ジャカルタ日本人学校の校長だった石井光信氏と、江畑氏の視点は違いますが、交差する部分もあります。それはのちに述べるとして、ここでは江畑氏の説明を優先します。
「長年にわたって、インドネシアに厳然たる勢力を築いてきたスハルト・ファミリーにとって、」「後継者が誰になるのかが、大きな問題であろう。」「だがそれは、世界にとっても関心事である。」
「この国が、石油をはじめとする豊富な天然資源を有しているからだけでなく、」「マラッカ、スンダ、ロンボクという、太平洋とインド洋を結ぶ、」「2大国際海峡を有しているからである。」
「そのためもしインドネシアが、これらの国際海峡の安全航行に関する問題の処理を誤ったら、」「世界の海運国の軍事介入を招く、危険性がある。」
軍事的な面からも、インドネシアが重要な位置にある国だと、そんな見方をしたことがありませんでした。インドネシアにとって日本はODA資金援助を含め、最大の支援国だと聞いています。独裁者の国に巨額の援助をする政府を、自民党らしい利権政治と冷ややかに眺めてきました。
氏の説明を読み、政府も外務省も東南アジアの政治の要諦を抑え、国益のため動いている事実を知りました。軍事が関係すると、戦後の日本ではマスコミと学者と野党が騒ぎますから、政府は国民に説明をしないのではないか、と思います。余計な金をばらまいていると、中国への巨額のODA援助も苦々しく見ていますが、もしかすると、似たような深慮遠謀があるのかもしれません。しかし政府が説明しないのですから、自民党政府と外務省を誤解したままになります。
「だが、そうした大規模国際紛争の発生を考える前に、」「インドネシアはマレーシアと共に、もっと小規模で限定的な問題に対処する必要が言われている。」「それが、海賊と密輸の取り締まりである。」
南アフリカのソマリア沖で海賊が出没し、航行する船舶を襲撃すると言う事件は知っていましたが、東南アジアで頻発しているとは考えていませんでした。参考までに、平成21年5月の首相官邸ホームページにあった内容を、要約して紹介します。
・防衛省・自衛隊は、平成21年3月から護衛艦2隻をアデン湾へ派遣し、日本関係船舶の護衛を始めた。
・護衛艦は、5 月19日現在、18回の護衛を行い、61隻の船舶を護衛した。
・護衛艦による活動に加え、海上自衛隊の航空機による、上空からの監視活動の準備を進めている。
官邸のホームページで説明しているのは、21世紀の事件ですが、江畑氏が語っているのは、20世紀の海賊の話です。東南アジアの方が、先に出没していたと言うのですから、驚かされます。いずれも日本に関係する重大な事件です。
スペースがなくなりつつありますので、海賊と密輸の事件については次回といたします。日本との比較で言いますと、日本近海では、北朝鮮に中国・韓国が絡む密輸事件がありますが、海賊行為は聞いたことがありません。
当たり前のことと思っていますが、もしかすると海上保安庁と自衛隊に、国民は感謝しなくてならないのかもしれません。政府とマスコミが報道しないのですから、致し方なしですが、やはり日本の現状は世界の常識からずれている気がします。