ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 35 ( 危機意識ゼロの日本 )

2022-03-19 21:24:59 | 徒然の記

 「多文化共生社会の実現」という言葉が、政府関係機関から発信され、マスコミが盛んに報道するようになったのは、いつからだったのか。

 前回に続き、この点について述べます。先に紹介した政府広報の続きがあります。

 「 2005 ( 平成17 ) 年6月に総務省は、〈多文化共生の推進に関する 研究会〉」を設置。」

 説明が40年前の昭和55年から大きく飛び、平成17年になっています。そうなりますと、小泉内閣の時です。

 「 国が、地方自治体の多文化共生への取り組みを積極的に支援し、」「外国人労働者の労働環境、外国人児童生徒教育、」「外国人登録制度等の、国の各制度の見直しを図ってきた。」

 この頃よく聞いた言葉が、「少子高齢化社会」でした。「日本は働き手がいなくなるから、外国人を受け入れなくては経済が成り立たなくなる。」・・テレビと新聞が毎日のように報道し、有識者と言われる学者や評論家が、外国人の受け入れが必要だと説明していました。

 次の文章は、JICA ( ジャイカ )の 広報だったと思います。

 「一方、国際協力への理解の促進を目的とした市民参加事業、」「国際理解教育の分野などを中心に、 国内における事業は拡大している。」

 「自治体や国際交流協会などからの期待も大きく、今後の事業の見直しの行方についても関心が高い。」

 外国人受け入れの動きが、全国各地で始まっていることを伝えています。民族問題で苦しんでいる、東南アジア諸国の話はどこにも出てきません。なんとなく格調の高い、ジャイカの説明が続きます。

 「人口の国際移動への関与という国際協調の側面からも、地域社会の持続可能な発展の側面からも、」「多文化共生社会の形成に関与する、組織の存在が求められている。」

 「国際的な視野に立って事業を展開し、また過去に移住事業にも関与し、」「既に多くの人材を、国内の多文化共生分野に排出している事業体は、」「今後どのような方向に進むかにかかわらず、当該分野に与える影響が大きい。」

 「 多文化共生への関心が高まるこの時期に、国内事業の見直しを迫られていることを踏まえ、」「ユニークな視点から、役割を果たしていくことを期待したい。」

 関係する役人の作文だろうと思いますが、分かったような分からないような、それでいて気を煽られる不思議な文章です。あれよあれよという間に、法律が制定、改正されていったことを思い出します。

  ・外国人研修員制度  平成5年制定

             平成14年改訂時 研修員受入れ実績 約23万人

             平成15年改訂時 研修員受入れ実績 約27万人

             平成28年改訂時 研修員受入れ実績 約75万人 

  ・観光立国推進基本法 平成18年    観光客 1000万人目標

  ・移民法 ( 改正入管法  ) 平成30年    移民 1000万人目標

 「日本を取り戻す」といった安倍総理が、在任期間中に、「日本を崩壊させる法律」を次々と成立させています。令和3年6月の出入国管理庁の広報には、次のような説明があります。

 「令和3年6月末の在留外国人数は,282万3,565人で 、特別永住者数30万441人が含まれています。(  国別構成比は、次の通りです。)

     中    国          74万5千人    26.4%
 
        ベトナム              45万人      15.9%   
 
        韓 国                  42万人      14.7%

        フィリピン       27万7千人      9.8%

        ブラジル           20万6千人      7.3%

        ネパール                9万7千人     3.4%

        インドネシア        6万3千人     2.2%

         台  湾            5万2千人     1.8%

         タ  イ            5万1千人     1.8%

 平成21年に60才の若さで亡くなった江畑氏は、こうした日本の動きをどのように眺めていたのでしょうか。次回は氏を偲びながら、入国管理庁のデータをもとに、考えてみたいと思います。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 34 ( 民族問題 )

2022-03-19 14:12:10 | 徒然の記

 ビルマに住む、少数民族ロヒンギャ族についての続きです。

 ロヒンギャ族全体は、およそ100万人だそうですが、現在周辺国に下記のように分散して住んでいます。ビルマに住む約20万人を合わせますと、およそ100万人になります。

  バングラディシュ 40万人

  インド         1万4千人

      タ イ      10万人
 
  マレーシア     4万人
 
    パキスタン    20万人
 
 ロヒンギャという言葉自体が、蔑称として使われているため、国際赤十字では「ロヒンギャ」という表現を使用しないとしているとのことです。どこかジプシーという言葉に似ています。イタリアに観光旅行をしたとき、現地のガイドが、ジプシーは油断のならない悪い奴だから近寄らないようにと、激しい言葉で注意しました。眉を顰め、嫌悪の表情で話すのを見て、民族問題のとげとげしさを感じました。

 おそらくロヒンギャの人々も、ミャンマーではそんな存在としてみられているのかもしれません。世界のあちこちに住む少数民族の人々は、過去に傑出した指導者がいなかったせいなのか、国を持たないが故の辛酸を舐め続けています。

 自衛のため集団で暮らし、共同体を作り周辺の他民族と融和せずに暮らしています。宗教と生活習慣が異なるのですから、言葉の違いもあり融和する前に対立が生じ、互いに嫌悪を募らせてしまいます。

 東南アジア諸国の実情を知らない私たち日本人は、異民族問題について深く考えていません。日本を崩壊させる「日本国憲法」を、「平和憲法」と有り難がっている人々が多い状況と似たものがあります。

