今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

「ルイよ、ノラのど根性見届けた」(前編) ~ルイ逝く~

2019年10月26日 | (故)ルイ(新手、顔白)
それはひとつの命の壮絶な、そして厳かな最後の闘病でした。
生きることへの素直さと執着心。骨と皮になった悲惨なルイを懸命に看病しながら、その生きようとする姿に感動すら覚えていた。しかしルイは、再度の大災害を当地に引き起こす豪雨が降り始めた昨日の未明に、静かに息を引き取りました。昨日は近所の川が次々と氾濫するニュースを見ながら、儀式のように襲ってくる後悔に浸りました。そんな自分の気持ちも含めて、一部始終を克明に記録した日記を基にルイの闘病をまとめてみます。

前記事「頑張れルイ、・・」でルイが1リットルの腹水を抜いたと書きましたが、それは腹水の全量ではなく見た目で少なくともあと500ccくらいはお腹に残っていた。腹水を抜くと栄養まで一緒に失う。先生はルイの体力低下を懸念して残したのだと思います。ただそれは腹水が再び吸収されればの話だ。腹水の量はもともと圧バランスや浸透圧(濃度差)で血管や腹膜から出入りすることで調整される。腹水が溜まるのは何らかの異常で再吸収されなくなったからで、もしその異常が解消されれば吸収される可能性もあり、そうなればルイにとっては貴重な栄養だ。それでも検査結果を待たずに腹水を抜いたのは、ルイの食欲回復と呼吸を楽にするためでした。

しかしまだそれだけ腹水が残っているということは、ルイの実質体重が3kgを切っていたことを意味する。日記で確認するとルイは保護して病院に連れていく1週間ほど前からほぼ残すようになり、3日ほど前からは殆ど何も口にしていない。そうなる前にも既に食べる量が激減している。ルイは極端な栄養失調状態だったのだ。ところが腹水を抜いた後も肝心の食欲が回復しない。いや、食欲はあった。ドライもウェットも食べようと試みる。特に匂いの強いウェットには首を伸ばしてくるし、チュールなどにはガバッと起き上がってきた。しかしお腹が痛いのか気持ちが悪いのか、2口3口でぴたりと止まってしまうのでした。

殆ど動こうとしないルイはケージから出てくつろぐことが多かった

腹水を抜いてからのルイは幾分楽になったかのように見えた。ケージにいれば人が近付くと出たいと鳴くし、トイレも自分で用をたした。ただ、動きは必要最低限でそれ以外は移動しようとすらしない。わが家まで歩いてきたのに、保護した途端に動かなくなったのは気になった。特に腹水を抜いてからは注意して看ていたが、体力の低下は明らかだった。ルイの介抱は、如何にして食べてもらうかに尽きました。

通院の翌日(保護2日目)には殆ど食べなかったルイも、あれやこれや試すうちに3日目には少し食べるようになった。保護されればノラ時代とは待遇が違う。カリカリは中の猫の食べ残しではなくて新しいのだし、おやつに使う高級なものも与えてみた。ウェットは冷蔵庫に保管した古いのではなくて開けたばかりで新しい。さらにおやつタイプの高級レトルトまで至れり尽くせりの内容だ。ルイが食欲をそそられたことは間違いない。しかしやはり、5口6口食べるとぴたりと止まってしまう。そのうちカリカリには見向きもしなくなった。それでも諦めずに試していると、フィリックスのレトルトなら少し食べることがわかった。それとシーバを数粒。

3日めの夕方には腹水がまた少し漏れていた。トイレも使っていたが、シート上でお漏らしして下半身が濡れてしまった。それでも鳴き声が少し元気になって、機嫌は徐々に回復しているようだった。

お腹から少し腹水をこぼしたルイ

4日目、とにかく栄養が必要と強制給餌を再開した。最初はミオの療養食。前回は殆ど抵抗しなかったルイが今度は嫌がった。シリンジで3回か4回、3ccほど飲ませると立ち上がって逃げていく。 えっ、立って歩けるんだ! ルイには災難だが、その光景は嬉しかった。ルイは1mほど歩くとまた伏せるので、追いかけてまた3ccほど飲ませる。 と、また逃げる。これを繰り返して20ccほど飲ませた。なるほどこの手がある。栄養補給とリハビリを兼ねて一石二鳥だ。しかし次にチュールをモンペチスープで希釈してあげると、今度は逃げなかった。

ただ、こんな強制給餌では到底栄養が足りない。ルイはいくら動かないと言っても、最低でも基礎代謝分として1日に160Kcalは必要なんです。苦労して強制給餌で20cc飲ませてもせいぜい15Kcalあるかないか。これを1日3回やったとしても全然足りない。結局強制給餌は、栄養的には水分補給くらいの意味しかない。栄養を摂取するにはとにかく乾物、カリカリを食べてもらう必要がある。カリカリなら、重量あたりのエネルギーがウェットの8~10倍あるのです。

それで一番可能性のあったシーバで、いろいろあげ方を工夫してみた。すると、他の乾物と混ぜず器も使わず5粒ほどを鼻先に置くと食べた。一度に多く置くとダメで、5粒くらいを食べ終わってから次のを置く。ルイがじっと見つめたらしめたもの。そのうち首を伸ばして、亀のようにパクッと1粒づつ食べたのです。次第に間隔が空いてきてそのうち食べなくなったが、そのときは合計で30粒も食べた。よし、この調子だ。容態も安定してきたし、将来に向けて少し光明が見えた気がしたのでした。

ガリガリに痩せてはいるが、それなりに穏やかに見えた

ところがその日の夜半、5日目に入った頃のこと。保護部屋を覗くと、2m以上にわたって茶色い水のような下痢便を延々と垂らした先にルイが倒れていた。時間をかけて下半身を拭き洗いして、体勢を整えようとしたがルイの様子は明らかに変わっていた。脱力状態で頭すら持ち上がらない。横になってしまって伏せの状態を維持することもできなかった。ルイの突然の変化に慌てふためきながら、考えてみれば2週間近くも殆ど食べてないルイが力尽きるのは時間の問題だったのだと改めて思い知る。それまで何の手も打たずに、ルイの頑張りに甘えるだけだった自分にほとほと嫌気がさした。ルイは明らかに危篤状態でした。脳裏にテツやテンちゃんを看取ったときの状況が蘇る。あの経験からすればあと半日か。ルイはそんな感じだった。

急に力尽きた感じになったルイ
身体を拭いたときは、浮き出た骨が痛々しかった

山のような後悔に襲われながら、ルイを独りにはしないと心に決めた。でも、ルイは自分が付き添うことで安心するのだろうか。つい数日前まで自然を駆け回る自由奔放なノラだったルイ。自分はルイにとって餌やり爺さんくらいの存在でしかなかっただろう。などとぐだぐだ考えながらルイの看病を続けた。そのとき自分は、その後にルイの生に向けた不屈の根性と驚異の精神力を見ることになろうとは、思いもしなかったのでした。

自分では殆ど身動きしないが、ルイの意識ははっきりしている

※1記事に納めたかったのですが文章力(構成力?)のなさで長くなってしまいました。
  後編に続きます。

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