いつか読まねば、と思っている世界の名著が、いまだにたくさんあります。なかでも、西欧世界の根幹の思想を形作っているキリスト教。この世界宗教のことを知らないと、アメリカ映画一つ、ちゃんと理解できないのではないかとも思えるときがよくあります。
そう思いはするものの、大衆向けに書かれたバニヤンの「天路歴程」すら、この年まで読まずに来てしまいました。先日、たまたま必要があって図書館で適当に探して借りてみたら、もとはアニメの原作だったというこの絵本に出会いました。
何が入っているかわからない大きな荷物を背負った若い男が、悲しそうな顔をして分厚い書物を開いています。背後には、暗雲垂れ込める空の下、彼が後にしたらしい街の風景が広がっています。
語り手が見た夢として語られるこの本の中の主人公の名はクリスチャン。彼の持っている厚い本には、彼がすんでいる町は「滅びの街」で、すぐに逃げ出さないと彼も家族も恐ろしいことになると書いていあります。
ここから始まる彼の冒険の旅。「天路歴程」というタイトルは明治の日本人がつけたもので、欧米では「巡礼の旅」とか「危険な旅」とかいうのだそうです。
とにかく彼は次々に怪物に襲われたり、底なし沼におぼれそうになったり、困難な状況におちいり、まるでテレビゲーム。最後は天国にいたり、筋は単純でとくに面白いわけではないのですが、クリスチャンが旅の途中で出会う人間たちの名前がおもしろい。
ヨワタリさん、律法マモル氏、カタクナさん、イイカゲンさん、タワケ、ナマケ、オモイアガリ、コワガリ氏、シンジナイ氏・・・
世の中のいろんな種類の人たちや、一人の人の心に巣くういろんな気持ちを網羅しているかのような、さもありなんという命名です。こういうところがさすが西欧。最後のころクリスチャンが出会う同行者の名前は、ホープフル(希望者)。たぶん、キリスト教文化圏では、子どものころの必読書なのでしょう。よくできています。
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