ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 28 ( インドネシア軍の内情 - 3 )

2022-03-08 19:28:17 | 徒然の記

 今回は154ページ、海賊の話です。氏が発生件数を教えてくれます。

  ・1989 ( 昭和64 ) 年 ・・    3件

  ・1990 ( 平成 2 ) 年   ・・  33件

  ・1991 ( 平成 3 ) 年   ・・200件

 興味深いのは、次の説明です。

 「証明はされていないものの、この海域で発生する海賊行為に、」「非番のインドネシアの海軍軍人が関与しているとの噂が、1992 ( 平成 4 ) 年 に伝えられたことがある。」

 「報復への恐怖や、地方警察の能力に対する不信から、」「報告されていないものを加えると、実際の発生件数は二倍は下らないだろうと、推測されている。」

 海賊の大半はマラッカ海峡とシンガポール海峡、シンガポールの南東にあるフイリピン海峡、さらにはタイとフィリピン近海でも起こっていました。1992年に、ロンドンの国際海事機構に報告された、世界での海賊行為は106件で、その内の73件が東南アジアでの発生だったそうです。

 氏の説明を、箇条書きで紹介します。

  ・ フィリピンの海賊は、船とその積荷の全体を奪う

  ・ タイの海賊は、積荷だけを奪う

  ・ マラッカ海峡とシンガポール海峡の海賊は、乗員の持ち物や金品を巻き上げる行為が大半である

  ・ 周辺各国の領海が錯綜し、追跡ができないため困難を極めている。

  ・ このため、周辺国との協力関係が要求される。

  ・ 英国専門誌の分析によると、迅速、確実、かつ正確な動きは、軍事訓練を受けた者にしかできないとのこと。

 日本との比較で言いますと、自衛隊員が非番だからと言って、日本の近海で海賊行為をするでしょうか。もうそろそろ自衛隊員を、モラルの高い日本の軍人として見直し、「人殺し」などという悪口をやめたらどうなのでしょう。

 海賊行為の取り締まりは、周辺各国との協力関係が功を奏し、減少していきましたが、今度はソマリア沖でさらに大掛かりな、別の集団による海賊行為が発生したということになります。ここで氏の著作に戻り、再びインドネシア軍についての説明を紹介します。

 「どこで、どのようなことが起こるわからず、」「これに対応するためには、優れた機動性を持つ指揮統制システムが必要である。」

 「そこで軍備の近代化計画は、空と海の戦略機動性の向上と、」「ある程度の、兵器の国産化に力が注がれている。」

 自衛隊が、国内の憲法九条信者の反対を恐れつつ、国際的な防衛体制を進めるため、私たちの知らない苦労をしているのだと、やっと分かりました。

 インドネシアもまた、安全保障の観点から、多数の国から兵器を調達しています。米国、イギリス、イスラエル、ノルウェー、フランス、韓国、ドイツ、オーストラリアなどです。しかも必ずライセンス契約を結び、自国での兵器製造を可能にしています。作った兵器は他国へ売り、外貨を稼ぐという計画です。東南アジアの国々だけがしているのでなく、世界の国々は同様のパターンで、自国の軍需産業を育てています。

 「非核三原則」「武器輸出禁止」「平和憲法の遵守」「専守防衛」と、日本が生真面目に頑張っていても、世界はお構いなしに「バランス・オブパワー」で動いています。他国が正しいとは言いませんが、このままでいけば日本は、力をつけた他国の餌食となるだけではないでしょうか。この辺りで江畑氏の意見に耳を傾け、日本の軌道を修正する必要を感じます。

 「インドネシアは、他のASEAN諸国に比べると、」「軍事力に関する透明度が、やや低い。」「これは周辺国との、信頼性醸成の面からはまずいことである。」

 「インドネシアの意図に懐疑的なオーストラリアは、パプア・ニューギニアへの軍事侵攻を、」「真剣に心配し、オーストラリア北部地域へ空軍力を配置転換しつつある。」

 国民の全てが、江畑氏と同様の軍事知識を持つ必要はありませんが、現在の日本のように「軍事否定」「平和外交」の一点張りで、国際情勢オンチになることが正しいのでしょうか。このシリーズの第一回目に、氏の言葉を紹介しましたが、著作を読むほどに、氏の意見の正しさが身に迫ります。

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 控えめな軍事評論家である氏は、「軍事否定」「平和外交」一点張りの日本に合わせ、自分の意見を抑えているのだと理解しました。

 「インドネシアが近い将来、この地域で非常に危険な存在となることは、あまり考えられないが、」「もし信頼醸成の努力を、並行して行わなければ、」「いざとなればその強力な軍事力を、インドネシアが行使するという不安を、」「周辺国に引き起こすことが、十分に考えられる。」

 氏の意見を日本に比較して考えますと、そのまま通用します。何をしても反対する中国や、韓国・北朝鮮の3国を除外しても、少なくとも東南アジア諸国間では、軍事情報を共有化し、信頼性の醸成に努める必要があります。むしろそれが、今後の日本の進むべき道ではないでしょうか。

 こうして考えますと、クアッドもその動きの一つですから、政府も防衛省も、世界の動きから外れた政治をしていないと分かり、安心しました。

 次回からは、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーと氏の説明が続きます。日本の国を愛する方は、「ねこ庭」へ足をお運びください。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 27 ( インドネシア軍の内情 - 2 )

2022-03-07 21:00:22 | 徒然の記

  ジャカルタ日本人学校の校長だった石井光信氏と、江畑氏の視点は違いますが、交差する部分もあります。それはのちに述べるとして、ここでは江畑氏の説明を優先します。

 「長年にわたって、インドネシアに厳然たる勢力を築いてきたスハルト・ファミリーにとって、」「後継者が誰になるのかが、大きな問題であろう。」「だがそれは、世界にとっても関心事である。」

