今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

ノラたちとの共存を目指して その4・一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」

2017年11月30日 | シリーズ:ノラたちとの共存を目指して
このタイトル、何ヶ月も前から予告していたので変えませんでしたが、やっぱり違ってますね。「ノラだからこそ」じゃなくて「ノラだって」とすべきでした。

ニャンコは分け隔てなくみなかわいい。人間と同じ社会で生活し、心を通わせることができて、時には甘え時には対等に、我々にはとても身近な存在です。それは家猫であってもノラであっても同じ。ただ、室内に拘束され保護者の選択肢がない家猫と違って、自由に場所や相手を選べるノラにはより"対等"の目線が求められます。

「猫と対等だなんて」と思った人は、以前に『ニャン好き恋愛論』で書いたAタイプの保護者かもしれない。猫種にこだわり見栄えにこだわり、滅茶苦茶にかわいがる好意の押し売り。ノラはもちろん他所の猫には興味もない。要するに猫が好きなわけじゃないのです。でもそれは、テレビでやってる多くの動物番組が猫種紹介に明け暮れ、コレクションとしてのペット飼いを煽った結果だろう。

でも自分は、このAタイプの保護者を否定しているわけではありません。保護者は変わる可能性がある。どんな動機で保護者に選ばれたとしても、いつしか家族同様かけがえのない存在になっている。猫にはそんな不思議な力があるからです。自分も、初めて家族が猫を飼うと言い出したときは反対した一人でした。

              
                めずらしく膝の上で寝るニャー
      家庭内オジンストーカー、でも付き合いはあくまでも"対等"です

そもそも、ノラと家猫の違いって何?
本シリーズで調べてきたように、現在日本で飼われている猫の半数以上は元ノラです。逆にノラと言ってもかなりの比率が元飼い猫で、脱走したり捨てられた猫。 自分はかつて、『人生いろいろノラにもいろいろ』というタイトルでノラの分類を試みたことがあります。家猫経験の有無や時期、保護されているのかどうか、どの程度の保護か、過去経験はどうかなどによって、ノラといっても人間への接し方が変わるわけです。もちろん個性にもよるけど、慨して同じ経験であれば同じような行動をとる。我々はノラを見るとこの猫はどうのあの猫はどうのと言うけど、猫から見れば単に経験と学習の結果で人間との距離を決めているだけだ。

しかし結局、その記事は没にしました。分類することに意味のないことがわかったからです。何故なら猫は変わる。同じ猫が、環境が変わればどんどん変わる。しかも可逆的に。だからノラにもなるし家猫にもなる。もちろん生き続けられたらの話ですが。それが、猫に限らない動物の適応能力です。肉体的な適応性(例えば寒暖への適応など)は別にして、人間のように過去を引きずることのない動物は精神的な適応力が強いのです。

以前にニュースでやっていた、アメリカのペットショップで展示する猫を保護したノラに替えてみたところ、売れ行きは変わらなかったと。我々は、人間との距離が近い(人間に馴れている)猫をかわいいと思うのです。自分の猫はノラなんかより数倍かわいい? それは単に、自分との距離が数倍近いというだけのことです。

単にそれだけのことだけど、じゃあ人間と同じ距離にいる猫は同じように感じるのかというと、そこにはやはり個性というものがあって、冒険心が強かったり臆病だったり、いろんなのがいるわけです。でも結論として言えば、家猫とノラの違いなんてない。あるとすれば人間との距離感だけ。その距離感が、かわいいと感じるか怖いと感じるかの差になるだけです。

              
                  日向ぼっこするみう
        わが家に来て半年、徐々に居場所を築きつつあります

お世話しているニャンコたちはどうだろう。
かつてわが家で暮らしていた3匹のうちハナとテツはもともとはノラでしたが、子猫のうちに家に迎えた場合は出身のいきさつなんてまったく関係ないと思います。そして、人にいじられ人にくっついて成長するから人間との距離がない。

では成猫のノラを迎えた場合は? ニャーとみうとテンちゃんの場合、その生活振りはそれぞれのカテゴリーに綴っていますが、総じて、やはりかつての3匹とは違いがある。それはひと口で言えば、人にいじられたり指図されることに慣れてない。猫の性格や経験の違いがあるにしても、今にして思えばその傾向が特に強かったのがシャッポでした。

