京極純一氏著『日本の政治』 ( 昭和58年刊 東京大学出版会 )を、読み終えました。「有意義な悪書」と言う言葉があるとすれば、この本がそれです。
裏扉にある著者略歴に、簡単な紹介があります。「大正13年 京都市に生まれる。」「昭和22年 東京大学法学部卒業」「現在 東京大学法学部教授」
略歴を見ただけで、反日左翼教授でないかと疑いました。
403ページの分厚い本で、重さだけでいえばハンチントン氏の『文明の衝突』に負けません。日本の若者のために役立たつ本と言う基準で言えば、ハンチントン氏以下のレベルです。悪書という物差しで測れば、京極氏の方が数段上です。
なぜなら京極氏は、多くの反日左翼学者と異なり、マルキストらしい主張を最後までしません。左翼学者は定型的左翼用語を得意げに並べ、読者の眠気を誘いますが、氏の著書はぼんやりと読んでいれば、博学な大学教授の本にしか思えません。
結論を先の述べますと、「有意義」とする理由は以下の3点です。
1. 反日の学者らしく日本政治の歴史を少しも評価せず批判的に語るが、一面の妥当性があり参考になる。
2. ものごとには光と影があるが、光を言わず影についてだけ語っても意見としては参考になる。
3. 保守党の政治家と支援する国民には、有力な反省材料となる。
悪書とする理由は、簡単です。 ここまで分厚い著書を書きながら、日本における4つの重要事に言及していない。
1 皇室 2 大東亜戦争 3 東京裁判 4 現行憲法
取り上げていけばまだありますが、このような姿勢で『日本の政治』と、大きな表題をつけたと呆れます。
保守党政治の愚かさ、政治家のレベルの低さ、国民のお粗末さなど、根気よく調べ詳しく述べられています。説明は間違いでありませんが、政治の全てではなく政治の真実でもありません。大学の教室で光の部分を語らず、影の部分だけを学生に教えるのですから、たちの悪い教授です。日本を蝕む病原菌に似た氏の意見をまとめた本ですから、間違いなく悪書です。
書評に入る前に、もう少し詳しく氏に経歴を調べてみました。
「京極 純一は、大正13年1月26日生まれ、」「 平成28年2月1日、老衰のため死去。」「満92歳没。」「日本の政治学者。専門は政治意識論、日本政治論。」
「東京大学教授、千葉大学教授、東京女子大学学長などを歴任。」「平成元年、紫綬褒章受章。」「平成9年、日本学士院会員。」「平成10年、勲二等瑞宝章受章。」「平成13年、文化功労者。 」
「大学院時代の指導教官は堀豊彦で、京極の専門は政治意識論、日本政治論。」「統計学や計量分析を取り入れ、選挙や世論、政治意識を分析し、」「政治過程論として発展させ、戦後の日本政治を考察した先駆者である。」
「昭和58年刊行の著書、『日本の政治』では、日本の政治文化について、 〈 タテマエとホンネ 〉 や 〈根回し〉、」「あるいは 〈 内と外〉や、〈 義理人情 〉などの言葉を使って考察し、」「日本政治の仕組みを、人々の生活感覚、秩序像、死生観にまで遡って論じ、大きな反響を呼んだ。」
書評に取り組もうとする著書について、説明までしてあります。情報で見ますと氏は著名人で、東京女子大の学長も務めています。文化勲章と文化功労者の違いを知りませんでしたから、これも調べました。
「文化功労者は、日本において文化の向上発達に関し、特に功績顕著な者を指す称号。」「文化勲章よりも多くの者が選ばれ、文化人にとっては、同勲章に次ぐ栄誉となっている。」
一つ賢くなったついでに、氏の恩師である堀豊彦氏について調べてみました。
「京極氏は、第二次世界大戦の惨劇を目にしたことから、世界平和の為の世界政府、世界連邦設立の可能性について研究する。」
「キリスト教の指導者賀川豊彦、東大総長南原繁、法学部教授堀豊彦、及び世界政府協会ジョージ・オーサワ(桜沢如一)らに師事。」
ここに堀豊彦氏の名前が出てきます。賀川豊彦氏や南原繁氏は、大正・昭和期のキリスト教社会運動家で、堀氏もその仲間です。そうなると京極氏は、頑迷なマルキストでと言うより、社会主義思想を信じるキリスト教的平和主義者、もう少し簡単に言えば、反日西洋崇拝者の一人ということでしょうか。氏の主張の曖昧さは、この辺りから来ているのか。今はまだ分かりません。
次回から、「有意義な悪書」の書評を始めます。