絵画に現れた疫病の蔓延 - - NHKの番組を見て - -

　新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、NHKのBS衛星放送が美術に現れた疫病蔓延を描いた作品を紹介していた。4/19日「疫病をこえて 人は何を描いてきたか」。そこに人々の対応の変遷を見ることができ、人類が危機に面しながらも生き延びてきたしたたかさと知恵を見た。

 

　１ 日本では疫病が鬼畜とみなされ恐怖を覚えたが、僧侶が念仏を唱えて退治しようとし、人々がその仏事に参加した。その状況が、ややユーモアを込めて描かれている。例、15世紀初頭の融通念仏縁起絵巻。入口で僧が仏事に参加した者のリストを見せ、この人たちに危害を及ぼさないよう告げている。

 

　２ 1348年ヨーロッパを襲った黒死病（ペスト、3年続いた）で、ヨーロッパの人口が半減したと伝えられる。人々は絶望のうちに死をまつばかりとなり、消費にあけくれた。この絶望的享楽を「死の舞踏」と呼び、ヨーロッパ各地で歌や絵の題材として採り上げられることになった。(Insight Now).

 

　*聖書の記載では出エジプト記7-11章に記された10の災い、特にエジプトの初子に及ぶ死が疫病によるものではないか、と私はこの稿を書いていて気づいた。biblestudytools.com は10の災いを疫病 plague と見る。

**上の２を経験した人々は暗い時代をくぐって、ルネサンスで明るさの伴った芸術を表現することになる。

 

[京都大学所蔵]

　３ 日本に伝わる半人半魚の妖怪アマビエ。光輝く姿で海中から現れ、豊作や疫病などの予言をすると伝えられている。疫病退散を願うものとして最近SNSなどに登場している。

 

　昔、人々は疫病や激しい災害を神の下す罰と受けとめ、恐怖と悔悟の念に打ち砕かれた。現代人は遙かに文明が進んでそのような反応をしないけれども、自分や身辺の人の死や自己を取り巻く文明の崩壊（少なくとも大幅な後退）を予感し、なすすべがない点で変わっていない。

　そこで残念だけれども襲う可能性のある災いを、心中覚悟する必要があるのではないか。勿論ただ座して待つのではなく、最大限手立てを講じて災いを最小限にするように、知恵を絞り、一致協力し、痛み分けをする精神が求められる。

　そして、悲観的になりすぎないように、また終末論や黙示的な見方に傾かないよう気をつけたいと思う。人間らしく生き、可能な範囲で日常生活を維持するよう心掛けたいもの。