 「この国が、石油をはじめとする豊富な天然資源を有しているからだけでなく、」「マラッカ、スンダ、ロンボクという、太平洋とインド洋を結ぶ、」「2大国際海峡を有しているからである。」

 「そのためもしインドネシアが、これらの国際海峡の安全航行に関する問題の処理を誤ったら、」「世界の海運国の軍事介入を招く、危険性がある。」

 軍事的な面からも、インドネシアが重要な位置にある国だと、そんな見方をしたことがありませんでした。インドネシアにとって日本はODA資金援助を含め、最大の支援国だと聞いています。独裁者の国に巨額の援助をする政府を、自民党らしい利権政治と冷ややかに眺めてきました。

 氏の説明を読み、政府も外務省も東南アジアの政治の要諦を抑え、国益のため動いている事実を知りました。軍事が関係すると、戦後の日本ではマスコミと学者と野党が騒ぎますから、政府は国民に説明をしないのではないか、と思います。余計な金をばらまいていると、中国への巨額のODA援助も苦々しく見ていますが、もしかすると、似たような深慮遠謀があるのかもしれません。しかし政府が説明しないのですから、自民党政府と外務省を誤解したままになります。

 「だが、そうした大規模国際紛争の発生を考える前に、」「インドネシアはマレーシアと共に、もっと小規模で限定的な問題に対処する必要が言われている。」「それが、海賊と密輸の取り締まりである。」

 南アフリカのソマリア沖で海賊が出没し、航行する船舶を襲撃すると言う事件は知っていましたが、東南アジアで頻発しているとは考えていませんでした。参考までに、平成21年5月の首相官邸ホームページにあった内容を、要約して紹介します。

  ・防衛省・自衛隊は、平成21年3月から護衛艦2隻をアデン湾へ派遣し、日本関係船舶の護衛を始めた。

  ・護衛艦は、5 月19日現在、18回の護衛を行い、61隻の船舶を護衛した。

  ・護衛艦による活動に加え、海上自衛隊の航空機による、上空からの監視活動の準備を進めている。

 官邸のホームページで説明しているのは、21世紀の事件ですが、江畑氏が語っているのは、20世紀の海賊の話です。東南アジアの方が、先に出没していたと言うのですから、驚かされます。いずれも日本に関係する重大な事件です。

 スペースがなくなりつつありますので、海賊と密輸の事件については次回といたします。日本との比較で言いますと、日本近海では、北朝鮮に中国・韓国が絡む密輸事件がありますが、海賊行為は聞いたことがありません。

 当たり前のことと思っていますが、もしかすると海上保安庁と自衛隊に、国民は感謝しなくてならないのかもしれません。政府とマスコミが報道しないのですから、致し方なしですが、やはり日本の現状は世界の常識からずれている気がします。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 26 ( インドネシア軍の内情 )

2022-03-07 12:51:22 | 徒然の記

 インドネシアについては、2年前に石井光信氏著の『ジャカルタ日本人学校の日々』(  平成7年刊 近代文藝社 )を読んでいますから、少しは知っています。

 江畑氏の著書が平成6年の出版ですから、ちょうど同じ頃のインドネシアです。

 「インドネシアには、ジャカルタ、バンドン、スラバヤ、メダンの4つの都市に日本人学校がありますが、ジャカルタの学校が一番大きく、リーダー的位置にあります。学校には初等、中等のクラスがあり、日本で言いますと、小学校、中学校にあたります。」

 「生徒たちは大型のスクールバスで送迎され、30路線で33台のバスが、913名の生徒を運んでいます。運営しているのは、PTAのバス委員会だそうです。」

 これがその時の書評の一部です。著者の石井氏は、ジャカルタの日本人学校の校長で、「日本人のテフロン化現象」という言葉を教えてくれました。親たちが、現地の子供と個人的に接触し、親しくなることを喜ばないため、せっかくインドネシアで暮らしながら、生徒たちがその国の人と隔離された日々を送っていると、嘆いていました。

 生徒たちはスクールバスで、家と学校を行き来するだけで、インドネシアという国は、窓の外を流れる風景でしかありません。現地の人々と接触しない生徒たちの状況を評して、氏は「テフロン化現象」と言いました。

 今回江畑氏が軍事評論家の目を通して、別のインドネシアを説明してくれますが、どんな発見があるのだろうと、期待と不安が混じります。

 「インドネシアも、急速な経済成長を謳歌している国の一つである。」「1986 ( 昭和61 ) 年以来、毎年6%以上のGDPの伸びを記録し、」「4年間で、製品輸出額は倍増した。」

 「シンガポールの沖合いに浮かぶ島で、経済共同開発事業をスタートさせ、」「シンガポールの半分という、労働力の安さを武器に、」「さらに、今後の経済発展を確かなものにしようとしている。」

 学校という現場から見たインドネシアと、軍事・経済面から眺めるインドネシアは、やはり別の姿をしていました。そしてどちらのインドネシアも、インドネシアであり、興味深い姿を見せてくれます。

 「ただ世界不況の波は、この多くの島からなる国にも確実に押し寄せ、」「1992 ( 平成4 ) 年前半から、外国の投資額が減少し始めた。」「これにはインドネシアの技術力不足と、常に不足する発電能力など、インフラの未整備も大きく影響している。」

 インドネシアが世界有数の産油国であることも、氏の説明で知りました。現在のままでは、やがて石油輸入国になると予測されるため、大急ぎで石油と天然ガスの調査開発を進めているのだそうです。

 従って周辺国との領海問題が深刻さを増し、対立が生じています。南シナ海の島々の名前をあげ、氏が詳しく説明していますが、「ねこ庭」を訪問される方々には、インドネシアと衝突している国の名前だけを紹介します。

