ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

日本国家の形成 - 6 ( 日本史の中心に日本が無い、歴史学者 )

2019-03-28 21:26:07 | 徒然の記
 山尾氏の著作は、第3章「大化の改新の実態」です。これについて述べる前に、別途調べた「大化の改新」の説明を紹介します。
 
 「大化の改新は、飛鳥時代の孝徳天皇の646年に発布された、」「改新の詔 ( みことのり ) に基づく、政治的改革である。」「改新の詔は、ヤマト政権の、土地・人民支配の体制(氏姓制度)を廃止し、」「天皇を中心とする、律令国家成立を目指す内容となっている。」
 
 「この政治改革は、皇極天皇の皇居における、蘇我入鹿暗殺により、」「当時、天皇を次々と擁立したり、廃したりするほど権勢を誇っていた、蘇我氏を滅亡させた、」「乙巳の変(いっしのへん、おっしのへん)から、始まった。」 
 
 「改革そのものは、天皇ではなく、」「皇極太上天皇と、その親友とされる、」「中臣鎌足の主導のもと、」「年若い両皇子(中大兄、大海人)の協力によって、推進された。」
 
 「この改革によって、豪族を中心とした政治から、」「天皇中心の政治へと移り変わったとされている。」「また大化は、日本最初の元号である。」「この改革により、日本という国号と、天皇という称号の使用が、始まったとされる。」
 
 山尾氏の著作を読んでいながら、わざわざ別の情報を探した理由を、説明しなくてなりません。
 
   1. 氏の説明では、大化の改新の意味が掴めない。 
   2. 氏の使う言葉は不適切な用語で、読者である私に不快感を与える。
 
 古代の日本を語るとき、なぜか氏は朝鮮との関係を重視し、すべての出来事に朝鮮の事実をからめます。なぜ、日本の歴史を中心にして、書き進められないのか。客観的事実を求める、学者の良心がそうさせるのか。依然として判断がつきませんが、日本人である自分を耐えがたくさせます。
 
 日本の歴史で大転換をもたらした出来事が、三つあると考えています。学校で教えられたのでなく、年金暮らしの読書生活で知ったことですから、歴史に詳しい人物は、別の出来事をあげるのかもしれません。
 
  1. 大化の改新   2. 明治維新  3. 大東亜戦争の敗北
 
 この出来事以降、日本が大きく転換しました。歴史ばかりでなく、国民の意識や、文化や伝統まで、嵐に見舞われました。どれを取っても重大なできごとで、受け止めなくてならない事実だと、考えています。しかるに氏は、大化の改新を説明する時、「クーデター」という言葉を使います。ブリタニカの辞典で、「クーデター」は、次のように説明されています。
 
 「一般に武力による奇襲攻撃により、政権を奪取することをいう。」「通常の政権交代方式と違って、非合法的であることに特徴がある。」「また革命は、支配階級に対する大衆の蜂起と、それに続く既存の体制の転覆であるが、」「クーデターは、支配階級内部の権力争奪である点で、革命とも違っている。」
 
 息子たちに、この不快感が伝わるのか分かりませんが、訪問される方々の中には、理解する人がいるような気がします。国家大変革の重大事を、マルクス用語で語ろうというのですから、良識を疑います。他の説明では「政治的改革」という言葉を使っており、学校でもそのように習いました。非合法な、武力による政権奪取とは、一度も教わりません。まして「クーデター」などと。
 
 前回のブログで、下記の氏の意見を紹介しました。
 
 「畿内閥族による、地方の土豪に対する階級的闘争が、」「律令国家機構を生み出すまで、徹底して苛烈なものになるのは、」「663年の、白村江 ( はくすきのえ ) の、敗戦を待たねばならぬと思う。」
 
 大化の改新の遠因が、白村江の敗戦にあるという意見です。氏の著書では、古代史の日本の動きが、すべて朝鮮の3国との関係で説明されます。もしかすると氏の頭には、未開な文化しか持たない日本と、先進国である韓国という図式が、固定されているのかもしれません。
 
 「自分の国の安全を、自分の国の軍隊で守れない日本は、アメリカの属国でしかない。」「中国や韓国の難癖にも反論せず、国際社会で孤立している日本は、情けない国である。」
 
 私はこの認識に立ち、「日本を取り戻そう」と、息子たちへのブログを綴っています。だからといって、現状を日本の歴史として語るとき、氏がするようにアメリカや、中国や韓国を第一のものとして説明するでしょうか。これらの国々が、日本に対し大きな影響を及ぼしているからといって、日本の政府が劣っているとか、つまらない国だとか、そんな分析だけで終わるのでしょうか。
 
 世界のどこの国でも、たとえ小さな貧しい小国でも、国民に歴史を語るときは、誇りと希望を教えます。これが世界の常識と考える私は、不快感を持ちながら氏の叙述を紹介し、本日のブログを終わります。
 