 差別されている民族は可哀想だ、同じ人間だから仲良く暮らせばいいじゃないかと、多くの善意の日本人が考えます。

 「多文化共生社会の実現」という言葉が、政府関係機関から発信され、マスコミが盛んに報道するようになったのは、いつからだったのでしょうか。政府広報の一部だと思いますが、次のような記事を見つけました。

 「地方自治体では、1980 ( 昭和55 ) 年代後半から、」「『1.国際交流、 2.国際協力、3.多文化共生』を目標に掲げ、地域の国際化を推進。」

 昭和55年といえば、今から40年前の大平内閣の頃の話です。しかしマスコミが盛んに報道するようになったのは、平成時代になってからのような気がします。東南アジア諸国の困難な状況を予備知識として、次回はもう少し日本の民族問題について考えてみたいと思います。

 憂国の思いを持つ方々は、ぜひ次回も「ねこ庭」へお越しください。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 33 ( ミャンマー軍とロヒンギャ族 )

2022-03-18 22:52:11 | 徒然の記

 今回はミャンマー軍に関する、江畑氏の説明を紹介します。

 「ミャンマーとタイとの関係は、ベトナムとタイの関係より、もっと緊張状態にある。」「カレン族や反政府勢力を追って、ミャンマー軍がタイ領内に侵入し、」「タイ政府軍と衝突する事態が、頻発しているからである。」

 国内に反政府武装勢力を抱え内戦が頻発しているというのが、どうやら東南アジア諸国の特徴のようです。ラオス、タイ、カンボジア、フィリピンやインドネシアもそうでしたが、ミャンマーも同じです。

 これらの国々は、国内の治安問題に多くの軍事力を使いながら、同時に周辺国との紛争にも対処しているのですから、日本と比較しますと大変な国ばかりです。

 1948 (  昭和23 ) 年に独立したミャンマーは、一貫して独立国だったタイを除くと、東南アジア諸国の中で早い時期に自立した国です。一貫して独立国だったタイにしても、内実は腐敗した軍が政治の中心にいて、国民生活の発展を阻んでいました。「ビルマの竪琴」の小説や映画で、私たちに馴染みの深いミャンマーも氏の説明を読みますと、多難な国です。

 「独立以後今日に至るまで、共産ゲリラやカレン族、カチン族と言った反政府少数民族との、」「戦闘の連続である。」

 ビルマは日本の約1.8倍の面積を持っていますが、人口は5,141万人(2014年現在) しかいません。国境は南東にタイ、東にラオス、北東と北が中国、北西がインド、西はバングラディシュと接しています。

 人口の6割をビルマ族が占めていますが、カレン族、カチン族、カヤー族など100以上の少数民族が住む国です。

 令和3年の軍事クーデターで政権の座を追われるまで、アウンサンスーチー氏が実質的な大統領でした。敬虔な仏教徒と言われ、国民的人気の高い人物でしたが、在任中の少数民族ロヒンギャ族への対応で、欧米諸国から叩かれました。江畑氏は著書でロヒンギャ族を取り上げていませんが、日本のマスコミも批判的な報道をしていましたので、少し調べてみました。

 少数民族問題が、いかに複雑で解決困難なものであるのか、生きた実例になると思うからです。

 ロヒンギャ族はミャンマーのラカイン州に住む人々で、イスラム教を信じています。かってのユダヤ人と同様、自分の国を持たない流浪の民で、主に農業で生計を営んでいますが、商人としての交易活動も盛んだということです。

 しかし、ミャンマーでは「不法滞在者」と見なされているため、移動の自由が認められておらず、修学も、就職も厳しく制限されています。そのため農業や日雇い以外の仕事に就くことは困難となっています。宗教と生活習慣が違うため、ミャンマー人との揉め事が多く、結果として他の少数民族と同様過激な反政府活動をしています。

 ミャンマーに住んでいるロヒンギャ族は、約80万人と言われていましたが、アウンサンスーチー氏の政権時に、軍に迫害され60万人が周辺国へ逃れたそうです。欧米諸国の批判は、おそらくこの事件のことだろうと思います。
 
 アウンサンスーチー氏は軍の強権と戦い、庶民のための政治をするという人権派の印象が強かったため、ロヒンギャ族の国外放逐を黙認したことにより、日本においてもイメージダウンをしたのではないかと思っています。
 
 江畑氏がせっかく少数民族問題に触れていますので、少し調べてみました。日本との比較をすることが目的ですから、次回も「ねこ庭」へ足をお運びください。
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石原元東京都知事の歩み

2022-03-15 18:10:27 | 徒然の記

 2月1日のTBSニュースで、89歳で亡くなった石原慎太郎氏の追悼動画を見ました。16万9千人の人が見ていました。

「人から愛されて死にたいね」89歳で死去 石原慎太郎元都知事の歩み

 この大きな見出しにふさわしい内容でした。この人の過去の経歴を、今更繰り返すことはしませんが、言いたいことを言い、やりたいことをやった人生でないかと、敬意を表したい気持ちがあります。
 
 常にマスコミの話題を集め、何をするにもニュースの発信源になる人でした。皇室に関してどのような意見を持っていたのか、そこは知りませんが、「憲法改正」については、ほとんど意見が重なります。
 
 日本語になっていない、ひどい文章だと言う意見も同じですし、戦後の日本人を個人主義という名の「利己主義者」に育て上げ、社会への連帯意識を失くさせた元凶だ、という考えにも同意しています。
 
 海が荒れた時の避難場所として、尖閣の島に漁船の船だまりを作り、灯台も立てるべきという意見にも賛同しています。( 外務省と国交省が反対したと言います。)
 