 ベトナム、マレーシア、中国の3国で、たびたび生じる軍事衝突に関し、1981 ( 昭和56 ) 年3月ジュスフ国防相が、議会で次のように語ったと言います。

 「インドネシア国軍は南シナ海において、海上戦闘に直面する可能性を排除できない。」

 この時からインドネシアは、海軍と空軍兵力を重視した、近代化計画を進めています。氏の著書から、他国との比較でインドネシア軍の構成を紹介します。氏の解説によりますと、フィリピン軍とベトナム軍の装備は弱体化しているので、インドネシア軍が名実ともにASEANのトップではないのでしょうか。

  インドネシア軍    陸軍 21万5千人  海軍  4万4千人  空軍 1万2千人

  シンガポール軍    陸軍   4万5千人  海軍   5千人  空軍   6千人

  マレーシア軍     陸軍 10万5千人  海軍 1万5千人  空軍 1万2千人

  フィリピン軍     陸軍 7万2千人  海軍 2万3千人  空軍 1万5千人

  ベトナム軍      陸軍 110万人     海軍 3万6千人  空軍 2万人

 けれどもインドネシアも、フィリピンやベトナムと同様、国内の反政府勢力との治安問題を抱えています。

 「インドネシアで、陸軍が軍の中心であることは間違いないが、」「そしてなおこの軍は、国内治安任務を主体としている。」

 外国勢力から支援を受け、武装化した過激な反政府組織が社会の安定を妨げ、国民の暮らしを落ち着かせません。政治と宗教と民族の違いが、紛争の因になっているので、殺したり殺されたりした年月が重なると、簡単に和解できなくなります。

 それだけに私は、「アイヌ新法」を成立させた自民党政府の安易さに、疑問を持ちます。歴史的に見ても、先住民でない彼らを先住民と定義し、特別な保護措置を取ると言うのですから、運用の仕方一つで北海道内にアイヌ自治地区が生まれます。

 マレーシアやフィリピンのように、違った民族でも一つにまとまる制度的知恵があると言うのならまだしも、「差別された怒りがある」と言う人々を、腫れ物にでも触るように金銭で補償しようとしています。日本を、フィリピンやベトナム、インドネシアのような治安の悪い国にしてはいけないのですから、安倍内閣の時に成立した法律ですが、私は今でも疑問を抱いています。

 話が横道へ逸れましたので、氏の著書へ戻ります。

 「インドネシアの国内治安問題は、まだ存在しているが、」「基本的には、反政府勢力は弱体化している。」

 理由の一番はやはりソ連の崩壊で、支援を受けられなくなった共産ゲリラの力が弱まったことです。それでも、宗教と民族の違いからくる武装集団は残っています。もしかするとインドネシアは、マレーシアやシンガポールから、民族共生社会を作る知恵を学ばなければならない、のではないでしょうか。

 スペースがなくなりましたので、続きは次回といたします。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 25 ( シンガポール軍の内情 - 2 )

2022-03-06 17:05:33 | 徒然の記

 シンガポールは徴兵制で、総兵力が約5万5千人、他に即応性のある予備役がいて、緊急時の最大動員数は25万人になるそうです。単純計算すると、人口の一割が兵士になります。

 国防予算はGDPの6%、国家予算の34%にも達していますが、シンガポールの高い経済力がこれを可能にしています。日本との比較で考えますと、信じられない数字です。

 「最新式兵器を、必要なだけ購入するというわけにいかないが、」「東南アジア諸国内では、装備は極めて新式である。」

 軍の構成を比較しますと、フィリピンやベトナムに比べても、装備的に遜色のないことが分かります。

  シンガポール軍    陸軍   4万5千人  海軍   5千人  空軍   6千人

  マレーシア軍     陸軍 10万5千人  海軍 1万5千人  空軍 1万2千人

  フィリピン軍     陸軍 7万2千人  海軍 2万3千人  空軍 1万5千人

  ベトナム軍      陸軍 110万人     海軍 3万6千人  空軍 2万人

 シンガポールは、マレーシア同様多民族国家で比較すると下記のようになります。

  ・シンガポール・・ 人口の7割華人系、  2割弱マレー系、 1割弱インド系

  ・マレーシア ・・ 人口の6割マレー系、 3割華人系、   1割インド系

  公共メディア (テレビ・新聞等) は3系統あり、共生しながらもそれぞれが異なる共同体を形成しているそうで、こういうところはマレーシアに似ています。シンガポールは、賃金の安い外国人労働者を積極的に受け入れ、政府の発表では、2030年に外国籍人が、人口の過半数を占めると予測しているそうです。

 劣悪な環境で外国人労働者を酷使したため、インド人労働者の暴動が発生したと言いますから、理想の国とばかりは言えないようです。しかし国防意識という点では、見習うものがありそうなので、江畑氏の説明を紹介します。

 「国軍の力だけで国を守りきれないのは明らかなので、シンガポールの防衛戦略は、」「〈  毒を持った海老 〉をもって、外敵への抑止力とするというものである。」

 冷戦終結後に追加した防衛戦略で、米軍の力を引き入れるということでした。具体的には、米国の海軍と空軍に基地使用の便を与えるという軍事協力です。

 「これに拍車をかけたのが、フィリピンからの米軍撤退である。」「シンガポールは、第7艦隊の補給支援機能を、」「同国へ移すことに同意し、200名の要員と共に移動してきた。」

 「米国の軍需産業との間で、修理技術支援協定を結び、」「補助艦艇の修理だけでなく、戦闘艦艇の修理もできるようにし、米軍のパートナーとなる計画である。」

 なんでもないような話に聞こえますが、米国には有り難い軍事協力になっています。

 「シンガポールの修理機能は、米海軍のインド洋における作戦能力を、」「大きく高めるものとなろう。」「さらにここを前進基地、補給基地とすれば、米海軍の艦艇は、」「インド洋上に最大6週間に達する、長期展開が可能となる。」「香港やグァム、あるいは日本まで、わざわざ戻らなくて済むからである。」