いずれも甘えん坊で自分からはくっついて来るけど、くっつくときは膝の上でなく膝の横、一緒に寝るときも布団の中でなく布団の横。独り運動会や独りお遊びが普通で、たまに遊んであげると大喜び。かまってちゃんで無視されるとふてったりすることもないので、保護者としてはむしろ楽だ。

もうひとつニャーとみうとテンちゃんに共通しているのは、どことなく遠慮しているようでいじましい。例えば人前ではテーブル(お膳)の上の食べ物を狙わず、くれるのを待っている。これは、人間に叱られる(攻撃される)ことに対する恐怖心がトラウマとして根付いているからだと思います。ノラの時代に、多かれ少なかれそうした経験があるのだ。一方子供から育てられた猫は、叱られることに慣れている。

成猫ノラを迎えた場合、叱ったときの効果(影響)が大きいということは保護者として覚えておく必要があります。信頼関係はゆっくり気長に醸成するもので、一度壊れてしまえば修復するのは大変だ。猫を飼いたい人は猫に癒されたい人。我々は猫ののんびりと平和なツンデレ振りに癒されるのです。子猫を迎えれば、家族が一人(猫)増えたのと同じ楽しさがある。一方成猫のノラを迎え、厳しい生活に耐えてきた彼らが徐々に穏やかになって、やっと手にした平和な生活に浸る姿を見守るのもまた楽し。ニャーたちを見ているとつくづくそう思うのです。

              
                  おねだりテンちゃん
            がっつくことなく静かに待つ"いい子"振り

最後に、これはまだ今後の予感なのですが、ニャーをはじめお世話しているニャンコたちがゆっくりと子供返りをしているような気がします。今は"大人の付き合い"に徹していますが、いつしか彼らも、幼少のときから育てたかつての3匹のようになるのかもしれません。


「ノラたちとの共存を目指して」:予告編(期日未定)
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題)
     2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち)
     2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの)
     2017.8.31
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常)
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動)
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う)
その8 地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)

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子ニャンを救え ~たそがれオジンの救出作戦~(後編)

2017年11月26日 | リン(旧イエミケ),クウ,キー
注)当時は写真を撮る余裕がなかったため記事に対応する写真が殆どありません。そのため本日のスナップ写真を加えました。

(前編より続く)

「飛んで火に入る夏の虫」ならぬ「飛んで檻に入る晩秋のオジン。」
脚立を持って家を飛び出したとき、心のどこかに、事が大事になれば自分の立場が危うくなりそうな不安がありました。そう、ニャンコ嫌いの奥様方が集まってきて、「〇〇さんがノラに餌なんかやるからこんなことになったんでしょ、」というパターン。最近調べた餌やり裁判事例も脳裏にあった。

ノラに餌をやり続けた結果で通常よりノラ密度が少しでも高くなれば、ご近所に影響することは避けられない。どんなに手を尽くしても、鳴き声や姿を隠すことはできないからです。だからそれぞれの人の許容範囲を模索することになる。そして最後には、命の尊さへの理解とか不幸な境遇への同情といった、人々の奥底に流れる人間性に甘えさせてもらうしかない。

一番やってはいけないこと。それは、動物愛護法の理念でもある"命を守る尊さ"を拠り所に自分の正当性を訴え、相手を説き伏せようとすること。何故なら世の中には、「他人に迷惑をかけてはいけない」という理念の方が広く通用しているからです。

つまり「迷惑だからもう餌をやらないで」と言われてしまわないように、日頃から最大限の努力と気遣いを示さなければならないのです。たとえニャンコ嫌いの人であっても敵にはしない。それが唯一、継続的にノラたちを幸せにできる道だから。

フェンスの外から見守る人たちが手を貸してくれなくても、"敵"にならなかっただけで自分がどんなに安堵したことか。前編の最後に書いた「元気100倍」というのは偽りのない本音でした。卑屈になりかけていた気持ちも消えて、子ニャンを救うという自分の行為への自信が蘇ってきたのです。

イエミケ一家の寝床(本日)
棚(上方)の上で合流してから寝床(下方)に入る

とは言え、現実は厳しかった。
黄チビが実にすばしっこい。追っても追ってもつかまらない。ベージュのズボンはくっつき虫で真っ黒になって、運動靴はずぶずぶになって、奥様方は飽きたのか呆れたのかお互いの話に夢中になっていた。そのうち頭が白くボケてきて時間の観念がなくなり、どのくらい黄チビを追い続けたのか覚えてません。