 動画を見終わった気持ちは、「この石原氏ですら、日本の政治を変えられなかった。」もっと言えば、「石原氏でさえ、自民党を変えられなかった。」という厳しい現実への認識でした。
 
  最後は自民党に愛想をつかし、同志とともに新党を立ち上げ、国政復帰と政界刷新を目指していました。この時すでに80才でしたから、最後のご奉公でしたが、氏の最後の試みは花を開かせることなく散ってしまいました。
 
 作った政党は、「太陽の党」「日本維新の会」「次世代の党(日本のこころ)」などでしたが、政界の長い動きの中で見れば、線香花火のようなものでした。
 
 政党を作るのは簡単でも、維持し発展させるのは並大抵のことではないと、氏が教えてくれました。新党の仕事はちょっと考えてみるだけでも、時間と資金とが不可欠です。結党の精神と政策だけでなく、中心となる人物の強い精神と忍耐力が要ります。最初は少人数ですが、10人、100人、300人と増えても、結党の精神と政策が全員の心で燃え続けていなければなりません。
 
 集まって議論を深めるには、活動の拠点が要りますし、その場所を党の事務所と呼ぶのか、会議所と言うのか、借りるにしても買うにしても、タダでは手に入りません。活動範囲が広がれば、地域ごとに必要になります。
 
 最初は少人数ですから、個々人がボランティアで活動していても、多人数となれば、党の活動資金がまとまって要ります。
 
  こうしてみますと、石原氏には向かない仕事ばかりであるような気がします。思索し、発案しても、周りの人間を振り向かせ、賛同させ、同じ気持ちにさせる仕事は、短気な人間にはできません。言うまでもありませんが、世の中には偉い人もいるしバカな人もいます。何を言っても素直に聞かず、他人を疑る人間や、儲け話になるのならと、利益を追い求める人間もいます。
 
 記者会見のやりとりを見ていますと、質問する記者を馬鹿にしたり、言い返したりしています。テレビを見ている者には痛快だとしても、これではマスコミを敵に回すだけで、何も協力してもらえません。報道で取り上げられても、批判や攻撃の対象としてだけニュースにされるのでは、政党の活動が世間に広まりません。
 
 それでも氏は、TBSニュースの動画ではあまり酷評されず、話した言葉がそのまま伝えられていますから、マスコミに愛されていたのではないでしょうか。
 
 一人の政治家の生きた証として、特別番組が作られているのですから、やはり普通の人物ではありません。最後の最後までニュースバリューのある、ひとかどの政治家だったと言うことです。
 
 さてここまできて、ハタと考えます。自分は息子たちや、「ねこ庭」を訪問される方々に何が言いたいのか。
 
 「石原氏のような、すごい人物でも自民党が変えられなかった。」「政治も変えられなかった。」
 
 ならばこの自分が、千葉の片隅からブログで発信して、何か日本が変わるのだろうか。何か意味があるのだろうか・・・そんな疑問を持ち、いやいやそうではないと考え直した・・と言うことを伝えようとしています。
 
 「ねこ庭」のブログを訪れる方は多くても600~800人ですと言いましたが、それは読まれたブログの件数ですから、一人の方が3~4件読まれていることを考えますと、実際の人数は、一日せいぜい200~300人です。追悼動画の視聴者が16万9千人ですから、自分のブログと比較し、いささか気落ちしてしまいました。
 
 しかし日本には、私のように国を大切に思い、毎日ブログを発信している人たちが、千人も万人もいることを忘れていました。千人、万人の人が毎日努力すれば、そのうち10万人、100万人となるはずです。いわば石原氏も、その多数の国民の一人です。
 
 「大切な先輩の一人と、つまらない比較などせず、自分の分を尽くせば良いのだ。」
 
 書く必要もなかった気がいたしますが、これが私の結論です。
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『 日本が軍事大国になる日 』 - 32 ( ラオス軍の内情 )

2022-03-14 16:14:05 | 徒然の記

 「チャイナリスクの中心に位置しているのが〈日本学術会議〉である。」という、遠藤教授の言葉を、中国の「軍事戦略」の一つとして頭に残しながら、江畑氏の著作に戻ります。

 今回は172ページ、ラオス軍の説明です。しかしラオス軍についてはあまり述べることがないらしく、1ページで終わり、そのままミャンマー軍の解説になっています。

 ベトナム、タイ、カンボジア、そして中国に周囲を囲まれた海のないラオスには、軍事的な問題がないというのでなく、この国自体が、取り立てて説明するだけの影響力がないからのようです。

 「冷戦時代、ラオスには米国やフランスの支援を受けた反共勢力が結成されたが、」「結局1979 ( 昭和54 ) 年に、ベトナムの支援を受けたパテト・ラオが、」「社会主義政権を樹立するのを、妨げることができなかった。」

 ということは、現在ラオス軍はベトナム軍の影響下にあるということになります。

 「ただしベトナムは、ラオス国内の反共勢力を制圧することができず、」「いまだに山岳地帯で、散発的戦闘が続いている。」

 ラオスもタイやカンボジア、或いはフィリピンやインドネシアと同様に、国内に反政府武装勢力を抱えているということです。

 「1989 ( 昭和64 ) 年までは、ラオス内の二つの反政府グループに、」「タイ軍が、秘密裏に支援を行なっていたらしいが、」「タイとベトナムの関係が、改善の方向へ向かうと、」「タイ軍によるラオス内の反政府グルーブへの支援も、消滅していったようである。」