 どこまでも抜け目のないシンガポールです。日本もそうなっているのかどうか、報道されないので分かりませんが、次の説明にも注目しました。

 「新型装備も国産化に努力を注ぎ、CIS社は、今や兵器メーカーとして、」「世界のトップテンにランクされるようにまでなっている。」

 「シンガポールの国防力増大に対する努力には、注目に値するものがある。」

 シンガポールにもマレーシアにも、共通する現実主義があります。両国はいずれも、広く諸外国との軍事協力を行うことで、国家安全保障を強化する方針を取っています。氏の説明の中から、武器調達の国名だけを拾い出しますと、下記の通りです。

 アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ、オーストラリア、

 ニュージランド、アルゼンチン、インド、イスラエル

 華人系、マレー系、インド系と、国際社会では仲の良い民族とは思えないのに、国としてはまとまって動いています。マレーシアのように、各共同体にスルタンがいるとも説明されていませんので、ここにも何か工夫がありそうです。

 民族が異なっていても、一つの共同体としてまとまっている国・・どんな秘密があるのでしょう。日本と比較すると、羨ましくなります。2月23日の千葉日報を見ますと、共同通信社の配信記事がありました。14面全部を使った、アイヌの特集記事です。

 「自然と共存  アイヌの誇り」「文化で差別  跳ね返す」「多彩な舞踊で、歴史伝える」

 このような見出しで、アイヌ人秋辺日出男氏の意見が紹介されています。

 「アイヌであることを理由に、中学生までいじめを受けた。」

「アイヌの文化や土地が、明治政府の同化政策で奪われ、」「祖先が貧困を余儀なくされてきた歴史も知った。」「自らの経験に歴史を重ねると、憤りが増した。」「差別を通してしか、アイヌを語れなくなっていた。」

 日本が過去の歴史を見直し、国として一つにまとまろうとしている時に、相変わらず共同通信社は、このような記事を全国の地方紙に配信し、日本の中に対立を生じさせようとしています。シンガポールやマレーシアでこのような報道をしていたら、国内がバラバラになり、そのうち崩壊するのではないでしょうか。

 差別を強調し、憎しみを煽るような記事を、なぜ日本のマスコミは発信するのでしょう。日本のためでなく、どこか他の国の利益のため記事を書いているのでしょうか。比較して江畑氏の著作を読むと、日本のおかしな現実が同時に見えてきます。

 今回でシンガポールを終わり、次はインドネシアです。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 24 ( シンガポール軍の内情 )

2022-03-05 16:39:18 | 徒然の記

 今日から139ページ、シンガポール軍に関する江畑氏の説明に入ります。

 けれどもやはり、ウクライナの情勢が書評を妨げます。NHKの報道だけでなく、多くの識者と言われる人々が、プーチン大統領を批判しています。中には狂気の独裁者、ナチス・ヒトラーと評する人物もいます。

 ロシアには核があると脅したり、原子力発電所を攻撃したり、とんでもない言動をする大統領ですから、黙っているわけにいきません。ただ私が日本のマスコミや評論家と違うところが、一点あります。

 「ウクライナに、最初に手を出したのは、EU諸国と米国ではなかったのか。」

 彼らがこの微妙な位置にあるウクライナに、NATO加盟を積極的に働きかけなければ、今日の騒動はありません。最初の一線を超えたのは、「バランスオブパワー」を常に考え、現実的政治をしてきたはずの米国とEUの政治家たちです。

 NATO加盟を働きかけたせいで、ロシアが懸命な反撃をしているのですから、彼らはウクライナのために、軍事行動をしてでも支援する責任があります。

 「ロシアには核がある」と言われて、腰砕けになるようなら、最初から手出しをしなければ良かったのです。日本ではマスコミだけでなく、政治家が首を揃え、欧米諸国のプーチン批判をそのまま鵜呑みにしているところに、疑問を感じています。

 客観的な目で見れば、プーチンのロシアも、米国とEUの政治家も、世界平和を破壊する張本人です。欧米の論調がそうだからと言い、一方的なロシア批判だけで済まそうとする日本の姿が残念でなりません。

 「ロシアには核がある」と脅されたら、「こちらにも核がある」と応じ、ウクライナへの軍事支援をすべきでした。これこそが、政治家にしかできない決断であり、覚悟です。当然一蓮托生の全面核戦争となり、人類の破滅への道につながります。

 しかしロシアが、それでもなお核攻撃を主張できるでしょうか。むしろプーチン大統領のロシアは、ウクライナ問題で最初から追い詰められているのでは無いかと、そんな気がしてなりません。

 私の意見に反対の方もおられると思いますが、ここまで述べたところで、氏の著作の139ページへ戻ります。

 「2020 ( 令和2 ) 年までに、シンガポールを世界の先進国の地位につかせると言う目標が、」「達成される可能性は高いと、見られている。」

 「特に2005 ( 平成17 ) 年に、全てのオフィスと住宅を、」「光ファイバー通信網で結ぶという国家計画は、世界に先駆けるものとして注目を集めている。」

 辛口の批評をする氏が、シンガポールを評価しています。しかし問題は、次の説明です。

 「もっともこれはシンガポールが、面積が632.6平方キロ、」「人口280万人弱のミニ国家であるからこそ、可能な話でもある。」

 淡路島と同じくらいの国土面積で、むしろ都市国家だとそのように思っていましたので、氏の説明にうなづきました。参考までに、世界で有名な小国と呼ばれる他の国について、調べてみました。

 ・シンガポール       面積  632.6 平方キロ   人口     280 万人

 ・トンガ王国        面積  748.5 平方キロ   人口      10.6 万人

 ・ブルネイ王国       面積  5,765 平方キロ   人口          43.7 万人

 ・バチカン市国       面積     0.44 平方キロ   人口        809 人

 ・サンマリノ共和国     面積     61.2 平方キロ   人口   3,394 万人

 ・モナコ公国        面積     2.02 平方キロ   人口  3,924 万人

 ・リヒテンシュタイン公国  面積   160.5 平方キロ   人口   3,814 万人

 参考になったのかどうか自信がありませんので、氏の著書に戻ります。

 「地域的小ささが、この国の弱点になっている。」「戦略的縦深性がなく、食料のほとんどを輸入に頼っている。」「それどころか水の供給も外国依存で、これがシンガポールの大きな弱点とされてきた。」

