NJWindow(J)

モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。

KJV「独特な(”peculiar,” or『風変わりな』)民」(Iペテ2:9)は今日から見れば誤訳

2018-01-16 14:19:27 | 聖書

[この言葉は英語世界に定着している] 

末日聖徒は英語で時々「独特な(または『風変わりな』)民」と呼ばれ、また私たちはそれを意識し誇りにもしてきた。先日そのことが神権会で話題になった。他の人たちとは異なっていることを積極的に明らかにしていこうという説教を読んでいて、英語を母国語とする会員がペテロ前書2:9に英語ではpeculiar とあると指摘した。私はそれに対し、ギリシャ語ではどうなっているかを確認する必要がありますね、と意見を述べた。

案の定、調べてみると、λαὸϛ  ες περιποίησιν (a people that has become [God’s own] possession) とある。それで日本語訳は「神につける民、神の所有とされた民」(口語訳、文語訳、二番目の訳は新改訳)となっている。

さらに、出エジプト19:5 KJV peculiar treasure としている部分に相当するヘブライ語は סְגֻלָּה , segullah 「所有物」possession, property となっている*。このsegullah は七十人訳でπεριούσιος と訳され、テトス2:14 (Iぺテ2:9) につながっていくのである。

英語の現代語訳はいずれ** peculiar と訳しておらず、KJVの訳 peculiar は今日の語義から見れば、適切でないことがわかる。

(updated 27th of Jan.)

 

 

*邦訳は「わたしの宝、わたしの所有」(口語訳、新共同訳、新改訳、文語訳。二番目の訳は関根正雄訳)。

**NRSV, REB, NIV, RSV, . . .など possession と訳出されている。

[補足] late Middle English (in the sense ‘particular’): from Latin peculiaris ‘of private property’, from peculium ‘property’, from pecu ‘cattle’ (cattle being private property). The sense ‘strange’ dates from the early 17th century. [from Internet page] 従って、誤訳というのは言い過ぎ、KJVの時点では property の意が残っていたと思われる。記事 revise 済. 2018.01.27.




最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
テクストゥス・レセプトゥスでも? (オムナイ)
2018-01-18 14:21:02
興味深いです。

>私はそれに対し、ギリシャ語ではどうなっているかを確認する必要がありますね、と意見を述べた。

おそらくネストレ・アーラント版のギリシャ語なんでしょうか。

KJVの底本TRのギリシャ語だと少し違うのかも。

(少しあたってみましたが。。わからずじまいw)

返信する
TRでも (NJ)
2018-01-18 21:48:12
はい、私が当たったのは Eberhard Nestle's Novum Testamentum Graece 21st edition (初版1958, 1975三版の再版)です。

https://www.logosapostolic.org/bibles/textus_receptus/1_peter/fpet02.htm では、やはり peripoieisin 、「所有物、持ち物」(possession) が元の言葉でした。

肉薄する Omni さんに緊張する私です。
返信する
う・・・・ん、 15世紀前半くらいの (たまWEB)
2018-01-19 09:18:11
PECULIAR の意味は、所有の といった意味だったという、というのはウエブスター辞書(19世紀以降)の第一項目が、その’所有の’になってるからという話。
peculiar 自体はラテン語由来で、意味は群れ、欽定訳者は主の群れといった意味合いで使ったのであろうと・・ま、そういう説明があるにはありますな・・・

https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=peculiar%20%20greek

返信する
恭悦でごあす。 (オムナイ)
2018-01-19 19:00:52
「篤姫」いらい久しぶりの薩摩が舞台の「せごどん」に影響されてます。

なるほど、KJは底本の問題以外にも色々あるのですね。
読み比べは大切。

感謝感謝。

返信する
particular の元の意 (NJ)
2018-01-20 17:55:39
たまWEBさん、コメントありがとうございます。particular の語義を遡って調べる点が抜けていました。記事本文に加えるか、編集(書き直し)致します。

KJVで使用された語彙の意味が変遷しているのですね。創世記 2:4 に出てくる generations もそうであることが分かりました。誤訳というより、現代では分かりにくなっている例だと思います。

ご指摘に感謝致します。
返信する
モルモン・ドクトリンの (たまWEB)
2018-01-28 08:01:43
マッコンキーさんが、説教で、peculiarを使ってたようなのが思い出された感じ・・・世とは異なる、特別な選ばれた民であるとかって言ってた関連で、そこんとこが強調されて受けとめられてきたんでしょう。ギリシア語のオリジナルや、当時のそれに、’(主の)所有の’といった意味合いだったとかって知ってたとしても説教などで触れてなかったんでしょうね・・・

https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=mcconkie%20doctrine%20peculiar
返信する

コメントを投稿