 ラオスの国内問題が、他国であるタイとベトナムの関係改善で好転するという説明です。軍事的に弱いラオスと、軍事強国タイ・ベトナムとの話は日本と無関係ではありません。

 世界の軍事大国であるアメリカと中国が仲良くしていれば、日本の政界と経済界は順風満帆です。経済の繁栄を謳歌し、国民は平和な生活を享受できます。しかし米中の対立が激化し、さらに今軍事大国のロシアまでが、ウクライナで騒ぎを起こしています。石油が高騰し、消費物価が上がると、給与が何年も据え置きになっている庶民には、やがてくるであろう厳しい暮らしが見えてきます。

 江畑氏の説明は、無関係な東南アジアのラオスの話だと、そんなことを言っておれません。軍事的に弱いラオスが、周囲の軍事強国に影響を受けている状況と、日本のどこが違うのでしょう。自分の国を守る軍隊のない国は、結局周囲の強国に翻弄されるだけです。

 「平和憲法」の理想は素晴らしいとしても、現実を見ない日本は他国に侵食されますよと、控えめな江畑氏が私たちに教えています。弱いラオスに、タイやベトナムが何をしているのか、氏が説明します。

  ・1992 ( 平成4 ) 年6月、タイ国境側にあるラオスの村二つが攻撃され、200名のゲリラ部隊が村を占拠した。

  ・ベトナム軍の支援を受けたラオス軍が、ゲリラ部隊を追い払った。

  ・しかし7月には、同じ地域にある村を、ラオス反政府グループが襲撃した。

  ・これに関しラオス政府は、「これら山賊どもを、外国政府が支援している。」と非難した。

  ・同年7月タイ政府は、自国内で活動しているラオス反政府勢力とみなされる者を、7名逮捕した。

  ・これはタイ政府が、ベトナム政府へ両国の関係改善を求めているシグナルと受け止められている。

 ラオス国内の反政府勢力の事件なのに、ラオスは蚊帳の外に置かれ、タイとベトナムが交渉しています。想像したくありませんが、尖閣で紛争が生じたら、日本は無視され、米国と中国が交渉するのでないかと、そんな図式が見えてきます。

 次の氏の説明も、他人事でなく読みました。

 「しかしベトナムは、5万人規模の軍隊をラオス国内に駐留させており、」「依然としてベトナムがラオスをけしかけ、タイの安全を脅かしていると、」「タイ政府は考えている。」

 タイもまた、弱い国に対しては強気に出ています。カンボジア国内で、無許可営業を堂々としていたことを、ラオス内でもやっていました。ベトナムとの関係改善後、次のように政策を変更しています。

  ・ラオスとの間に、国境問題を検討・解決を図る委員会を設置した。

  ・ラオス国境付近での、物資輸送業務の独占をやめた。

  ・ラオス側の開発に資金援助を始めた。

  ・ラオスから輸入している農産物の内16品目について、特恵関税の優遇措置を取った。

 そして氏は最後に、次のように述べています。

  「ラオスを挟んで、タイとベトナムが再び緊張状態になる可能性は、今後も否定できない。」

 だから今回も、息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々に報告します。

  「自分の国を守る軍隊を持つことが、他国の侵略を防止します。」「憲法を改正し軍を再建することが、日本を守ります。」「アメリカは、いつまでも日本を守ってくれません。」

 「ウクライナを見れば分かります。」「独裁国家の指導者が、核使用の脅しをかければ、他国は引き下がります。」「つまり核保有国の独裁者が、核の脅しを口にすれば、米国は日本を見捨てます。」

 次回は、ミャンマー軍についての説明です。

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青山繁晴氏の話 - 2 ( 日本学術会議の実態 )

2022-03-12 20:36:12 | 徒然の記

 今回は〈 1月28日の勉強会 〉での、遠藤誉筑波大学名誉教授の話をそのまま紹介します。 

  「トランプ大統領が、中国へのハイテク技術の流出を禁止しましたが、中国は困っていない。」

  「なぜなら中国は、ハイテク技術をどんどん日本からもらっているからだ。」「つまり日本が、丸ごと中国を支えている。」

 ここで、青山氏の質問が入ります。

 青山・・・「これまで日本が技術提供してきたので、中国は今後、日本なしで技術開発ができるようになっているのか。」

 遠藤・・・「中国は自力ではやれない。現時点では日本の技術が、何としても必要である。」

   「ファーウェイも、半分以上は日本の技術で、ドローンは、9割以上が日本の技術です。」「今の中国軍のハイテク兵器は、日本抜きではあり得ない。」

 遠藤教授は中国を研究している理工系の技術者ですから、意見には信憑性があります。実態がここまでになっているとは、多くの人が知らないと思います。

 別途調べた防衛研究所の報告書を読みますと、遠藤教授の説明が裏付けられます。参考のため、必要部分のみを紹介いたします。

 「人民解放軍が、情報化によるハイテク技術への依存を深めている中、核心技術の米国依存が大きな脆弱性となっている。」

 「中国政府が〈製造強国〉を目指すため、2015年 5月に公表した文書『中国製造 2025』において、」「重点産業の国産化率の向上を目指すとする背景には、こうした米国への技術依存状況への懸念があると考えられる。」

 つまりトランプ大統領は、中国軍の一番の弱点を攻めていたということになります。遠藤氏の意見は、この事実を踏まえた上で述べられている、ある意味恐ろしい説明でもあります。