 「主たる供給源はマレーシアで、もし両国関係が悪化したら、」「水の供給を断たれるだけで、マレーシアに屈しなければならなかった。」

 隣り合った国というのは、兵器ばかりでなく、水や食料が同じ役目をするのだと、教えられます。水は良いとしても、食料自給率の低い日本は大丈夫なのでしょうか。

 「1992 ( 平成4 ) 年」シンガポールは、インドネシアとの間に、」「水資源供給の協定を結んだ。」「インドネシア領ビンタン島から海底パイプラインを使って、供給される。」

 協定の期限は100年間で、水資源開発はシンガポールの資金と技術で行われ、浄化された水の半分を、シンガポールが輸入するというのです。足元を見透かされたような協定で、国同士の関係が甘くないということを、ここでもまた教えられます。シンガポールが必要とする水は、一日およそ100万トンだそうです。

 こうしたシビアーな国々の関係を見ていますと、日本も中国や韓国に一方的に批判・攻撃されるのでなく、経済面から反撃すれば良いのでは無いでしょうか。スーパーや安売り店での商品は、中国・韓国製品で溢れていますが、食料品や雑貨など不買運動をすれば良いのです。

 国内品を使おうと政府が奨励すれば、多少高くでも多くの国民は我慢するはずです。政治家が黙っているから、知らない国民が多数を占めている訳で、マスコミと政府が本気になれば、中国・韓国商品の不買ができ、彼らにもダメージを与えます。ここの点を見ても、自民党内にいるリベラル議員を含め、いかに政治家が国益を考えていないのか、分かろうというものではないでしょうか。

 氏が教えてくれる、アジア諸国の切迫した状況を知りますと、日本の呑気さと安易さが浮き彫りになります。次回は、シンガポール軍に関する説明ですが、日本を大切にする方は、ぜひ「ねこ庭」へ足をお運びください。 

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 23 ( マレーシア軍の内情 - 2 )

2022-03-04 21:41:30 | 徒然の記

 せっかく江畑氏が詳細な説明をしてくれるのですから、、理解を進めるには、生徒も予備知識を持たなくてなりません。

 「マレーシアは人口の6割をマレー系、3割を華人系、1割をインド系が居住する国家である。」

 なんとなく知っていましたが、今回は日本との比較で考えることにしていますから、よく頭に入ります。

 「居住の形態は伝統的に、宗教、生活習慣、風習などを共有する民族同士が、集団で住む形式をとっていた経緯があり、また政治の支持基盤も民族毎であるという特色がある。」

 「共生社会」、「他民族社会」と、日本では取ってつけたように最近マスコミが宣伝していますが、マレーシアでは以前からそうだったのです。少数だから差別しているとか、多数の横暴だとか騒いで、社会が紛糾していないところを見ますと、その知恵と工夫を知りたくなる国の一つでした。

 次の二つの説明には、驚きました。

 ・政体は、立憲君主制である。

 ・小選挙区制を取るが、都市部と農村部の一票の格差は最大9倍に及び、農村部の票が強い状態となっている。

 ひとつずつ順番に驚こうと思います。まず氏の著書を読むまで、マレーシアが立憲君主国だと知りませんでした。日本の新聞やテレビが、マレーシアの国王について報道したという記憶がありません。

 「マレーシアの国家元首である国王 ( アゴン ) は、世襲でなく、」「13州の内の9州にいるスルタン ( 君主  )による、互選で選出され、」「任期5年である。」「世界でも珍しい、選挙君主制である。」「立派な王宮があり、王位にある間はここで執務を執る。」

 世界の広さを改めて知るとともに、マレーシアの社会安泰の秘密の一端を理解しました。最初の説明にありましたが、国民は宗教と生活習慣を同じくする民族が、集団となって暮らしているのです。ならば13州にはそれぞれの民族が集まって住み、君主が統治しているのではないでしょうか。

 江戸時代に各藩があり、大名が藩を治めていたことを思い出しました。江戸時代の幕府は徳川家の世襲でしたが、マレーシアでは有力な9州の君主が、交代で国王になるのです。これが、民族間の不公平や不満を出なくする仕組みとなっている気がします。

 君主も国民も、マレーシアという国で一つに結束しなければ、国際社会で生き延びられないと、心を一つにしているのではないでしょうか。1957 ( 昭和32 ) 年にイギリスから独立して以来65年間、この体制を保守り通したというのですから、大した国です。

 次の驚きは、選挙の一票の格差です。

 「都市部と農村部の一票の格差は最大9倍に及び、農村部の票が強い状態となっている。」

 日本のデータがありましたので、紹介します。

  ・平成29年の衆議院選挙時の、一票の格差 1.98倍

  ・ 令和元年の参議院選挙時の、一票の格差 3.00倍

  日本ではこの数字で、憲法に違反するかしないかで議論が沸騰しています。日本が普通なのだと思っていましたが、最大9倍でも問題にならないというのですから、驚きます。

 日本が普通なのか、マレーシアが普通なのか、どちらの国が進んでいるのかよく分かりませんが、積み重ねてきた歴史と文化の違いでしょうから、批判を控えます。反日左翼と保守勢力が国論を二分し、国の根っこをぐらつかせている日本と比較をすると、羨ましい気持ちになります。

 こういう国ですから、諸外国との軍事協力を行うことで、国家安全保障を強化する方針が取れます。兵器の購入を東西の双方から満遍なく行なっても、反対する野党がいません。他国との合同軍事演習も、熱心にやれます。

