「多文化共生社会の実現」という言葉が、政府関係機関から発信され、マスコミが盛んに報道するようになったのは、いつからだったのか。
前回に続き、この点について述べます。先に紹介した政府広報の続きがあります。
「 2005 ( 平成17 ) 年6月に総務省は、〈多文化共生の推進に関する 研究会〉」を設置。」
説明が40年前の昭和55年から大きく飛び、平成17年になっています。そうなりますと、小泉内閣の時です。
「 国が、地方自治体の多文化共生への取り組みを積極的に支援し、」「外国人労働者の労働環境、外国人児童生徒教育、」「外国人登録制度等の、国の各制度の見直しを図ってきた。」
この頃よく聞いた言葉が、「少子高齢化社会」でした。「日本は働き手がいなくなるから、外国人を受け入れなくては経済が成り立たなくなる。」・・テレビと新聞が毎日のように報道し、有識者と言われる学者や評論家が、外国人の受け入れが必要だと説明していました。
次の文章は、JICA ( ジャイカ )の 広報だったと思います。
「一方、国際協力への理解の促進を目的とした市民参加事業、」「国際理解教育の分野などを中心に、 国内における事業は拡大している。」
「自治体や国際交流協会などからの期待も大きく、今後の事業の見直しの行方についても関心が高い。」
外国人受け入れの動きが、全国各地で始まっていることを伝えています。民族問題で苦しんでいる、東南アジア諸国の話はどこにも出てきません。なんとなく格調の高い、ジャイカの説明が続きます。
「人口の国際移動への関与という国際協調の側面からも、地域社会の持続可能な発展の側面からも、」「多文化共生社会の形成に関与する、組織の存在が求められている。」
「国際的な視野に立って事業を展開し、また過去に移住事業にも関与し、」「既に多くの人材を、国内の多文化共生分野に排出している事業体は、」「今後どのような方向に進むかにかかわらず、当該分野に与える影響が大きい。」
「 多文化共生への関心が高まるこの時期に、国内事業の見直しを迫られていることを踏まえ、」「ユニークな視点から、役割を果たしていくことを期待したい。」
関係する役人の作文だろうと思いますが、分かったような分からないような、それでいて気を煽られる不思議な文章です。あれよあれよという間に、法律が制定、改正されていったことを思い出します。
・外国人研修員制度 平成5年制定
平成14年改訂時 研修員受入れ実績 約23万人
平成15年改訂時 研修員受入れ実績 約27万人
平成28年改訂時 研修員受入れ実績 約75万人
・観光立国推進基本法 平成18年 観光客 1000万人目標
・移民法 ( 改正入管法 ) 平成30年 移民 1000万人目標
「日本を取り戻す」といった安倍総理が、在任期間中に、「日本を崩壊させる法律」を次々と成立させています。令和3年6月の出入国管理庁の広報には、次のような説明があります。
「令和3年6月末の在留外国人数は,282万3,565人で 、特別永住者数30万441人が含まれています。( 国別構成比は、次の通りです。)
フィリピン 27万7千人 9.8%
ブラジル 20万6千人 7.3%
ネパール 9万7千人 3.4%
インドネシア 6万3千人 2.2%
台 湾 5万2千人 1.8%
タ イ 5万1千人 1.8%
平成21年に60才の若さで亡くなった江畑氏は、こうした日本の動きをどのように眺めていたのでしょうか。次回は氏を偲びながら、入国管理庁のデータをもとに、考えてみたいと思います。