このままじゃまずい、何か他の策を考えねば。自分の行動が空ろになっていくのがわかった。何か他の策。他の策、他の策・・・・。 ふと気づくと、黄チビが草むらの中にうずくまっていた。疲れたのか観念したのか、伏せの姿勢でじっとこっちを見ています。

チャンスかもしれない。慎重に、そーっと近づく。そうだよ黄チビ、勝手口からご飯をあげていたオジンだよ。怖くなんかないさ。 慎重に慎重に、失敗しないように間合いを十分に詰める。そして、祈るような目で自分を見つめる黄チビにゆっくりと右手を伸ばして、背中をつかんだ。

そのとき、つかみ方がいまいち不安定だったのに直す余裕がなかった。やったとばかりに持ち上げると、黄チビは思い切り叫びながら暴れだした。持ち替えたいがもうできない。迷うな、このまま梯子を登りきれ! 右手に黄チビを持ってぬかるみを急ぐ。黄チビの爪が、思いのほか深く鋭く自分の手にひっかかる。梯子までたどり着いたとき、ついに黄チビが人差し指に噛みついた。小さい口と歯の1本1本までが感じられて、それまでにない激痛が走る。黄チビは何度も噛み直し、そのうち顎に一層の力を入れたのかますます歯が指に食い込んで、自分の我慢が限界を超えたのです。

まだ梯子を上りきってはいなかった。最後の我慢と力を振り絞り、目一杯右手を伸ばして黄チビを壁の向こうに差し出すと、同時に黄チビが手から離れて、ドサッという音とともに消えた。 ・・えっ? ドサッ?

黄チビを貯水池の踊り場に置いたはずが予想と違う展開。急ぎ梯子を登って確認すると、その部分は土地が1.5m近く低く、フェンスが下から建てられていた。フェンスと壁の隙間は30㎝もない。黄チビは隙間の奥の方に向かったのか、フェンスの下を潜って低い土地側に向かったのか、その姿は見えなかった。

棚の上で(本日)
白黒チビ(上方)は臆病で直ぐに逃げる

一難去ってまた一難。踊り場に出てズキズキと血の滴る右手をそのままに、左手で"くっつき虫"をとりながら状況を分析した。「どうなったの?」と奥様たちから心配そうに訊かれても答えられない。もごもごと何か説明しているうちに、貯水池の向こうの淵の、奥様方とは反対の端からひょっこりと頭を出した黄チビが見えた。(後で見たらそこに階段があったのです。) 黄チビは周囲を警戒しながら貯水池に面したお宅に移動して、一安心したのか身づくろいを始めた。で、奥様方に子ニャンの安全と、一件の終了を伝えたのでした。

ところが、痛む右手を早く処置したいのに奥様方が散会しない。もうこれ以上目立ちたくないたそがれオジン、長々と"くっつき虫"をとりつつ粘っていると、「出られるの?」と声がかかった。どうやらこっちが外に出るまで見届けるつもりらしい。あるいは一件落着してから、改まって言いたいことがあるのかも。

貯水池からの脱出には、入ったときの倍くらい時間がかかりました。その時自分は日課の朝風呂もまだで、顔も洗ってなかったけど、観念して居合わせた奥様たちに挨拶した。そして、彼女たちが自分の労をねぎらいたかったのだと知って安堵。それから、ニャンコやノラのことをいろいろ話しました。イエミケ一家だけでなくみうやソトチビのことも、このブログの記事そのままに説明。年月が経ってご近所の中外飼いニャンコが減ってきたこと、家で保護しているイエチビが、実はこの街の入口に兄弟もろとも捨てられた子猫だと初めて知った。

話はさらに進んで、動物愛護法の概要、市の殺処分ゼロの方針が実は民間ボラに丸投げなこと、市も警察も来てはくれないがノラを捕まえて持って行くと引き取ってくれるが1、2週間で殺処分される。安楽死ではなく炭酸ガスでもがき苦しんで殺すのだと、ありのままを説明。そして、市が進める地域猫活動の話をしたのです。

散会後、ようやく遅い風呂に入りながらその日の出来事を振り返りました。何だか事件の前と後では何かが少し変わったような気がした。奥様たちはこのオジンの話に感動したようだったけど、だからといって考えや行動が変わるわけでもないだろう。でも、やはり何かが変わった。ちょっとした爽快感を伴って。