 予備知識を入れた上で、江畑氏の著作へ戻り、どのような国から武器購入をしているのか。その部分だけを、紹介します。

  ・通信衛星は米国のものを選び、打ち上げるロケットはフランス製。

  ・冷戦後の軍備近代化には、英国が支援を行い、首都にメンバーを派遣。

  ・2,270トンのフリーゲート艦をイギリスに発注、エンジンはドイツ製で27ノット

  ・主力戦闘機をロシアに18機、米国に8機購入決定。

  ・インドが艦載ヘリコプターの売り込みと訓練の提供を申し出。その7割が旧ソ連製

  ・インドはかなりの数のソ連製兵器を国産化しており、国産化率が高い。

  ・緊急展開部隊の計画に、当初オーストラリアの支援を得、後にイギリス、フランスの協力を仰ぐ。

  ・主力戦車はイギリス製、アルゼンチンからの申し出も、戦闘機とのバーターで受け入れ。

  ・対戦車火力はスエーデンから、野砲は米国に発注。

  ・まだ実現していないが、潜水艦保有計画のため、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダに海軍調査団を派遣。

 まだありますが、ここで紹介を止めます。息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に知ってもらいたいのは、マレーシアという国が、「軍国主義国家」、「侵略主義国家」と、呼ばれていない事実です。日本が国防のため同様のことを計画すれば、中国、韓国が、激しい批判をします。同時に国内の反日左翼勢力が、一緒になり反対運動を始めます。

 「軍備の充実」は、即「軍国主義」、「他国侵略」でないことを、ASEANの国々は知っています。「軍備の充実」は、他国の侵略を抑える国防手段でもあると、彼らは理解しています。「平和憲法」を守れと叫ぶ共産党以下の野党は、日本をどうしようとしているのでしょうか。

 「九条を守りさえすれば、他国からは侵略されない。」と、野党と自民党内のリベラル政治家が主張します。今回のプーチン大統領の行動を見ても、同じ言葉を言い続けられるのでしょうか。国民の中にいる善意の「お花畑」の人々が言うのなら、致し方なしですが、政治家が現実を忘れ夢ばかり語っていると、日本が崩壊します。

 同じことを繰り返しそうなので、マレーシアについての報告を終わりにします。次回は「シンガポール軍の内情」です。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 22 ( マレーシア軍の内情 )

2022-03-04 13:23:38 | 徒然の記

 アジア諸国について知る貴重な機会なので、なるべく省略せず、やはり江畑氏の著作を紹介しようと思います。今回はマレーシア軍についてです。

 本題に入る前に、軍の構成をフィリピン、ベトナム、日本と比較してみます。

  マレーシア軍    陸軍 10万5千人  海軍 1万5千人  空軍 1万2千人

  フィリピン軍    陸軍 7万2千人  海軍 2万3千人  空軍 1万5千人

  ベトナム軍   陸軍 110万人     海軍 3万6千人  空軍 2万人

  自    衛   隊   陸軍 13万8千人    海軍 4万3千人  空軍 4万3千人

 「マレーシアはシンガポールやタイと並んで、高い経済成長を続けてきた。」

 ということで、ベトナムやフイリピンと異なり、防衛費がかなり使えます。1993 ( 平成5 ) 年のフィリピンの国防予算は、8億4400万ドルしかありませんでしたが、1991 ( 平成3 ) 年に立てた、マレーシアの「防衛力5ヶ年計画」では、24億ドルが投じられます。

 このほかにハイテク通信施設技術に、4年間で102.5億ドルなど色々な計画が並行して進められています。マレーシアの特徴は、広く諸外国との軍事協力を行うことで、国家安全保障を強化する方針を取っています。兵器の購入も西側東側の双方から、満遍なく行なっていますし、他国との合同軍事演習にも熱心です。

 ただしマレーシアも、近隣諸国と問題を抱えており、氏の説明を箇条書きで紹介します。

 ・ASEAN諸国との合同演習は増加傾向にあるが、シンガポールとは避けている。

 ・両国成立の歴史的経緯と、民族、宗教、領土の問題が絡んでいる。

 ・マレーシアが抱える反政府組織・イスラム原理主義者を、タイが支援しているため、関係が悪化したままである。

 ・フイリピンとは、東沙諸島の領有県問題で、海軍同士の小競り合いがあり、関係が冷えている。

 それでもマレーシアはASEAN加盟国の一員として、これらの国々と連携し、一つのまとまりとして活動しています。大国の影響を受けながらも、地域の安定と平和のため努力しているところは、見習うべきものがあります。ここでもう一度、ASEAN各国の名前と人口を一欄で見てみましょう。( 人口は、令和2年現在です。 )

  1.   マレーシア   3,237万人                      7.  インドネシア         27,352万人

  2.  フィリピン    10,958                               8.  タイ                 6,980

  3.  ベトナム          9,734                              9.  シンガポール        569

  4.  ラオス      728                            10.  ブルネイ                   44

  5.  カンボジア       1,672                               11.  東チモール         132

  6.  ミャンマー      5,441  

 ASEANの中で人口が一億人を超える大国はインドネシアとフィリピンで、これに次ぐのが 9,700万人のベトナムです。江畑氏の説明で、フイリピンとベトナム軍の内情を知りますと、マレーシアの安定ぶりが分かります。

 1957 (  昭和32 ) 年にイギリスから独立し、「ルックイースト ( 日本を見習え ) 」と言ったマハティール首相が率いている国で、小さな半島国家であると、マレーシアについて知っていることと言えば、ほんの少ししかありませんでした。

 いわば私の認識は、日本のことを「中国大陸にの横に浮かぶ、小さな島国」と言う欧米人に似ていました。不愉快な気持ちになりましたが、自分もマレーシアについて、同じことをしていたことを教えられます。

 次回はもう少し、マレーシアについて勉強し、息子たちに報告したいと思います。 

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 21 ( フィリピン軍の内情 - 2 )

