「異次元空間」である日本を離れ、176ページ「ミャンマー軍」の内情へ戻ります。
国内の反政府ゲリラを撲滅するため、ミャマー政府は中国から多量の兵器を購入しました。江畑氏の説明を転記します。
戦闘機・瀋陽-6 24機 戦闘機・瀋陽-7 12機 ヘリコプター 30機
中型輸送機 5機 兵員輸送車 100両 戦車 26両
軽戦車 30両 国内2箇所に中国の支援で、兵器製造工場建設
「GDPが222億ドル、一人当たりの国民所得が530ドル ( 1991年・H3) という、」「ベトナムより貧しいミャンマーが、どうして軍備を急速に整えることができたのだろうか。」
その理由を氏は、次のように述べています。
「ミャンマー政府は、鉱山採掘権と森林伐採権を中国に無条件で与えることで、代金支払いに当てていると言われる。」
バングラディシュ政府の発表では、ミャンマー政府軍のイスラム教系住民への迫害で、同国へ難民となって流入した数が、10万人を超えていると言います。インド国境でもカチン族への攻勢が行われ、インド側への難民を生じさせました。
「こうしたミャンマー政府の態度は、国際的非難を引き起こし、」「同国は一層孤立化への道を進むことになったが、」「同時にまた、ミャンマー政府が国内での反政府活動を許すつもりはないという、」「断固たる方針を、国内と世界に示したものでもあった。」
氏の説明を26年も前の話と受け止めるか、たった26年前のことと感じるのかによって、異民族問題への理解が別のものになります。宗教、言語、風俗、習慣が異なる民族が対立し、殺傷事件が重なるとしたら、その和解にはどれほどの時間がかかるのか。
1000年以上も続いているイスラエルとパレスチナを見れば、26年の短かさが分かりますが、そんなことより、戦後76年が経過しても韓国・北朝鮮の日本敵視政策が変わらない事実を見れば、民族問題の厄介さが実感できます。
ミャンマーは他のアジア諸国と同様、現在も変わらない状況にあると考えるのが妥当でしょう。クーデターを起こし、アウンサンスーチー氏を軟禁し続けているビルマ軍政府は、親中政権です。ベトナムは反中・親ロ政権で、カンボジアは途中で親中のロン・ノル政権ができましたが、今は親米政府です。
これらの国々では、他国の支援を受けた反政府組織が常に紛争を起こし、社会を不安定化させています。その上でもう一度、政府公表の在日外国人の数字を見てみましょう。
中 国 74万5千人 26.4%
フィリピン 27万7千人 9.8%
ブラジル 20万6千人 7.3%
ネパール 9万7千人 3.4%
インドネシア 6万3千人 2.2%
台 湾 5万2千人 1.8%
タ イ 5万1千人 1.8%
安い労働力が得られるからといって、紛争の種を蒔く張本人の中国を筆頭として、異民族問題に揺れている国々から、これだけの人数を入れており、今後ますます増えます。推進の中心となっているのは、金儲けを優先させている経団連と、中小企業経営者たちです。
「移民法」の成立以来、外国労働者の永住条件が緩くなり、家族や親戚なども呼び寄せられるようになりました。全国各地の空き家になった団地や、安い公営の集合住宅が彼らの場所となり、近隣住民とのトラブルが時々ニュースになっています。今はトラブル程度で済んでいますが、外国人労働者の大規模なコミニティーがあちこちにできたら、こんなことではすみません。
江畑氏は、日本の民族問題に言及していませんが、こんなにも多くのページを費やし、アジア諸国の治安問題を説明しているところに、危機意識のない日本人への警鐘が隠されているのではないでしょうか。
次回は、ASEANについての氏の意見を紹介します。192ページです。