その日、家に戻って勝手口から見ると黄チビがいたが
イエミケたちが戻るまで隣庭で陰に隠れていた

黄チビは夕方になって、わが家の裏で母親と兄弟に合流しました。今回はうまくこの子(♂だった)を助けた。でも、この兄弟の前途は明るくない。保護者を探そうにも店にはちび太が、家にはイエチビがいて順番がある。今回の救助が、いくばくの延命に過ぎなかったという可能性だって現実味を帯びているのです。

それを思えば、黄チビを貯水池から助けたといって爽快感に浸れるはずもない。そもそも、ノラの子を救うとはどういうことか。黄チビを助けた自分はヒーロー? ではあるけど、それは一過性のもの。一方、真の意味でノラを助けるということは、彼らに前途ある将来を提供することではないか。地域の住民に認知され、その存在を容認されることこそ、ノラにとっては最大の救いなのだ。もちろん事故や病気など、それだけでは十分でないが。

ようやく合流した黄チビとイエミケ

たそがれオジンには、あの爽快感の正体がもうわかっていました。汚れて血だらけになってしかも筋肉痛になって、あのチビを貯水池から救い出したからではない。ご重鎮の奥様方とまともに話ができて、しかも考えをしっかり表明できて、何だかいい雰囲気で終わることができたからだ。それは小さな一歩かもしれないが、チビたちを真に幸せにするための第一歩だったのです。

小さな一歩、そして小さな勇気。それは、貯水池から救い出すという大きな勇気よりも価値のあることをわからせてくれた、貴重な経験でした。

今朝のイエミケ一家
近頃の当地の朝は、0℃まで下がります
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子ニャンを救え ~たそがれオジンの救出作戦~(前編)

2017年11月24日 | リン(旧イエミケ),クウ,キー
ノラたちに余生を捧げようなんて思うと、何となくご近所に気を遣ってしまうものです。
ご近所に何か迷惑をかけてないか、トイレや掃除は用意しても、鳴き声が迷惑になってないか。わが家の回りにはニャンコ苦手の人もいます。普段はいろいろお話しても、陰で頭に来ちゃってるんじゃないか・・等々、気になることはたくさんある。

一方わが家のニャンコたちは町内でもよく知られています。かつては3匹、今はニャーが、往来の人たちにご挨拶するからです。名前の知れ渡ったご近所の外飼いニャンコもいるし、わが家の裏で生活していたみうもご近所によく知られていました。そうは言っても、保護者不明のノラはまだまだ、"招かれざる者"の扱いが一般的なんです。

イエミケは、2匹の子供たちとわが家の裏で暮らすようになりました。
自分は寝床と食事とトイレを提供しつつ、保護したときの身の振り先を探しています。急がなければ子ニャンたちが巣立ってしまう。妻は、テツがわが家に来たときと似ていると言う。妻の知り合いの家裏で育ったチビニャン2匹。テツはわが家に選ばれたが、もう1匹は知らぬ間に消えてしまったそうだ。何という数奇な運命。「自分が審判を下したのか、」妻は今でも嘆いています。

先日の深夜、その日はイエミケ一家が向こう側の、ソトチビが手前の寝床で休んでいました。夜中の1時頃にイエミケが子供を呼ぶ声が聞こえた。家裏を見ると、一家もソトチビもいなかった。イエミケの声は何処か遠くの方から聞こえてくる。公園にでも行ってはぐれたのかな、そう思いながら寝ました。

翌朝、まだ夜明け前にイエミケの声で目が覚めた。声も大きくかなり逼迫した感じで、どうやら夜通し鳴いていたようだった。それはもう、子供を呼ぶというよりは必死に叫んでいる様子。ただ事ではないことが感じられた。そう、前夜も朝も、子供の姿が見えないのです。

朝ご飯を出しても誰も食べに来ない。イエミケは何度か勝手口に来たけど口もつけない。それどころじゃない様子でドアにすりすり壁にすりすり落ち着きがなく、こっちの顔を見上げては何か懇願するように鳴き続けます。日も高くなってきて、再びやって来ては鳴き続けるイエミケに引かれるように外に出ました。玄関から裏に回ろうとすると、イエミケと白黒チビが見えた。白黒チビはとっても臆病なので、脅してはいけないと近づくのを止めました。そてにしても、あのおしゃまな黄チビの姿が見えない。

