1. 平成28年8月8日の陛下の「おことば」は、陛下と美智子様で推敲されたお言葉だった
2. 風岡宮内庁長官の影響力は、ほとんどなかった。
今回のテーマは、上記事実を証明する根拠を見つけることです。高橋氏の説明がその一つでしたが、さらに美智子様の陛下への影響力を証明する根拠を探しました。
それが前回紹介した、平成21年9月の『文藝春秋』に掲載されていた皇室問題に関する6人の対談記事でした。
座談会メンバーの人たちは、皇室問題の専門家、有識者と呼ばれるジャーナリストや評論家ですが、この中に共同通信社の高橋氏がいましたので驚かされました。
現在はマスコミが秋篠宮家の紀子様を批判攻撃していますが、当時は皇太子だった現天皇・皇后両陛下への遠慮のない批判が溢れていました。平成21年9月の同誌による6人の座談も、当時の皇太子ご夫妻への厳しい批判が中心です。
今回のテーマに無関係なので、6人の中の朝日新聞編集委員岩井克己氏と、精神科医香山リカ氏、高橋氏の談話部分のみを紹介します。以下は美智子様の、陛下への影響力を証明する根拠となる意見です。
〈 朝日新聞編集委員岩井克己氏 〉
・皇后様の発信能力、リテラシー能力というのは凄い。
・今の両陛下は言ってみれば共働きであり、皇后様は、皇室生まれの人の目に届かないものを補おうと、常に努力されているし、最強の副官のような存在だと思うんです。
〈 精神科医香山リカ氏 〉
・両陛下のお気持ちを忖度する、行幸啓のプロデューサー的な方はいないのですか。
〈 朝日新聞編集委員岩井克己氏 〉
・プロデューサーは、両陛下ご自身でしょうね。昭和でしたら、侍従長の入江相政さんが、そういう立場だったでしょうけれど・・
〈 元・共同通信・社会部部長高橋宏氏 〉・・現・皇室研究家
・偉大なる昭和天皇の後、というプレッシャーは、相当なものだったと思います。
・侍従の中には、昭和天皇からならばともかく、今の天皇からは勲章はもらいたくないんだ、という人もいたくらいです。
・そんな中で陛下は、独自の天皇像を作らなければならないというところに立たされた。即位後のお言葉からは、その強い意志が読み取れます。
板垣恭介氏の著書『無頼記者』を読んで以来、皇室関係者には碌な人間がいないという気がしていましたが、今回で確信に変わりました。
「報道の自由」か、「表現の自由」なのか、彼らは、戦後の皇室周辺にいる「獅子身中の虫」でないのかと思えてきました。その虫のおかげで、「ねこ庭」の検討材料を得ているのですから複雑な気持になります。
高橋氏の意見を紹介したのは、今回の「お言葉」への美智子様の影響力を証明する部分があるからです。
・今上陛下が昭和天皇の偉大さを越えるため、「新しい天皇像」を、懸命に模索されたという事実が、その一つです。
・二つ目は、昭和天皇のように「二十四時間の天皇」でなく、「プライべートを大切する天皇」になられたことです。
・三つ目は、天皇として君臨するのでなく、国民と同位置にある天皇の演出を心掛けられたことです。お仕えする侍従たちへ、呼び捨てをやめられたことや沿道の国民への会釈がそれです。
・最も大きな変化は、災害地の現地訪問を必ず行われるようになり、美智子様を同伴され、古くからの侍従たちのご忠告にかかわらず、床に座り、被災者と語られるスタイルを作られたことです。
・こうしたご行為は、昭和天皇がなされなかったことであり、これにより今上陛下は、昭和天皇との違いを国民に示され、ご自分を完成された。
・隔てのないお姿は、「開かれた皇室」を広く伝えることとなり、多くの国民が親しみを感じる皇室改革でもあった。
「ねこ庭」と違い上皇陛下に好感を抱く氏ですから、陛下への説明は好意的になり、その分だけ「ねこ庭」に違和感が生じます。
「皇室」をガラス張りにし、中の方々を好き放題に座談のタネにして、「開かれた皇室」を伝えているというのですが、本当にそうなのでしょうか。
・父君 ( ちちぎみ ) を超えられようと、新しいスタイルと仕事を自らに課されたが、ご高齢となるにつれお身体の負担が大となり、今回の「お言葉」となっています。
どこまで行っても父は父であり、子は子で、何の不都合があるのでしょう。それとも天皇という特別のお立場にある方には、親を超える思考が要るのでしょうか。
学徒の勉強不足かも知れませんが、古代の歴史書を手にしましても、父君 ( ちちぎみ ) を超えられようと、新しい姿を探された天皇のお話を読んだことがありません。
この辺りになりますと、やはり氏の考えとの間に溝が生じます。
・被災地へのご訪問は、陛下の心の中で天皇固有の公務となっており、摂政にお任せになってはという、周囲のご提案にうなづかれない理由がここにあります。
・天皇固有の公務をご自分ができなくなったら、退位し次に任せるしかないと、陛下は考えられている。
陛下の考えられる「公務」というのが、「ねこ庭」が最も苦慮する部分です。憲法では「天皇の公務」と言わず、第七条に「天皇の国事行為」として明示されています。
憲法の定める「国事行為」の中に、陛下と美智子様が最も重要視されている「公務」、いわゆる「被災地へのご訪問」は含まれていません。
高橋氏も陛下の「被災地ご訪問」を天皇固有の「公務」として捉え、高齢化のために実行できなくなったら、次の天皇に任せるしかないというお考えに従っています。
ここから、平成28年8月8日の陛下の「おことば」発言となり、「譲位」の意向となり、退位して上皇となられました。
陛下の被災地へのご訪問で、当地の国民は元気づけられ、勇気も頂いたのですから、陛下のお考えに反対する気持はありません。
激動の時代を生きられ、多くの国民に敬愛された昭和天皇の後を継がれ、父君 ( ちちぎみ ) に負けない天皇になりたいと、美智子様と真剣にお考えになったことも『文藝春秋』の記事で知ることができました。
岩井氏が婉曲に説明していましたが、美智子様は「最強の副官」として、新しい形の天皇像、被災地へのご訪問、戦地への巡礼の旅、さらにもう一歩踏み込めば、今回の「お言葉」のリーク、皇太子ご夫妻への皇位の移譲など、全てに強い影響力を行使されている事実も分かりました。
ということで、前回までの「ねこ庭」の推測は次のように訂正いたします。
1. 平成28年8月8日の陛下の「おことば」は、陛下と美智子様で推敲されたお言葉だった
2. 風岡宮内庁長官の影響力は、ほとんどなかった。
新しい事実を知りましたところで、再び本来の検討課題へ戻ります。
4. 上皇陛下のNHKを通じた「お言葉」のこと
5. 秋篠宮様のご長女眞子さまのご結婚のこと