 「中国は、半導体製品の7割以上の国産化を実現するため、日本の国会議員を説得し、」「工作活動を続け、日中貿易のさらなる拡大を目指し、」「これにより、日中貿易なしで日本の経済発展ができないようにする状況を、」「作ろうとしている。」「そしてこの計画は、完成しつつある。」

 遠藤氏の説明を聞き、背筋の凍る思いがしました。日本の経済界は中国の計画に乗って走り、何があっても撤退せず、設備投資を続け、尻込みしている政府の尻を叩いています。媚中派の二階氏や林外相などがいますし、中国批判を避けたがる公明党も政権内にいます。

 勉強会に出席している議員と政府関係者たちは、どんな思いで教授の話を聞いていたのでしょう。

 「2015 (  平成27 ) 年に、日本学術会議と中国科学技術協会が、『覚え書』を交わした。」「中国科学技術協会は中国軍の傘下にあるから、この『覚え書』は、」「中国軍と提携したのと同じことである。」

 「ロケット開発技術、画像処理技術などの日本の民間技術が、」「全て中国に、利用され尽くしている。」

 「日本以上に中国の〈軍民融合政策〉に貢献している国は、他にない。」「実態に対する無知が、大変な問題につながっている。」

 「中国のハイテク民間企業と、大学、研究所は、全て〈軍民融合政策〉の中にある。」「この大変な問題の中心的存在が、日本学術会議である。」

 「それなのに、日本の最大の貿易相手国が中国であるという矛盾が、そのままである。」「中国という国家が、日本を丸呑みしようとしているとこに気づいていない。」

 遠藤教授が、ここまで踏み込んだ意見を議員の勉強会で述べているとは、知りませんでした。三浦秘書が日本の技術流出を防止するには、法律の規制が必要だと言い、青山氏が答えています。

 「このため政府では、高市政調会長を中心に経済安全保障法の制定が検討されているのですが、」「検討の中では、中国の名前が一切出てきません。」「中国をしっかりと念頭に置き、ハイテク技術の流出防止に対する規制が必要です。」

 危機感を持つ氏が、制定作業に力を注ぐ決意を語っていました。しかしどうでしょう、この法制定のリーダーだった藤井敏彦氏が、突然内部告発によって更迭されました。3月10日の共同通信社の記事を転記しますが、ここには中国の影はなかったのでしょうか。単純には読み流せない記事になりそうです。

 「経済産業省は9日、内閣官房経済安全保障法制準備室長を事実上更迭された藤井敏彦氏(57)について、」「無届けの兼業や不適切な飲食、セクハラが確認されたとして、停職12カ月の懲戒処分にしたと発表した。」「藤井氏から辞職の申し出があり、了承した。」

 青山氏の動画を詳しく紹介した理由は、実は他にあります。

 この動画は確かに重大な問題提起ですが、「今頃こんなことを言っているのですか。」と、氏に問いかけたい私がいます。

 日本学術会議と、中国科学技術協会が結んだ『覚え書』の危険性については、令和2年の10月、つまり一年以上も前に、田中英道教授が自身の動画で語っています。この事実を知っていれば、青山氏の説明はもう少し違っていたと思います。

 田中氏の名前に触れないとしても、自分が初めて重大な問題提起をするというトーンは、薄まっていたのではないでしょうか。そうなりますと危機意識がないのは、青山氏も自民党の議員諸氏も同じではないのでしょうかと、それが言いたいのです。

 青山氏の動画の視聴者は約17万人で、田中氏の視聴者は7万人ですから、数に勝る青山氏は、もしかすると田中氏の動画を見ていないのかもしれません。まして「ねこ庭」のブログで、2年前にこの問題を取り上げていることを、氏が知らなくて当然です。「ねこ庭」のブログを訪れる方は多くても600~800人ですから、この点を述べているのではありません。

 同じ保守の人物の貴重な情報が共有されていない、という驚きを述べています。今回の勉強会で、自民党の議員諸氏も初めて危機感を持たれたというのなら、その方が問題ではないのでしょうか。

 「今頃こんなことを言っているのですか。」・・

 批判でなくこれからも頑張って欲しいから、無念の思いで問いかけております。

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青山繁晴氏の話 ( 日本学術会議について )

2022-03-12 16:24:43 | 徒然の記

 久しぶりに、青山繁晴氏の動画【ぼくらの国会・277回】を見ました。江畑氏の著作に劣らない、現在の日本の問題点を語っていますので、今回はこれを優先してご紹介することにしました。

 「日本が丸々中国を支えている。」・・これが、2月2日に公開された動画のタイトルでした。いつものように司会進行が三浦秘書です。
 
 「まず冒頭に言わなければならないのは、日本の産業界、学界、政界が全部、中国に奉仕する状態になっているということです。」
 
 「つまり現在の中国を、日本が丸々支えているということです。」
 「丸々ですか ?  」
 
 三浦秘書が驚いて聞き返していましたが、青山氏による自民党の勉強会の説明が始まります。
 
 「自民党の勉強会と言いますのは、議連や部会に外部講師を招き、議員と議論をするというもので、とても有意義な会です。」
 
 氏が紹介したのは、国防議員連盟が二回に渡って行った下記勉強会の内容です。(ここには政府側として、関係する省庁の役人が出席しています。)
 
     1.    1月21日開催の勉強会
   講師 兼原信克氏・・・同志社大学特別客員教授 元内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長
 
