる。ごく少数だがいまだに中外飼いのニャンコもいるのです。おとなしい老猫で、自宅の周辺だけ。界隈の人たちにも認知されていた。そのお宅もこの回覧を見ている・・・。自分は即座にある決意をしました。
自分名義で回覧を回そう。この問題を特定し、明確にして、町内の全員がその対策に参加できる形に持っていこう。役員さんの手を煩わせては申し訳ないので、自分の方から向き合う姿勢を打ち出すのだ。早い方がいい。一晩で作成して、明朝には会長さんのところへ持っていこう。そもそも「子ニャンを救え」の結末で書いたように、それが本来の自分の仕事なのかもしれない。
本ブログには「ノラ」と名のつくカテゴリーがふたつあって、それらの記事を書くときは本当にいろんな事を調べました。エサやり問題に関しては各自治体の取り組み方や裁判事例のみならず、ネット上の殆どのスレッドを読み漁った。特に多数を占める反対派の書き込みには過激なものが多く、理性ある書き込みもあるが、エサやりさん自体が(話の通じない変人として)怖れられているケースも目立った。一筆書くに際してはこれらの知識を生かして、読んだ人に理解してもらわなければならない。
目線の高い書き方も禁物。小池都知事や滝川クリステルさんのような有名人が「殺処分ゼロ」(ノラ救済)を訴えているのは心強い。実際、効果も大きいだろう。だが、ノラたちの窮状を訴えるのもいいが、「動物の命を大切に」だけでは人の心は動かない。正論であればあるほど反感を買う。なぜなら世の中では、「動物の命を大切にする」ことよりも「他人に迷惑をかけない」という通念の方が遥かに優先されているからです。開発によって住処を奪われたクマやイノシシが住宅街に迷い出ればためらいもなく殺処分され、それが当たり前のように報道されているのが現実なのです。
その晩、A4で2枚の文章を1時間ほどで書き上げた。その形式は詫び状。宛名は「町内の皆様へ」 タイトルは「猫の騒音についてのお詫び」 以下にのその要旨です。
1.お詫び。全編にわたって3度お詫びを繰り返した
2.自己紹介。個人で行うノラ保護のボランティア活動について
3.これまでの活動実績(特に保護したばかりのリン一家)
4.2匹のノラ(灰白くんと白黄くん)を特定する。柄や声その他、可能な限り由来を付記
5.2匹が家裏に来たいきさつ
6.駆除の考えのないことを明言
7.餌を与えるようになったいきさつ(自分以外の人には一切触れず)
8.騒音が緩和された現在の状況について
9.(餌を与えている以上)自分の管理責任を明言
10.今後の方針(なるべく早い時期に家中に保護)
11.トイレ、爪とぎ自邸内に強化したが問題発見したら遠慮なく連絡乞う
12.犯罪(動物愛護法違反)である猫捨て監視への呼びかけ
13.(当市や各自治体が推進する)地域猫活動の紹介
灰白くん(左)と白黄くん
生きていくのに必死な2匹に幸せを
回覧ではお詫びはするが弁解はしなかった。自分では最後の方がちょっとウザイ気もしたが、まあまあか。早速妻に読んでもらったところ「ふーん」という素っ気ない感想。ちょっとイマイチかなと不安にもなったが、とりあえず自分が著名捺印したものを翌朝会長さん宅に届けてくれた。
近隣の反応はどうだろうと気になっていた2日後の晩、会長さん夫妻が訪ねて来た。まだお若い会長夫妻とはあまり面識がなかったが、とても気遣いのあるご夫妻だった。自分の詫び状はまだ回覧してないと言う。曰く、「個人名を出したままでいいのかと思いまして・・。」 しかも内容を読んだ限り、○○さんだけの問題じゃないと思うと。会長さんは、自分(私)が槍玉に上がるのではないかと気を遣っていたのでした。そもそも、苦情は当家の近隣よりもむしろ離れたお宅からの方が多かったとも言っていた。
かまわないですよ、と自分は即座に答えました。むしろオープンにしてもらった方が助かる。こういった問題は潜在化すれば必ずこじれるのだと。その後誰かと直接的な問題が起こったら必ず連絡する。会長さんにはそれで納得頂き、いよいよ回覧されることになったのです。
町内回覧物は、短期間で回るようにコピーを取っていくつかのルートで回される。が、わが家(最後の順番)に回ってきたのは3日後のことだった。さて反応は如何にと気になったけど、実際には何もなかった。でも正念場はこれからだ。 Bさんは大丈夫か、灰白くんや白黄くんはどうなるのかと、頭の中がそんな気がかりでいっぱいの時に、その事件は起こったのでした。
2度あることは3度ある。しかし3度目は、そんな単純な言い方では終わらなかった。
その2 「事件勃発・老齢保護者の限界」へと続きます。
中から灰白くんと白黄くんを見つめるニャー
シリーズ「ノラと家猫と」
その1・灰白くん、白黄くんと地域問題(前編) 2018.6.13