イザヤ・ペンダサンが、山本氏のペンネームだと考えると、やはり違和感が残ります。語る主体が架空の人物という虚構が、内容の真剣さを曇らせる気がします。
どんな理由があるとしても、これほど重要な意見ならユダヤ人の呼称を借りず、自分の意見として堂々と述べるべきだったと思います。
前回は、第12章「しのびよる日本人への迫害」からの紹介でしたが、貴重な指摘と思いました。ユダヤ人でなく、氏自身の言葉として語られる方が、私にはずっと身近に感じられます。
しかし49年前の話であり、著者が謎に包まれていたことでベストセラーになったのですから、今言うことではなさそうです。
貴重な意見として受け止め、昨日の続きを紹介します。
・迫害されたのは、何もユダヤ人だけではない。ある社会的位置に置かれれば、その民族は常に迫害される可能性がある。
・かってインドネシアでは、政治経済の機構を握っていたのはオランダ人だった。
・その末端を掌握し、民衆と直接に接していたのが華僑だった。
・オランダ人の政権が崩壊し、スカルノ大統領とその一党が政権を掌握した時、決定的な、華僑の大迫害が起こった。
・アフリカでも、事情は同じだった。
・支配者はイギリス人だったが、経済機構の末端を掌握し、原住民と接していたのはアラブ人だった。
・植民地時代が終わりイギリス人が去り、新しい現地人の指導者が座ると、それと同時にアラブ人への迫害と虐殺が爆発した。
こうして氏は、過去の民族迫害の事例を語ります。
・今や世界が非常に狭くなり、地球が一つの経済単位になりつつある。地域社会の形が、全地球的規模になってきた。
・ユダヤ人、アラブ人、あるいは華僑やインド人の占めていた位置は、世界的な規模で日本に移ったと言ってよい。
つまり、地球全体を支配する白人優位の世界で、日本人はユダヤ人やアラブ人や華僑のように、支配者の代理人の位置に地球規模でついている、という考えでした。
私が重要視したのは、次の意見です。
・かっては地域の民衆の暴動であったものが、今や一国の政府の行動として、起こされる時代になっている。すなわち、政府が先頭に立って、ある民族の全財産を没収し、その民族の全員を国外に放逐しても、大したニュースにもならない時代になってきた。
・全地球的規模において、日本人が今どういう位置にあるのか、いろいろと考えさせられるのは、私だけではあるまい。
49年後の現在、中国と韓国・北朝鮮が氏の予見通り日本人迫害を始めています。
〈 中国の言い分、主張 〉
日本は南京で中国人を、30万人虐殺した。歴史のある限り、中国人はこのことを怒りとともに記憶し忘れない。沖縄は元々中国の属国であり、尖閣諸島も中国の領土だ。
〈 韓国の言い分、主張 〉
日帝は韓国を植民地にし、非道な政治をした。若い娘を20万人も強制連行し、軍隊の慰み者とし最後は虐殺した。朝鮮国民の多くを強制連行し、劣悪な条件で酷使し、謝罪すらしない。この恨みは、1,000年たっても消えない。
時間が経つにつれ中国と韓国が足並みを揃え、日本を攻撃します。彼らの主張の多くは根拠のない捏造ですが、アメリカ、フランス、カナダなどで、プロパガンダを続けています。
・人災とは、ユダヤ人が受けてきたような、災害に用いられるべきであろう。これは、千年でも二千年でもじりじりと続いて、いつ果てるとも知れないのである。
前回氏の言葉を紹介しましたが、隣国による終わりのない難癖は、表題通りの「しのびよる日本人への迫害」です。同時に、「ジリジリと続き、いつ果てるとも知れない、人害」です。
私が氏の意見を尊重するのは、ここまでです。
帝国ホテルのロビーで、ユダヤ人の友人と交わした議論の中から、この本が生まれたという経緯を知りますと、ここに氏の限界を見ます。氏はユダヤ人を、迫害を受けた民族として語りますが、私は別の意見を持っています。
1. ユダヤ人は迫害された民族でもあったが、迫害する側の民族でもあった。
2. 勤勉で優秀なユダヤ人は、世界の金融界と思想界をの主導権を握っている。
3. ユダヤ人は地球的規模で思考し、実行する力を持っている。
ユダヤ人が華僑やアラブ人やインド人と違うところは、彼らが世界の金融と、学問( 学界 ) の主導権を握っているところです。世界経済を牛耳っているのは、ロスチャイルド・ロックフェラー・サッスーン・ クーンロエブ・モルガン・ベクテル・ザハロフの7大財閥です。
この中で、ロスチャイルド財閥とロックフェラー財閥が群を抜いています。ロックフェラー財閥はもともとはユダヤ人財閥でなく、WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)でしたが、ユダヤ財閥との緊密な関係が出来上がる中で融合し、ユダヤ化したとも言われています。
彼らは、豊富な資金で政治家を囲い込み、大統領や首相を動かします。マスコミ界や映画界にも影響を及ぼし、自分たちの利益につなげます。
私が知る世界一級のユダヤ人学者は、アインシュタイン、マルクス、フロイト、オッペンハイマーがいます。映画人としては、ワーナー兄弟、フォックス、監督ではスピルバーグ、金融界では、バーナンキFRB元議長がそうです。
私が知る政治家には、レーニン、トロッキー、それとキッシンジャー、ブレジンスキーです。親中派のキッシンジャー、ブレジンスキーが中国を利用し、日本の孤立化を図っていた話は有名です。
49年前に山本氏が、この事実を把握していたのかどうかは知りません。しかし、これだけユダヤ人のことに詳しいのですから、無知であったとは思いません。
したがって、私の氏への評価は次のようになります。
1. 「しのびよる日本人への迫害」の予測は、見事に的中した。
2. ユダヤ人の受けた迫害だけを語り、彼らが他民族を迫害する力を持つ民族であることを語らなかった。
3. 氏は日本を愛する人物というより、書籍の販売利益を優先する個人主義者だった。つまり、ユダヤ主義者。
氏は、まだ多くの問題を提起し、私たちに有意義な知識を提供していますが、書評は今日で終わりといたします。
日本の言論界で、氏は保守論客と言われていたとのことですが、ユダヤ主義者の保守論に私は興味がありません。拙い主張だとしても、私は「愛国者の保守論」が聞きたいと思います。