  2.   1月28日開催の勉強会
   講師 遠藤誉氏 ・・・筑波大学名誉教授 中国問題グローバル研究所所長
 
 最初に、 1月21日開催の勉強会での主要な発言を紹介します。
 
  〈 講師・兼原信克氏 〉
    ・敗戦後の日本でGHQが、左翼系の人々を解放した。
    ・この動きと戦ったのが、吉田首相だった。
    ・吉田氏が戦いに勝利したわけでなく、生き残った左翼の人々が牙城の一つにしたのが、「日本学術会議」である。
    ・「日本学術会議」は、民間と軍の技術交流をできないとしているが、中国では「軍民融合」をしている。
 
  〈 政府関係者 〉
    ・民間が研究した技術と大学が研究した技術が、日本の防衛には活かされず、中国軍に提供され利用されている。
    ・現在は、日本の新しい技術を防衛省の新装備に活用できない。
    ・活用するには、ベンチャー企業と防衛省の連携が必要なのだが、日本の現状ではできない。
 
  〈 防衛省関係者 〉
    ・研究以前に、大学との連携も極めて不十分です。
 
 青山氏が、兼原氏の言葉を補足説明していました。
 
 「日本学術会議全体が、GHQに解放された左翼の人々という意味でなく、ここを左翼の牙城として使っている人たちがいるということです。」
 
 ここまでは、さほど目新しい話でありませんが、次回の遠藤誉講師の勉強会の報告では、注目すべき事実が語られます。憂国の士の方々は、ぜひ「ねこ庭」へ足をお運びください。
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『 日本が軍事大国になる日 』 - 31 ( カンボジア軍の内情 -2 )

2022-03-11 17:14:34 | 徒然の記

 カンボジア軍の内情の、2回目です。氏の説明を紹介します。 

 「現在カンボジア海軍は、士官や技術者も失いつつあり、」「陸軍と違って海軍は、高度な技術を必要とするだけに、」「独立国としての最低の任務も遂行できなくなるのではないかと、心配されている。」「単にこれはカンボジアだけの問題でなく、東南アジア全体の問題でもある。」

 どうしてそうなるのかを氏が説明しますが、簡単な話です。各国ともに、国内に反政府勢力がいて紛争を起こすので、海軍や空軍の整備が必要と分かっていても、そこに回す余力がないのです。

 各国相互の利害関係については、複雑な経緯があるため、一度では頭に入りません。まずは、カンボジアを疲弊させた、過去13年間にわたる内戦の状況について、再整理します。当時カンボジア国内では、下記4つの勢力が戦闘を繰り広げていました。

  1. 北ベトナム軍とベトコンが、カンボジア国内に補給基地を持っていた。

  2. 米国と南ベトナム軍が、カンボジア国内の北ベトナム軍・ベトコンの補給基地を爆撃していた。

  3. 親中・反米のシアヌーク国王が、政権を握っていた。

  4. 親米のロン・ノル国防相がクーデターを起こし、シアヌーク国王を追放して政権についた。

 「ベトナム戦争」と一言で言われていますが、実際の戦場はベトナムだけでなく、カンボジアも含まれていました。紛糾した政治情勢と悲惨な社会事情は、他人事ではありません。上記1~4を見れば分かる通り、争っている政治勢力の背後には、ソ連、アメリカ、中国という大国がいます。

 日本との比較で考えますと、国内には親米のリベラル勢力がいて、反日・親中の政党があり、反日・親ソの政党もあり、自民党の中には保守、親米、親中、親ソの議員が混在しています。

 国会で罵り合っているうちは良いのですが、何かのきっかけで武力紛争になりますと、大国の介入が始まります。いったん外国勢力が国内で動き出すと、カンボジアのようにならないとも限りません。

 内紛を防止するのは、何と言ってもご先祖が残された歴史と伝統です。カンボジアのように内部崩壊をしないためには、国民の気持ちが一つにまとまっていることが一番です。東南アジアの国々は、どのようにして国民の気持ちをまとめていたのか、氏の説明を思い出してみます。

 国王のある国は国王を中心として、国王のない国は軍部を中心として、或いは「愛国心」の強い政治家を中心として、民意を束ねようと努力していました。反日・左翼の人々は反対しますが、日本の歴史と伝統を知っていれば、日本のとるべき道は二つです。

    1. 国民の敬愛の中心にある皇室の護持

      2. 国を守る軍隊を持つこと

 東京裁判史観から生まれた「日本国憲法」をそのままにしていては、ダメだということがここでも分かります。条文の中には、ろくに検討もしないで翻訳した拙速さが、あちこちにあります。日本人ならしないような言葉遣いや、表現があります。

  「平和を愛する諸国民の公正と信義信頼し、」

一つ例を挙げますと、この文章です。正しい日本語なら、次のようになります。

  「平和を愛する諸国民の公正と信義信頼し、」

 世界一素晴らしい憲法が、文法の基本を間違っているのですから、むしろ「世界一の恥」ではないのかと、そんな気がしてなりません。「我ら日本国民は、」などという自己主張を、公文書の中で乱用する習慣は日本にはなかったはずです。

 当時の連合国軍司令部がいかに強かったのか、敗戦後の日本人がどれほど萎縮していたのかを、如実に示す「日本国憲法」です。歴史的に貴重な、恥ずかしい文書として国立博物館に永久保存し、子々孫々に伝えるべきでしょう。

 話が横道へ外れたのでなく、カンボジアの混乱と内戦が他人事ではないということを述べています。171ページは大事なところなので、氏の説明を分解し、時系列で紹介します。

