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世界が日本を認める日 -5 ( 反米オルフレン氏の提案 )

2019-12-18 19:08:31 | 徒然の記
 『世界が日本を認める日』を、読み終えました。有意義なことをたくさん教えられましたが、氏が日本に求めている下記2つの提案を、そのまま受け入れる気にはなりません。
 
  1.  ブッシュ(ジュニア)大統領以後、アメリカは以前とは別の国になった。他国が反対してもアメリカだけで判断し、アメリカの正義で武力を行使する野蛮な国に変貌した。イラク戦争がその良い例である。
 
  2.  日本は危険な侵略国となったアメリカと手を切り、中国、インド、ロシア、そしてEUと協力し、新しい世界秩序を作るために貢献すべきだ。アメリカを除外した、ユーラシア大陸連合が今後の世界の中心となる。
 
 大胆な提案ですが、この意見は私のこれまでの経験に合致せず、疑問の方が大です。氏に言わせれば、日本とアメリカの偏った情報に影響されているということになるのでしょうが、そこは学徒として今後検証したいと思います。
 
 2001 (平成13 ) 年9月11日に、アメリカ合衆国で、イスラム過激派テロ組織アルカイダによる、4つのテロ攻撃が行われました。世界貿易センタービルへの航空機の突入など、一連のテロによる死者は2,996人、負傷者は6,000人以上でした。
 
 テレビ中継で映し出された被害の状況を、今も覚えています。アメリカの人々の、怒りと悲しみを目の当たりにしました。2002年にはブッシュ大統領が、イラン、北朝鮮、そしてイラクは悪の枢軸、テロ支援国家であると演説をしました。テロを憎み、テロとの戦いを宣言したブッシュ大統領に対し、多くの日本人もその怒りを理解しました。
 
 2年後の2003 (平成15 ) 年3月から始まったイラク戦争は、この流れに沿ったものでした。アメリカが主体となり、イギリス、オーストラリアと、ポーランドが加わる有志連合によって、イラクの大量破壊兵器保持を理由としたイラク侵攻でした。
 
 正規軍同士の戦闘が終了し、5月にブッシュ大統領による「戦闘終結宣言」が出ましたが、アメリカが指摘した大量破壊兵器の発見はできませんでした。イラクの治安悪化が収まらずその後も戦闘が続き、2010 (平成22 ) 年8月に、オバマ大統領による「戦闘終結宣言」が出され、やっと米軍が撤退を開始しました。
 
 日本のマスコミは、イラクのフセイン大統領を横暴な独裁者として伝えていましたから、私はアメリカの行動を是認していました。氏の説明によりますと、イギリスを除く西欧諸国はこの戦争に反対し、中東諸国はもちろん大反対だったと言います。
 
 「ブッシュ政権の攻撃的な単独主義政策は、共和党右派が支配する国内の政治環境があって、初めて実行できたのある。」「アメリカの一般大衆は、ベトナム戦争時のように、自国が悪玉として描かれるのを、もう見たくなかったし、負け犬のように感じることにうんざりしていた。」
 
 「カーター政権後に訪れた、右派の華々しい復活は、アメリカ人のナショナリズム感情を大きく刺激した。」「だからこそ、アメリカにとって何ら脅威でなかった国を、ブッシュ政権が攻撃できたのである。」「イラク戦争は、ブッシュ政権と、イギリスのブレア政権が、国民を惑わすためについた大きな政治的ウソの証として、歴史に残るだろう。」
 
 これがイラク戦争に対する氏の見解で、私がこれまで受けていた情報と大枠で一致しています。この侵略戦争になぜ小泉首相は協力し、自衛隊を派遣したのか。国際社会で信頼を失っているアメリカに、どうして従属しているのか。氏は、その必要はなくなっていると批判します。
 
 北朝鮮問題については、私と異なる意見を述べます。
 
 「ブッシュ政権はイラク侵攻後、北朝鮮問題に真剣に取り組むと言ったが、それを示す、説得力のある証拠は何もない。」「いわゆる六カ国協議の主導権は、ワシントンから北京に移っている。」「日本は残念ながら、この協議では端に追いやられている。拉致問題に固執していることが、六カ国協議の目標を妨げてきたからだ。」
 
 以後の叙述を見ますと、アメリカが憎しの反動なのか、信じられないほどの親中、親北ぶりです。拉致問題に関する氏の意見を、私は意外なものと受け止め、認める気になりません。北朝鮮の犯罪を追及し、国民の救出を主張するのは国の責務です。罪もなく拉致され、何十年も束縛されている日本人の救出を第一とする、政府と外務省を是とします。
 
 「外務省の官僚やジャーナリスト、現役の外交官や、政策理論家と話す中で、私が繰り返し聞かされてきたのは、日本が、アメリカの意向に沿った姿勢を取らざるを得ないのは、北朝鮮の脅威があるからだという主張だった。」
 
 「日本はアメリカを必要としている。北朝鮮から、日本を守ることができるのは、アメリカだけだからだ、という理由だ。」「アメリカはむしろ、北朝鮮の望みを正当と認めず、挑発的な行動をとることで、日本をより危険にしてきたのである。」
 
 日本の外務省の官僚やジャーナリストたちが、本気で言ったのでしょうか。アメリカ従属の外交をするのは北朝鮮問題があるからだと、こんな意見は聞いたことがありません。
 
 ここまで、日本を愛するという氏の意見を読んできましたが、日本を愛し日本のために意見を述べるのは、やはり日本国民しかいないと言うことです。滞在歴の長い駐日特派員だとしても、遠く離れたオランダ人に、敵対する隣国との関係は理解できないのだと思います。『日本が世界に認められる日』と言う氏の著作に対する私の答えは、いつも通りです。
 
  1.  憲法を改正し、自国を守る軍隊を持つこと。
  2.  皇室を護持し、日本の歴史と文化を守ること。
 
 在日米軍基地がなくなれば、独自の外交可能性が高まります。米国との協力関係を維持しながら、失った日本を取り戻さなくてなりません。まだ多くのことを氏が語っていますが、私の参考になりません。日本を愛する故の批判だとしても、まとを外れた意見は息子たちに紹介する価値がありません。
 
 これで書評を終わりとします。
コメント (2)
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