その日の昼前、イエミケと白黒チビの姿を確認

積極的な黄チビ、以前に撮った朝のひとコマ

家に入って再び勝手口を開けると、遠くの方からイエミケの鳴き声がした。いや、それに合わせて、かすかだがチビニャンの声が聞こえる。しかもそのチビニャンの声が2匹であることが、しっかりと確認できたのです。

何かトラブったんだろうか・・。 自分はそのときまだパジャマだったので急いで着替えて家を飛び出し、公園の方に向かいました。そして、公園の手前の貯水池まで来て、ようやく事態を理解したのです。そう、あのニャーの大脱走の記事で紹介した貯水池。そのときは水が減って沼地のようになった底が露出していた。その底に生えた草むらに埋もれて、あの黄チビが必死の声を張り上げていました。貯水池の深さは2m以上。その向こう側の端で、イエミケと白黒チビが鳴いていた。

舞台となった貯水池と公園(再掲)、手前が当家の裏のお宅

影で見難いが底の草むらで鳴き続ける黄チビ
(向こう側の壁の段差の部分がポイントです)

黄チビが落ちた。さて、どうする。
貯水池の周囲は2mを超える金網フェンスと、その上に有刺鉄線が3段に張られてとても乗り越えられない。わが家は代々町会の役員をやっているので、この貯水池の鍵が町会ではなく市が委託した管理会社にあることを知っている。以前に相当対応の悪かった会社で期待もできない。困ったぞ、どうするどうする。

妻にも店にも電話したけどなす術なし。ワンちゃん散歩の奥さんがやって来た。その大型犬に吠えられてイエミケたちは姿を消した。その奥さんによると、子猫の声は昨夜からで、助けたい親猫の声もすごかったらしい。何とかしたいがなす術がないのだと。

と、その奥さんと話しているうちにあることに気づいた。貯水池の向こう側は土地が低くなっていてフェンス(と有刺鉄線)にも段差がある。その継ぎ目にすこしの隙間があるのです。そこから入れるのではないか。公園を回って裏の隙間に出ると、大きな立木が邪魔をしているが行けないことはなさそうだ。急いで家に戻り、運動靴に履き替えて脚立を持って、再び公園に向かいました。ああ、ひっそりとノラのお世話をするはずだった黄昏オジンが、こんなに目立つはめになるなんて。

この隙間の奥から貯水池に入れそう(公園側から)

進入口(フェンスの継ぎ目)から沼地のような底を見る

とにかく必死でした。
脚立を持ったまま胸まである公園の格子フェンスを乗り越え、外側からは1.5mくらいの高さがある擁壁の上に。そこを伝って貯水池の金網フェンスに移動。継ぎ目から貯水池に入ろうとすると、立木の太枝がかなり硬くて邪魔になる。そこに死ぬ思いで無理やり割り込んで、何とか金網の内側に入りました。

そして脚立を伸ばして底から立てると、3mになるはずの脚立梯子がぎりぎり。底に下りてみると、何とそこは"ひっつき虫"の中でも一番やっかいなアメリカセンダングサの群落でした。しかも草むらが意外と深く、黄チビの姿が見えない。水を避けながらぬかるみを歩くうちに、先の方を黄チビの逃げていく姿が見えた。そうなんです、黄チビはまだ人に馴れてないのでした。見つけても逃げる黄チビ。探すうちに靴はずぶずぶ、"ひっつき虫"で胸から下が真っ黒に。

貯水池の底を逃げ回る黄チビ

途方にくれて再び妻や店に電話。店にある寒冷紗を投げ網のように使うとか、大きな網を買ってくるとか、どうにも現実的に思えず気乗りがしない。えーい、こうなったらやけくその体力勝負だと再び黄チビを探し始めたとき、ふと上を見上げて愕然としました。ご近所の2階の窓から、奥様方が揃って顔を出していた。

深いコンクリートの壁と高い鉄条網付きの檻に囲まれた中に自分がいて、奥様方が檻の外から見下ろしていたのです。檻に入れられてプライドをずたずたにされた動物園のライオンの気持ちがわかるようだった。予測した中でも最悪の事態が現実になって、「あーあ、自分の人生なんてこんなもんだ。」

周囲は第一期入居の家々。一言も二言もあるご重鎮の奥様方です。先ほどのワンちゃん散歩の奥さん(やはりご重鎮)も、帰路の途中か金網にしがみついて見ている。と、貯水池の向かいの家(わが家の裏)の奥さんが血相変えて出てきた。その奥様はニャンコ嫌いを標榜している顔の広~い奥様。とてもじゃないがたそがれオジンが敵う相手じゃない。いやいやいや、いよいよ雲行きがおかしくなってきた。

