家では、白米を炊いて食べるより、スパゲティーを食べるほうが多い。
簡単で美味しいからだ。でも、外ではあまり食べない。
それには理由がある。
村上春樹のエッセイをパラパラとめくっていたら、「リストランテの夜」というのがあった。
村上夫妻が、結婚記念日を祝うために、青山の洒落た高級イタリア料理店に入ったときの出来事だ。
少し離れた席に20代後半の都会的な身なりをした若い男女のカップルがいた。
聞くつもりはなかったが、二人の会話を聞いていると、この二人は深い仲になる直前なんだな、というのが分かったそうだ。
プリモピアット(前菜の次に出てくるやつかな)が出てきた。それがパスタだったそうだ。
男性が、それを気持ちよさそうに「ズルズルズル」とすさまじい音を立てて食べたそうだ。
周りにいた村上夫妻、ウェイター、ソムリエ、相手の女性、全員が凍りついたそうだ。
その後、このカップルはどうなったんだろう、といって話は終わる。
僕は青山の高級のレストランには行かないが、行ったらきちんと行儀よく食べるだろう。
それぐらいのマナーはある。
でも、僕は強く言いたい。その男性の気持ちがよく分かる。本当によく分かる。
僕もスパゲッティーをズルズル食べたい派だ。
家では遠慮なく大きな音を立てて、ズルズルと食べている。
僕はカプリチョーザのトマトとニンニクのスパゲッティーがすごく好きだ。
しかし、ズルズル食べれないので、あんまり行かない。
だって、行儀よく食べると美味しくないんですよ。
一人で食べてるときは音を立ててもいいですよね。誰にも迷惑かけていないからね。
そのかわり、人がいるときは、音は立てません。あしからず。