ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

拉致問題・ 専門家諸氏の意見 - 5

2024-03-30 22:03:58 | 徒然の記

 西江 ( そがん  ) 大学客員教授であるワン・ソンテク氏は、北朝鮮外交問題に関する専門記者として、20年以上南北、米朝交渉の現場を取材してきた人物だそうです。

 そんな氏には、日米韓が足並みを揃え北朝鮮への圧力を続ける中、今年に入り、金正恩総書記の見舞い電報や妹の与正氏の談話など、日朝が急速に接近しているように見えるそうです。日本人だけでなく、韓国人が見た日朝関係という視点で氏の意見は参考になります。

 もともと韓国では保守派・進歩派という二大勢力が対立し、政治を不安定にしていますが、捏造の慰安婦問題や徴用工問題で、散々日本に難癖をつけてきたのが進歩党です。

 進歩党は大統領選挙に僅差で敗れ、ユン政権の誕生を許しましたが、依然として国民の支持の半分を得ていますから、彼らの動きは無視できません。ワン教授が、私たちの知らない韓国の事情を教えてくれます。

 「 4. ワン・ソンテク氏の意見 」

  ・日朝はある意味、互いに対話をする意思はやりとり済みで、日朝会談の実現に向けた具体的な条件について、意思を交換している。そう考えれば辻褄が合うのです。

  ・北朝鮮に対し、強硬な姿勢を貫いてきた保守派の支持で誕生した尹 ( ユン ) 政権ですが、今日本と北朝鮮の接近を簡単に批判できない状況にあります。

  ・保守派のユン大統領は北朝鮮に対し強硬政策を展開しているので、日朝の接近に大いに反発する可能性があります。しかし一方でユン政権は、日本との良好な関係を重要政策として掲げています。ですから日朝の接触に多少の不満はあるでしょうが、日本と表立って衝突することは起こり得ないわけです。

  ・保守派とは反対に、北朝鮮との宥和政策を推し進めてきた進歩派は、これまで日本に対して歴史認識などで強硬な姿勢をとってきました。しかし今回は、日本の動きを支持するという声が上がってきています。

 反日の塊である進歩党に支持されても、それは単に「敵の敵は味方」という一時的な戦術ですから、日朝の接近がユン政権打倒に利用されるとしたら、迷惑な話です。

  ・進歩党からすると、ユン政権は北朝鮮との対話面において過剰に強硬な立場をとっているため、せめて日本だけでも乗り出して、北朝鮮との話し合いを実現させれば、これが米朝対話につながると期待している。

  ・さらにそれが南北対話につながり、朝鮮半島の緊張緩和につながり、平和体制の構築に少しでも役立つのであれば良いと、進歩党は日本と北朝鮮の接触について前向きな態度を見せることがある訳です。

 一つの国が動くと、予想しない面から他国が連動するというのは、国際社会の常識なのかもしれません。日本の専門家が関係国の話をしないので、ワン氏の説明が視野を広げてくれます。

  ・日朝会談に向けて前向きなものがあるとしたら、そこにメリットを感じるのはアメリカも同じです。ユン大統領の強硬姿勢で緊張が高まり続ける韓国に、アメリカが負担を感じ始めています。

  ・朝鮮半島の緊張が高まりすぎて、戦争の脅威が統制可能な範囲以上に高まると、アメリカに負担がかかりすぎるからです。北朝鮮に対する断固たる態度は、「統制できる範囲内」でのみ行われなければなりません。

 韓国、アメリカの話と視野を広げてくれましたが、疑問も広げてくれる氏の意見です。何をするか分からない独裁者を相手にしているのに、「統制できる範囲内」で対応すべきと自国の大統領に注文をつけています。ネットで氏の略歴を探しましたが、著名人でないらしく見つかりませんでしたので、西江大学について調べてみました。

  ・西江大学校は昭和35 ( 1960 ) 年に、カトリックのイエズス会により設立されたミッション系大学である

  ・著名な卒業生は、朴槿恵元大統領 

 進歩党系の反政府大学でないことは分かりましたが、北朝鮮を必要以上に刺激するなと、氏が大統領批判者であるのは間違いなさそうです。

  ・日朝首脳会談が「朝鮮半島の安定」という軍事的緊張を緩和し安定する方向になれば、つまりアメリカの立場から見て「管理できる程度」になれば、好ましいことなのです。

  ・急浮上した日朝会談の可能性は、こうした状況だからこそ、日本独自の動きを進めるため「悪くない環境」です。

  ・日本の役割はありますし、岸田総理にはその構想があると思います。今日本に与えられた様々な条件からして、日本の動きは日本自身にも役立ち、周りにも貢献できるのです。

  ・ただ、拉致問題だけが日朝会談の全てではありません。非核化という大きな障害が存在していますが、たとえ現在の水面下での接触が失敗し、首脳会談が実現しなかったとしても、水面下での対話のチャンネルを構築するという成果を残せば、今後の可能性があるのです。

 核保有のため巨額の資金を費やしている北朝鮮は、経済的に破綻し、加えて農業政策の失敗から食糧が国民に行き渡っていないと言われています。アメリカから対話の道を閉ざされ、韓国には主敵宣言をしていますから、金総書記は曖昧戦略を取る岸田政権に擦り寄ろうとしています。

 ワン氏はこれを、日本にとって好条件の環境だと言い、岸田首相の姿勢を積極的に評価しています。独裁者の金総書記ほどではありませんが、岸田首相も政権維持のためには何をするか分からない人物ですから、「ねこ庭」ではむしろ不安が半分以上です。

 ここまでで番組に登場する専門家4人の意見を紹介し、残るのは「 5. 堤伸輔氏の意見 」一人となりました。堤氏は北朝鮮問題の専門家でなく、当番組の制作コメンテーターであり新潮社の学芸出版部の編集委員ですから、発言は多くありません。男女2名の司会者を含め、4人の専門家たちが事前に打ち合わせをしていたのか、ぶっつけ本番に意見を述べたのか、そういうところも推測しながら、次回は最後の紹介をします。

  「 5. 堤伸輔氏の意見 」

コメント
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