2022-03-03 13:46:49 | 徒然の記

 ウクライナから隣国のポーランドへ、難を避けて逃げる人々の様子が、テレビで報道されていました。親たちと一緒に逃げている子供たちは、三、四歳だったでしょうか。

 涙を浮かべ、泣き顔でした。こんな幼い子供たちが、プーチンと EUの紛争の犠牲になっていることに、胸が痛みます。「この子たちを救うために、自分のできることがあれば何でもしたい。」と、今朝方見たネットで、80代の女性の方が書いておられました。

 NHKの国会中継では、立憲民主党の議員が岸田総理に迫っていました。

 「日本も、ウクライナの難民を受け入れなくていいんですか。」「彼らに手を差し伸べないのですか。」

 しかし私は、立憲民主党の議員の意見には賛成しませんでした。人道的なことを言いながら、日本を崩壊させるこの政党には、信頼が置けません。共産党と手を組み、彼らは「共生社会」「多様性の社会」と言いながら、「外国人参政権付与」や「住民投票権付与」など、およそどこの国もしていないような制度を、日本に作ろうとしています。

 外国人を多数入国させ、地方を彼らに混乱させ、地方の政治を左傾化し、やがて国政を不安定にしようとする彼らですから、反日野党の言う「難民受け入れ」は、眉に唾して聞く必要があります。武蔵野市の左翼市長松下玲子氏が、住んでいる外国人なら誰でも住民投票に参加させると言い出し、「従民投票法改正案」を作りました。

 幸いにも議会の多数が反対し、法改正できませんでしたが、この事例が『昭和天皇拝謁記』のなかで、陛下が心配しておられた「蟻の一穴」です。一つの地方都市で成功すると、真似をする左傾の地方議員が次々と出てきます。全国の地方議会で「従民投票法」を改正すれば、外国人を扇動し地方政治に紛争の種が撒けます。

 本気で難民を支援したいのなら、日本への受け入れを言う前に、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアなどの周辺国へ、難民受け入れの資金援助を提案する方が理に叶う意見です。

 日本のように言葉の通じない遠い国で、宗教も生活習慣も違うところで受け入れるより、幼い子供も含めた難民の人々には、近隣の国への避難の方が何倍も安心できます。「平和憲法を守れ」と言うスローガンと同じで、彼らの意見は、美しいだけで中身がありません。

 本気でないから、できそうもない綺麗ごとを喋り、岸田政権を困らせています。相変わらず野党は現実論を提案せず、国会論戦を無意味なものにしています。だからテレビのスイッチを、切りました。

 本日も「フィリピン軍の内情」に入る前に、切迫した世界情勢に触れました。自民党も、本気で難民への支援を検討するのなら、口先野党に言われる前に、ウクライナの近隣諸国と交渉すれば良いのです。それをしないのなら、野党だけでなく自民党も頼りない政党ではないでしょうか。

 113ページですが、フィリピン軍の内情も切羽詰まっています。武器を買っても現金がないため、鯖の缶詰とバナナで支払いたいと交渉しています。イギリスとロシアとの交渉ですが、実現しなかったそうです。 

 本題に入る前に、軍の構成をベトナム、日本と比較してみます。

  フィリピン軍    陸軍 7万2千人  海軍 2万3千人  空軍 1万5千人

  ベトナム軍   陸軍 110万人     海軍 3万6千人  空軍 2万人

  自    衛   隊   陸軍 13万8千人    海軍 4万3千人  空軍 4万3千人

 こう言う経済状況のフィリピンなのに、世界の国は兵器の売り込みを断念していません。イギリスとロシアだけでなく、米国、フランス、イタリア、ドイツ、チェコなどの名前が上げられています。

 江畑氏は、陸海空軍別に購入兵器の名称、数量、性能、金額を詳しく説明していますが、私には概要で十分です。前回同様、要点のみを箇条書きにして紹介します。

 ・1993 ( 平成5 ) 年の国防予算は211億ペソで、国防予算に占める割合は、約7%である。

 ・ドル換算で、8億4400万ドルしかない。

 ・空軍の戦闘機は5機あるが、本書執筆時に確認したところ、飛べる状態にある機は不明である。

 ・事実上フィリピン空軍は、壊滅している。

 ・海軍は財政難から、当面は大型水上艦の購入は無理と考えられる。

 ・6隻のミサイル高速艇 ( 396トン ) を、スペインとオーストラリアに注文したが、実際には一隻ずつの購入で、残りはフィリピン国内で生産すると言うもの。

 ・代金の支払いは、政府間ローンと貿易の相殺で行われ、一番艇は1994 ( 平成6 ) 年に引き渡される予定である。

 ・今世紀末までに50億ドルを、国防近代化計画に投ずる予定であるが、この程度の予算でどこまで近代化ができるのか、大きな疑問がある。

 ・従来米国製兵器が主流であったが、米国との関係が変化し、他国製兵器が入り始めている。

 ・米国主流を止めたのは、リスク分散という優れた面があると当時に、「安ければ良い」という要素も存在する。

 経済力がないと、軍の近代化はできないという具体例として読みました。冷戦後は国内の治安より、空と海からの外敵への対応力が重視されると言いますが、フィリピンはいずれもできていません。

 これに政治家の腐敗が重なり、軍事予算が彼らの懐へ消えるというのですから、国民にとっては「泣き面に蜂」です。

 日本には、軍事予算を自分のものにするような政治家がいません。野党やマスコミの監視が厳しいからだと言いたい人もいるのでしょうが、モラルの高さは、ご先祖から引き継いだ国民性です。得意になるより、ご先祖さまに感謝したいと思います。

 まだマレーシア、シンガポール、インドネシアと続きますが、もう少し割愛して報告できないものかと、考えています。ウクライナ情勢の方が切実なニュースですから、過去のアジアに興味のない方は、スルーしてください。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 20 ( フィリピン軍の内情 )