 ・1993( 平成5 )年12月、カンボジアを訪問したタイのプラソン外相が、ラナリット第一首相、フン・セン第二首相と会談した。

 ・タイ外相の訪問目的は、タイがポル・ポト派との関係を断つことを、カンボジア政府に公式に伝達することであった。

 ・タイとポル・ポト派の関係は、カンボジアがベトナムに侵攻された時から強化された。

 ・ベトナム共産主義がタイに浸透するのを恐れたためで、中国の支援を受けていたが反ベトナムだったポル・ポト派を、側面援助した。

 それだけでなくタイは、内紛で弱体化したカンボジアに、さらに追い討ちをかけました。ホテル業者、テレビ会社、砂利採取会社などが無許可で、カンボジア国内で堂々と営業を始めたのです。

 1993( 平成5 )年5月に、国連の監視下で新政権が成立した時、これら「無許可営業」のタイ企業に対する国民の反発が高まりました。カンボジア領海内で、タイ漁船の不法操業を取り締まっていた、カンボジアの係官が殺害される事件もありました。

 カンボジア新政府は、タイ資本の水上ホテルに立退きを命じ、他の無許可営業のタイ企業にも厳しい姿勢を見せ始め、両国の関係が冷却化の方向に進んでいました。タイのプラソン外相がカンボジアを訪れたのは、両国の関係改善のためでした。

 これに関する氏の意見は、次のようなものです。

 「もしタイが本当にポル・ポト派との関係を断絶するなら、」「すでに中国が、ポル・ポト派との関係を打ち切っているだけに、」「それは東南アジアの安定化を高める、好ましい方向に向かうことを意味するはずである。」

 現在のカンボジアがどうなっているのか、知りませんが、2月7日の千葉日報に、カンボジアの首相後継者・フン・マネット氏が来日する、という記事が掲載されていました。

 これからはもっと、東南アジアの国々のことを知ろうと思います。次回はラオスとミャンマーです。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 30 ( カンボジア軍の内情 )

2022-03-10 23:06:55 | 徒然の記

 今回は168ページ、カンボジア軍に関する江畑氏の意見の紹介です。東南アジア諸国の軍事状況を教えられ、日々進行するロシアのウクライナ攻撃のニュースを見ていますと、日本との比較を考えずにおれなくなります。

 「平和憲法」「平和外交」「軍隊の放棄」「専守防衛」「非核三原則厳守」「武器輸出禁止」という日本の現在を、東南アジア諸国はどう見ているのか。

 「世界に例のない、高い理想を掲げた素晴らしい日本だ。」「世界の国々は、日本を見習っていくべきだ。」

 そう言って外国の人々が称賛してくれていると、政治家も学者もマスコミも、ずっとそのように国民に語ってきました。

 「敵が攻めて来たら、どうやって守るの ?」

 不思議そうに質問してくる外国人には、

 「そうならないように、外交努力をするのです。」「真心と誠意は、必ず通じます。」

 そう言って説明し、得意になっていた若い日の自分がいます。江畑氏の著作を読み、ウクライナの戦争を目の当たりにしますと、独りよがりだった自分が分かります。

 東南アジア諸国は、何世紀にもわたり欧米の大国に武力で支配され、20世紀になり独立したかと思えば、周辺国に脅されたり、侵略されたり、支配されたりしています。日本国憲法の前文を、東南アジアの国民の誰が本気にするのでしょう。

 「日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を、深く自覚するのであって、」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、我らの安全と生存を保持しようと決意した。」

 東南アジアの政治家だけでなく、一般国民も、日本国憲法の文言を信じるはずかないと、確信します。こういう呑気なことを言っていたら、国ばかりか、彼らの家族も生きのびられません。

 「敵が攻めて来たら、どうやって守るの ?」という単純な質問は、日本人への不信感から発せられていたのでした。

 学生時代に、同じクラスだった韓国人の朴君が、冷ややかに言った言葉を思い出します。

 「自衛隊は軍隊じゃないの ? 」「戦車も大砲もあるし、軍艦もあるのに、軍隊でないとなぜ言い張るの。」

 それでも私は、自衛隊が軍隊ではないと、何を言われても否定しました。世界はこれから平和になり、その先頭を切っているのが日本で、世界は軍備全廃の過渡期にあると信じ、彼の意見に同意しませんでした。

 「国全体を、アメリカに守られてるじゃないか。」「日本は、自分で国を守っていないから、そんなことが言えるんだ。」

 当時の私は朝日新聞の定期購読者でしたから、平和主義・人道主義者でした。NHKの良識を信じ、彼への反論も高邁な精神論だったと思います。その過渡期は50年経ってもそのままで、ロシアや中国の侵略を見ていますと、100年経っても過渡期が終わらない世界が見えてきます。

 ソ連や中国だけでなく米国の国際金融資本家たちも、戦争での金儲けを狙い、騒ぎのタネをせっせと撒いています。

 今の自分なら、もう少し正面から彼と向き合い、まともな話ができただろうと思います。まさか朝日新聞やNHKが、反日・左翼のリーダーだったとは、思ってもいない自分でした。あれから50年以上経過していますが、朴君に言わせれば「日本の欺瞞」はそのままです。つまり、現実を無視した「日本国憲法」の空論を訂正していません。

 自衛隊を軍隊と呼ばない日本人は、彼らの目に、「嘘つき」に見えているのだと、気づく時が来ています。というより、とっくの昔に過ぎています。現在のままの日本人が何を語っても、国内外の過酷な戦争に直面しているアジアの人々には、通じないだろうと思います。

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 謙虚な軍事評論家・江畑氏の言葉を心に反芻しながら、168ページ、氏の著書に戻ります。