案の定、その奥様は出て来るなり開口一番、「このネコ〇〇さん(当家)ちの? もう昨日からとってもうるさくて眠れなかったの。」 聞けば市役所にも電話したが取り合ってくれなかったそうだ。そう、この事件は周囲ではもう知れ渡っていて、何人かの人が朝から役所や警察に連絡したがダメだったらしい。

ノラだけど最近そっちの方からわが家にやって来たので最低限の世話をしている、とそのままを説明。何もしなければ子猫は死ぬ。その辺で死んでもいいのかと。すると、「そんな可愛そうな。」 ニャンコ嫌いとはいえ、不幸になるのを目の当たりにするのは本意じゃない。そうなんだ、そうなんですよ、自分は小さな命を助けたいだけなんですよ、と心の中で叫びました。

すると、その気持ちが伝わったのか奥様たちが口を揃えて、「○○さんが来てくれて本当に助かったわ。」「何とか助けてあげて。」 何と、予期しなかった感謝と期待の言葉を頂いたのでした。 そして、黄昏オジンは元気100倍になったのです。同時に失敗も諦めもできないプレッシャーも。

いや、そんなことはもうどうでもいいと、貯水池の底にできた湿原を当てもなく見渡しながら、たそがれオジンは決意したのでした。

「よっしゃあ、何が何でも助けるぞ」


(後編に続きます)

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恋のキューピット

2017年11月22日 | ニャー
ニャンコたちの生活は千変万化、毎日が新しい展開です。
と言っても、ニャーとみうの生活を変えたのは保護者であるこのオジンです。あの大勃発から1ヶ月が経ち、もうそろそろ落ち着いてくる頃。しかし問題はどのように落ち着くのか、なんて考える間もなく、新しい変化が起こりました。イエチビです。

              
         おとなしくてやんちゃ、とってもかわいいイエチビです

先生のアドバイスの下、みうとニャーの聴力を比較してみると明らかに差がある。でもみうはまったく聞こえないわけじゃないようだ。みうのあの反応の悪さと異様な怯えはどこからくるのかと考えていたその一方で、みうは徐々に積極的になってきました。自分からリビングに下りて来ることが多くなったし、リビングにいる時間も長くなって、ニャーの傍でもおどおどしなくなってきた。

おそらく、みうを変えたのはニャーだと思います。あの大勃発で保護者にこっぴどく怒られた後、ニャーのみうに対する姿勢は変わった。はじめは妙によそよそしくなってみうを避けていたが、イエチビが来て以来、みうをあまり意識しなくなりました。 それで、みうと同室のときにニャーにつけていたハンデ(リードとフック)は、不要になったと判断して止めました。


              
                 「あたしも出たいニャン」
       外にいるニャーを見つけると、ビービー鳴くようになりました

              
           相変わらずダンボール箱大好きのニャーと
                   興味津々のみう

さて、イエチビに対して2匹は・・・。
イエチビは保護した翌々日から、少しずつ部屋から出しています。

ニャーは既に、庭でイエチビと知り合いでした。そのときのニャーの対応はかつて店時代にチビにくっつかれたときと同じで、恐れはしないが面倒くさいから逃げるが勝ち? しかしイエチビはニャーにくっつきたい。ニャーを追うようになりました。逃げ惑うニャーは、イエチビがいるとリビングにも寄り付かなくなった。

              
        イエチビは保護する前も、庭でニャーのくっつき虫だった

みうはどうかと言うと、イエチビが近づいた途端に「シャーッ」 何度かシャーッをやられてビビッて近づけなかったイエチビ、しかしみうの様子が何かおかしいことに気付いた。そーと近寄るとみうが気付かないことがある。それで、みうに忍び寄って襲うようになった。("襲う"と言ってもじゃれついてるだけです。) シャーッと怒りながら逃げるみう。

結局、みうもニャーもイエチビから逃げ惑うようになったのです。 もちろんイエチビは遊びたいだけ。でも、無邪気ほど手に負えないものはないと言うし・・・。

              
               みうに少しづつ忍び寄るイエチビ
         (バレバレの前からでも、とりあえずの練習です)

