「お茶もち」
主な伝承地域 県央地域、盛岡市
主な使用食材 うるち米粉、くるみ、しょうゆ、みりん
歴史・由来・関連行事
県央地域は北上川流域で平坦な土地が多く、古くから水田地帯がひらけており、米の生産規模は比較的大きかった。しかし冷害で米がとれない年もあったため、食生活を安定させるために大麦、小麦、そばの生産も行われ、米やそれらを粉にして使う文化が発達したと言われている。
「お茶もち」は、うるち米の粉で作った団子を2~3個串に刺して薄くつぶし、くるみだれ(しょうゆまたはみそ味)で味付けしたものを焼いた餅菓子で、昔は囲炉裏で両面をあぶって焦げ目をつけ熱いうちに食した。農家の小昼や子供のおやつとして長く市民に愛されている。名前の由来は、形が軍配うちわに似ていることから「うちわ餅」と呼んだものが、なまったと言われている。
また、盛岡市内では、米の粉に水を加えながら練ってつくる餅菓子類を総じて「べんじぇもの」と呼ぶ。江戸時代、盛岡の中心部を流れる北上川は舟運の中心であり、北上川を上って都から物資を運んできた船を「弁財船」と呼んだ。その「弁財船」によって運ばれてきた上方からの華やかな品物は「弁財物」と呼ばれ、盛岡弁になまって「べんじぇもの」となり、餅菓子類の名前として残っている。
食習の機会や時季
農作業の合間の小昼(休憩)や盆・彼岸をはじめ、子供のおやつとして食された。現在も子供から大人まで、おやつやちょっとした手土産として、日常的に食している。
飲食方法
うるち米粉にお湯を入れてこね、平らな団子状に伸ばす。それを2~3個串に刺したものを蒸し、くるみだれをつけて焼いて食べる。くるみだれにはしょうゆ味のものとみそ味のものがある。くるみだれを塗る前の状態であれば、冷凍が可能。岩手県ではくるみは食生活に深く根付いており、「おいしい味」のことを「くるみあじ(くるびあじ)」と表現することもあるほど県民にとって特別なもの。「お茶もち」はそのくるみとしょうゆというシンプルな味付けを楽しめるお菓子である。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
家で作られることは少なくなったが、和菓子店などで販売されており、人気のおやつである。岩手県は郷土料理を伝承する人や団体を「岩手県食の匠」として認定しており、「お茶もち」についても「岩手県食の匠」がいる。盛岡市では食育事業などで「岩手県食の匠」による伝承活動が行われている。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/28_11_iwate.html より