 「聖徳太子の時代は閥族政治の開始であって、」「太子の政治が、改新の先駆だと言えるほどの根拠は、ほとんどない。」「改新そのものが、はたして公地・公民制の採用と、規定しうるのかどうか、大いに疑問であろう。」
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日本国家の形成 - 5 ( 『記紀』の否定に終始する、山尾氏 )

2019-03-28 21:17:47 | 徒然の記
 山尾氏の著作は、やっと半分です。四苦八苦しています。難解な哲学書でもないのに、なぜこんなに分かりづらいのか。やっと、原因の一つを、見つけました。
 
 『日本国家の形成』という書名なのに、国家の主体となるものが明確に語られていません。『古事記』と『日本書紀』を否定する氏の立場からすれば、古墳・飛鳥の時代に、日本には全国統一の政権は存在しなかった、という話になるのかもしれません。
 
 氏は説明の中で、「大和朝廷」「天皇」という言葉を使用しません。その代わりとして、「倭王権」「大王」という聞きなれない用語を使います。だから私は、氏が何について説明しているのか時々理解ができなくなります。
 
 昭和に生まれ、平成を生きてきた私にとって、皇室は日本史を貫く一本の糸です。天皇を曖昧にし語らない歴史を、どうやら私の心は、日本史として受け取れなくなっているようです。古代の社会では豪族たちが割拠し、互いに覇を争っていた。天皇は、その豪族の中の一つの勢力でしかないと主張したいのなら、そういう意見を一貫して展開すれば良いと思います。
 
 戦前に政府や、頑迷な歴史学者たちが、天皇をむやみに神格化し、自由な研究を許さなかったという事実を知っています。だからといって、敗戦後に極端な否定をするというのでは、それもまた節度の無い話ではありませんか。
 
 その具体例を、123ページの「推古朝の国家の段階」から、紹介します。予備知識として、「ミヤケ」に関する氏の説明を、先に転記します。
 
 「ミヤケとは、大王または朝廷の倉庫や屋舎などの建物のある、一角の場所などを表す時に使われた言葉らしい。」
 
 「地溝開発や、堤防築造によると否とにかかわらず、」「『記紀』に共通する、ミヤケ設置記事は、」「きわめて古い時代から、始まっているかのように書かれているが、」「伝承文にある時代に設置されたとまで言うのは、論理の飛躍であって、」「はっきり分かるのは伝承でなく、期限や由来が説明されている時代だけの、実在である。」
 
 「応神・仁徳頃からの、開発とミヤケの設置の伝承は、事実と認められている。」「しかし垂仁とか景行などという、古い時代はおろか、」「仁徳期の話さえ、ほとんど史実性がない。」「そもそも『記紀』の全体構造、すなわち7世紀の王権史認識の中で考えるなら、」「とうてい、そのまま承認することのできないものである。 」
 
 氏がここで言っているのは、推古天皇の時代に、地溝開発やミヤケの設置が広く行われたという、『古事記・日本書紀』の記述は、信用できないという意見です。本文はもっと長く、詳細な説明ですが、どうせ私には判断できないのですから、割愛して紹介しました。
 
 分からないついでに、もう一例だけ、127ページより転記いたします。
 
 「隋書の一般的性質からも、」「倭国伝にみえるいくつかの記事からも、」「このような、中央・地方の政治組織は、倭人が文物礼制の具備を修飾し、誇張していると見るのが、妥当なのであって、」「中国人の空想として、一蹴する説には同調できない。」
 
 「倭人が畿内の現実をかなり誇張し、プランに過ぎぬものを、全国的に完成したものとして、」「伝えたのであろうと、思う。」
 
 隋の古文書が、日本の政治組織の整備を書いていると、それは誇張して日本が伝えたものだと、氏は説明します。何であれ、日本については否定せずにおれない、奇妙な歴史学者です。この章の締めくくりの言葉も、ついでに紹介します。
 
 「私は、幾多の国家の要素の、発達を認めつつも、」「7世紀半ばでも、なお、上述の程度と考えるのであって、」「畿内閥族による、地方の土豪に対する、階級的闘争が、」「律令国家機構を生み出すまで、徹底して苛烈なものになるのは、663年の、白村江 ( はくすきのえ ) の、敗戦を待たねばならぬと思う。」
 
 ここにきて、なんと階級闘争という言葉が出てきました。資本主義の萌芽すらない、古代律令制の国に、どんな階級闘争があると、氏は言いたいのでしょう。朝廷貴族と、地方の豪族とのせめぎ合いを、階級闘争と見るでしょうか。
 
 氏の意見が正しいのかどうか、依然として、判断がつきません。疲れてまいりましたので、本日はこれまでとし、次回へつなぎます。
コメント (2)
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