2 パネルディスカッション「学問的モルモン史の英米以外の教会における
影響」(The Use in Non-Anglo-American Contexts of Mormon History)
このテーマはBYUハワイ校のエサン・ヨーガソンが昨年の学会でジャン・シ
ップス女史の発言を聞いて思いついたものである。それは教会が説くジョセフ
・スミスの話と学会で共有されている内容が、最近ただ隔たっているだけでは
なく様相が変化してきている、と語ったことであった。そこでアメリカ以外で
はどのような状況にであるかに焦点を当てようと、台湾、メキシコ、日本、オ
ランダの学者を招いたものである。
このパネルディスカッションは土曜日午後開かれ、40-50名が会場の部屋に
集まった。
台湾出身でBYUハワイで教える陳さん(Chiung Hwang Chen、女性)は、台北、
高雄で200人に調査して、全般的に教会歴史の理解が乏しく、教会で公的に
教えられるもの以外は反モルモンであるという反応が大勢を占める、と実証的
な報告をした。 メキシコ人でBYUの歴史教授イグナシオ・M・ガルシア氏は、
今ラテン系の会員が急増していて将来多数派になるであろう、現在は教会史と
言えばアメリカの歴史であるが、本来モルモン書時代に遡って西洋人でない人
が執筆すべきである、と熱っぽく語った。
ついで日本から小生が「学問的モルモン史の日本の教会員に与えた影響」と
題して、過去7年間インターネットが与えた大きな影響について報告した。先
ず監督であった森英樹氏自身が主に英語のサイトから教会史の情報を得て転向
し、’97年にホームページ「モルモン教会の真実」、「聖徒の未知」を開設し
たこと、このサイト出現を機に指導的な地位にあった人を含めて少なからぬ会
員が教会を去り、その後上記のようなサイトの掲示板で盛んなやりとりが交わ
されている現状を伝えた。同時に学究的モルモン史の知識を得ても宗教実践と
教会史とを分けて受けとめ、教会に留まる人が出始めていることにも触れた。
最後にオランダのユトレヒト大学文化人類学教授ウォルター・E・A・ヴァン・
ビーク氏は、ヨーロッパでモルモン教会は内向きの姿勢であって統計的に停滞
していること、世俗化(政教分離、宗教の果す役割の希薄化)の進んだヨーロ
ッパでは市民にとって教会に加わる理由がなく、むしろアムネスティやグリー
ンピースなどキリスト教的運動が人々を吸収していてキリスト教会は影が薄く、
モルモン教会も人々の目にとまらない、と語った。内向きの末日聖徒は社会と
の文化的関係に欠け、まだ世界の教会とは言えない、依然アメリカの教会であ
る、そして今日アメリカとの係わりはプラスに作用しない、とレベルが高くテ
ンポの速い授業のように自論を展開した。そしてさり気なく、皆さん海外旅行
するときは、自分はカナダ人だと言ってください、アメリカ人は世界中で嫌わ
れていますから、とユーモアたっぷりに述べた。大変自由に遠慮なくアメリカ
批判が開陳され、筆者はつい「同感」と相槌をうったのでした。 私はこの部
屋にチエコ・岡崎姉妹がいることに気付いて驚き、また嬉しかった。彼女は今
や著述家、教会の中でひとりの思想家として知られる著名人で、批判的な内の
飛び交うこの部屋に来られるとは予想していなかったからである。また、教会
の歴史博物館から来た婦人が私の所に来て、興味深かったと話されたのにも驚
いた。教会の職員がこの種の会に出ていることを知ったからである。 (沼野治郎)
影響」(The Use in Non-Anglo-American Contexts of Mormon History)
このテーマはBYUハワイ校のエサン・ヨーガソンが昨年の学会でジャン・シ
ップス女史の発言を聞いて思いついたものである。それは教会が説くジョセフ
・スミスの話と学会で共有されている内容が、最近ただ隔たっているだけでは
なく様相が変化してきている、と語ったことであった。そこでアメリカ以外で
はどのような状況にであるかに焦点を当てようと、台湾、メキシコ、日本、オ
ランダの学者を招いたものである。
このパネルディスカッションは土曜日午後開かれ、40-50名が会場の部屋に
集まった。
台湾出身でBYUハワイで教える陳さん(Chiung Hwang Chen、女性)は、台北、
高雄で200人に調査して、全般的に教会歴史の理解が乏しく、教会で公的に
教えられるもの以外は反モルモンであるという反応が大勢を占める、と実証的
な報告をした。 メキシコ人でBYUの歴史教授イグナシオ・M・ガルシア氏は、
今ラテン系の会員が急増していて将来多数派になるであろう、現在は教会史と
言えばアメリカの歴史であるが、本来モルモン書時代に遡って西洋人でない人
が執筆すべきである、と熱っぽく語った。
ついで日本から小生が「学問的モルモン史の日本の教会員に与えた影響」と
題して、過去7年間インターネットが与えた大きな影響について報告した。先
ず監督であった森英樹氏自身が主に英語のサイトから教会史の情報を得て転向
し、’97年にホームページ「モルモン教会の真実」、「聖徒の未知」を開設し
たこと、このサイト出現を機に指導的な地位にあった人を含めて少なからぬ会
員が教会を去り、その後上記のようなサイトの掲示板で盛んなやりとりが交わ
されている現状を伝えた。同時に学究的モルモン史の知識を得ても宗教実践と
教会史とを分けて受けとめ、教会に留まる人が出始めていることにも触れた。
最後にオランダのユトレヒト大学文化人類学教授ウォルター・E・A・ヴァン・
ビーク氏は、ヨーロッパでモルモン教会は内向きの姿勢であって統計的に停滞
していること、世俗化(政教分離、宗教の果す役割の希薄化)の進んだヨーロ
ッパでは市民にとって教会に加わる理由がなく、むしろアムネスティやグリー
ンピースなどキリスト教的運動が人々を吸収していてキリスト教会は影が薄く、
モルモン教会も人々の目にとまらない、と語った。内向きの末日聖徒は社会と
の文化的関係に欠け、まだ世界の教会とは言えない、依然アメリカの教会であ
る、そして今日アメリカとの係わりはプラスに作用しない、とレベルが高くテ
ンポの速い授業のように自論を展開した。そしてさり気なく、皆さん海外旅行
するときは、自分はカナダ人だと言ってください、アメリカ人は世界中で嫌わ
れていますから、とユーモアたっぷりに述べた。大変自由に遠慮なくアメリカ
批判が開陳され、筆者はつい「同感」と相槌をうったのでした。 私はこの部
屋にチエコ・岡崎姉妹がいることに気付いて驚き、また嬉しかった。彼女は今
や著述家、教会の中でひとりの思想家として知られる著名人で、批判的な内の
飛び交うこの部屋に来られるとは予想していなかったからである。また、教会
の歴史博物館から来た婦人が私の所に来て、興味深かったと話されたのにも驚
いた。教会の職員がこの種の会に出ていることを知ったからである。 (沼野治郎)
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