2022-03-01 23:14:43 | 徒然の記

 昨日NHKの番組で、ロシアのウクライナ侵攻に関する識者の意見が紹介されました。女性の学者と、もう一人は橋下徹氏でした。

 「プーチン氏の意見は、感情論ですし、歴史的にみても客観性がなく、プーチン論でしかありません。」

 「自分だけの思い込みで、国家の指導者が務まるのかと危険なものを感じます。」

 正確ではありませんが、女性の学者の意見は概ねこのようなもので、感情的になったプーチン氏には、トップとしての正しい判断力がなくなっているというところに力点がありました。

 沖縄が独立したいというのなら、させれば良いと、橋下氏はこのような意見の持ち主なので、いまだに日本を大切にする人物か否か、疑問のままですが、昨日の意見には同意しました。

 「プーチン氏は、感情論で述べているのではないと思いますよ。」「かってのソ連の地図を、確認してください。」

 手回しの良いNHKなので、すぐに地図が表示されました。旧ソビエト連邦は衛星国だったポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアを、ヨーロッパとの間に置き、その内側にありました。当時のウクライナ共和国は、ロシア連邦共和国に次ぐ多くの核を配備していた、重要な国でした。

 「ウクライナは、元々はロシアですよ。」「ここにNATOの基地ができるというのですから、プーチン大統領が怒るのは当然でしょう。」

 「かってキューバに、ソ連が核ミサイル基地を作ろうとした時、アメリカの反応はどうでしたか。」「脇腹に短刀を突きつけられたというので、フルシチョフとケネディーの間で、核戦争の寸前まで行ったじゃありませんか。」

 「今回のプーチン氏の言動は、感情論でなく、こうした点から考えるのが正しいと思いますよ。」

 年を取り体力が衰え、正常な判断力を失っているという学者の意見にも、何か根拠があるのだとは思いますが、それをいうのならバイデン氏も同じです。老人特有の物忘れが酷くなり、いつまで大統領の職務が続けられるか不安もあると聞きます。

 ウクライナ侵攻に関しては、プーチン氏の感情論や健康問題より、橋下氏の意見に妥当性があると思いました。フィリピンのことを紹介するブログで、どうしてウクライナの話かと、疑問に思われる方もあると思います。

 切羽詰まった危機がある現在ですが、江畑氏の書評を続けます。軍事バランスの話には、過去も現在もありません。書評には、ウクライナ問題を解く鍵があると、これが言いたかったのです。

 少し横道へ逸れましたが、111ページの「フイリピン軍の内情」に戻ります。

 「ベトナム同様に経済的に苦しく、装備の旧式化に悩んでいるのが、フィリピンである。」

 最初から厳しい評価です。

 「米軍の存在は、それだけで十分な国家安全保障機能を果たし、」「フィリピンは対外的国防に、大きな予算配分をしなくて済んできた。」「本来なら、経済はもっと発展して良かったはずだが、そうならなかった。」「その原因として、この国の政治的欠陥、すなわち腐敗がある。」

 マルコス大統領とイメルダ夫人の浪費と公私混同については、以前ニュースで聞いたことがありますが、どうやらそれは事実の一部だったようです。

 「さらに共産ゲリラやイスラム教ゲリラなどの、反政府組織の存在で、」「国内の治安維持に、防衛努力の大半が取られ、」「対外的な防衛力整備まで、手が回らなかった。」

 ゲリラというのは、武器を持つ過激派集団を言いますから、フィリピンは考えていた以上に治安の悪い国でした。日本にも反日過激派がいますが、せいぜい鉄パイプにゲバ棒の殴り合いですから、比較になりません。

 日本の警察が凄いのか、日本人そのものが素晴らしいのか、反日左翼と言われる人間でも、簡単に武器や殺人に目を向けません。たまにそういうことがあると、大ニュースになりますが、フィリピンでは普通の出来事でニュースにもならないと聞きます。

 「米軍の撤収とともにフィリピン国防省が、対外的な防衛力整備の必要性を、」「痛切に感じ始めたのは事実である。」

 日本との比較で考えますと、米軍基地撤収後に、自衛隊が初めて対外防衛力の整備に、目覚めることになるのでしょうか。有難いことに防衛省は、戦後一貫して対外防衛を考え、「憲法の枠内」で整備の充実に力を入れてきました。何よりも日本は、国内が安定し、自衛隊が出動するような武力紛争がありません。言葉での喧嘩は見苦しいほどの激しさですが、フィリピンの過激派のように無闇に武器を手にしません。 

 書かれているのは、平成6年、28年前の話ですが、何年前であっても、日本の社会はフィリピンのような内戦がありません。当たり前のことと言われそうなので殊更強調しませんが、日本に生まれて良かったと思います。

 「フィリピンの経済は、旧アキノ政権時代に大きく変革され、」「外国からの投資と、為替経済がやりやすくなった。」「企業の民営化も進み、対外債務も減少し、」「油井の発見などが加わって、経済再建の明るい見通しとなっている。」

 しかし、日本をはじめとする先進国の経済不況が始まり、投資の拡大も期待ができなくなりました。フィリピンが安い労働力を活用しようとしても、インドやベトナム、中国という、もっと労働力の安い国と競争しなければならないと言います。

 国内の治安もまだ完全でなく、ゲリラに代わって、身代金を狙う誘拐組織が暗躍し始めたとのことです。28年前の話ですから、今はだいぶ変わっていると思いますが、事実はどうなのでしょう。

 「この不安定な国内情勢も、外国からの投資を鈍らせる原因になっているし、」「電力不足、停電の頻発、通信網の貧弱さがそれに拍車をかけている。」

 読むほどに、フィリピンの内情に驚かされますが、肝心の軍の話はさらに深刻です。スペースがいっぱいになりましたので、続きは次回とします。興味のある方だけ、ご訪問ください。

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