そこで、イエチビを部屋から出すときはリード付きとしました。拘束されたイエチビにみうは落ち着きを取り戻したけど、ニャーは見るのもイヤといった感じ。 ただ、ニャーをあまり追い詰めると逆に攻撃されたらイエチビはひとたまりもない。今はイエチビの行動を制限することで、ニャーのストレスを軽減する作戦です。

              
               ぎこちないスリーショット

イエチビは、急ぎ保護者さんを募集しています。とにかく人にくっつきたくて仕方のないイエチビ。自分の感覚では、もし譲渡会なんかに出たら結構人気を集めると思います。でも、そういうのって写真ではなかなか伝わらない。できたら近所の人で、見に来てくれる人がいたらと探しているところです。

そしてニャーとみう。イエチビの出現でその関係がどう変わるのか。イエチビが"恋のキューピット"になればと願うのは、ちょっと無謀に過ぎるだろうか。

              
               実況:ただいまのニャーとみう
              「あっ、上下の位置が逆転してる」


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子育て疲れのテンちゃん

2017年11月19日 | (故)テン
久々にテンちゃんの出番です。
前回書いてからもう1ヶ月以上になるんですね。そう、このところテンちゃんの生活は安定してまして、特記事項がないんです。人間年齢では推定60代とまだ初老のテンちゃん、夜は狭い事務所、昼はリード付きで毎日にメリハリがなさすぎるかも。リードの生活では自由に動けず、疾走するなんて夢の夢。テンちゃんは体力維持が大変なんです。でも、体力なんて必要ないくらい穏やかな生活では? いやいやいや、そんなことでいいのかどうか。

何が幸せかなんてわかりません。テンちゃんが選んだわけじゃないけど、今はそんな生活をしています。しかしそこに、降って湧いたように現れたのがちび太。テンちゃんの生活は一変しました。ちび太はテンちゃんを母親のように慕い(男だけど)、テンちゃんに付きまとうようになったのです。

              
            暖かい日は園芸用土販売棚で日光浴
              
              最近はちび太と一緒になりました
              
            寒い日は事務所の床、ヒーターの前で
              (いつもの場所にはちび太が・・)
              
         どこでもいいから、ひたすら眠いテンちゃんです

初老のテンちゃんは寝るのが日課。特に事務所の中では猫のくせに気が抜けているというか、寝息をすやすやイビキをゴーゴーで、まったく事務所らしからぬ雰囲気にしてくれます。一方のちび太は、遊び方に拍車がかかって"荒くれちび太"に変身しました。ちび太にとってはお遊びも生き抜くための訓練なので、手を抜くどころか真剣そのもの。

ちび太がいると、テンちゃんは食事もトイレもできません。何しろこっちの都合も考えずに飛び掛ってくる。先日は、寝息を立てて寝ているテンちゃんにいきなりジャンプして襲い掛かる一幕も。テンちゃんじゃなくても怒り心頭だ。 なので最近は、ちび太があまりにもひどいときはトイレなどに隔離することにしました。

              
              出荷を待つ花苗の前でちび太と
              
           庭木コーナーでは"自然"の中で遊べます
              
              ちび太の様子を伺うテンちゃん
             "事務所の主"の面影はありません

テンちゃんのもうひとつの日課は見回り。最近いい場所を見つけまして、事務所の外側は窓の脇に詰まれたダンボールの上です。ここからだと右手にはダイフクの食事場、正面にはモドキの食事場が見えるので格好の場所なわけです。ただ、せっかくの場所もテンちゃんは目が悪いのか、ダイフクやモドキが来て食べていても殆ど気付きません。おかげでこっちは助かってますが。

              
               テンちゃんの新しい見張り場
              
           右手には事務所の入口とダイフクの食事場
              
           正面の先はスタッフ控室とモドキの食事場

夕方以降、ダイフクやモドキが来る時間になるとテンちゃんの見回りに拍車がかかります。閉店時刻になれば店が忙しくなるので付き添うスタッフも大変。ちび太はこの時間帯、万一に備えて室内に移動です。なので、テンちゃんが自分の時間を満喫できる時間帯でもあるのです。

もしリードがなくなったら何をしたいか。テンちゃんにそう聞けば答えはひとつ。まずちび太のいないところに行きたい。いや、テンちゃんじゃなくてもその気持ちはわかります。実はテンちゃん、ちび太の保護者さんが現れないかなと我々以上に願っているのかもしれません。

              
           あっ、折角の場所もちび太に狙われています

              
                ついに乱入されました


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