 「1993 ( 平成 5 ) 年 5月の選挙により、カンボジアに新しい政権が誕生した。」「新政権は7月に、フランスとの間で軍事協定を結び、」「軍の再建に、フランスの援助を仰ぐこととなった。」

 単なる好意で支援するのでないことが、氏の説明で分かります。

 「フランスが国際援助として、広く軍事面での教育・訓練を積極的に行なっているのは、」「周知のことだが、教育は軍幹部の価値観、思考方法をフランス寄りにするだけでなく、」「兵器、装備も、フランス製が採用される可能性が大きくなる。」

 「教育・訓練の協定は、カンボジアへのフランスの影響力を、」「今後長く、確固としたものにすることを意味する。」

 国際社会の公正と信義が、フランスのどこにあるのでしょう。カンボジアの新政権も、そうしたことは分かった上でのフランス接近です。

 「新生カンボジア軍の規模は、総兵力13万人程度になるが、」「パリ和平協定によれば、カンボジアはいかなる軍事同盟も結ばず、」「軍事的中立を守ることになっている。」

 「が、果たしてこれが守られるものかどうかは、次第に疑問視されるようになっている。」

 その理由として氏が挙げているのが、次の点です。

 ・シアヌーク国王は、北朝鮮と中国との結びつきが非常に強い。

 ・この両国が、カンボジア軍に強い影響力を及ぼすことになれば、隣国タイは再び、国境地帯の動向に大きな不安を抱くことになる。

 ・カンボジア軍は、フランスだけでなく、中国やロシア、インドネシア、或いはオーストラリアへも兵器の提供を求めているらしい。

 ・カンボジアは、タイやベトナムの密輸団や海賊に領海を侵犯されているが、カンボジアは対処していない。

 ・ベトナムやタイにとっては、カンボジアが密輸団と海賊に、逃げ場という聖域を提供していることになる。

 ・カンボジア政府が好んでしていることでなく、海軍、沿岸警備隊の壊滅で、取り締まりたくても取り締まれない状況だからである。

 ・過去13年間にわたる内戦の結果、沿岸防衛より、国内河川の監視作戦に重点が置かれている。 

 カンボシア軍と政府の窮状がまだ説明されていますが、スペースがなくなりましたので、続きは次回といたします。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 29 ( タイ軍の内情 )

2022-03-09 18:41:12 | 徒然の記

 167ページ、タイ軍に関する氏の説明を紹介します。

 「タイの国土は、51万4千平方キロで、ここに約 5千800万の人口がいる。」と言われてもピンときませんので、日本との比較をしてみます。

 「日本の国土は、37万8千平方キロで、ここに約 1億2千万の人口 」ですから、こうすればなんとなく分かります。

 「その戦略地理的位置は、インドシナ半島のみならず、」「東南アジア地域の中心にあるという、極めて重要なものである。」「このためか、タイはこの地域で唯一外国勢力の支配を受けない、」「独立国家を、奇跡的に維持してきた。」

 冷戦時代には、インドシナ半島での共産主義国と資本主義国との間の、バッファーゾーンとしての役割を果たしてきたと言います。それだけに国境での軍事衝突や、他国による侵入に数多く悩まされてきた国です。

 〈マレーシア軍の内情〉のところで、タイとの関係が良くない理由として、江畑氏が次のように説明していました。

 「マレーシアが抱える反政府組織・イスラム原理主義者を、タイが支援しているため、関係が悪化したままである。」

 氏の言葉を正確に言いますと、タイがマレーシアの反政府組織・イスラム原理主義者を支援しているのでなく、紛争に関わりたくないため、国内に逃げてくる彼らを放任していたということになるようです。この点を理解して、氏の説明を続けます。

 「タイの軍部は過去20年間にわたり、国境地域での防衛と、」「国内での権力闘争に、明け暮れてきた。」「その中心は25万2千人の兵力中、19万を占める陸軍である。」

 下記にタイ軍の構成を、アセアン諸国と比較します。人数だけをみますと、インドネシア軍やマレーシア軍と遜色がありませんが、氏の評価は高くありません。

  タ  イ  軍    陸軍 19万5千人  海軍  5万人        空軍 1万2千人

  インドネシア軍    陸軍 21万5千人  海軍  4万4千人  空軍 1万2千人

  シンガポール軍    陸軍   4万5千人  海軍   5千人  空軍   6千人

  マレーシア軍     陸軍 10万5千人  海軍 1万5千人  空軍 1万2千人

  フィリピン軍     陸軍 7万2千人  海軍 2万3千人  空軍 1万5千人

  ベトナム軍      陸軍 110万人     海軍 3万6千人  空軍 2万人

 「チャチャイ政権下での急速な経済発展は、いわゆる中間層の成長を促し、」「その彼らと、タイ政府を動かしてきた陸軍との軋轢が増大していった。」「軍部の強大な利権と、それに伴う贈収賄の腐敗体質は、」「兵器調達だけでなく、国のあらゆる分野に及んだ。」「10%の手数料を収めなければ、何も仕事が進まないという状況まで現出した。」

 フィリピン軍もそうでしたが、政府と一体になった軍が腐敗すると、国民生活の向上がなくなります。贈収賄は文化であると言ったのは、韓国の政治家でしたが、国民も一緒になりその文化に浸っている国が、他にもあるようです。

 日本との比較で言いますと、先日の千葉日報の記事では、経済安保法制準備室長の藤井敏彦氏が、タクシーチケットの利用方法がおかしかったという理由で、更迭されています。記者との関係にも不明瞭な点があったと言います。

 高級な店での飲食代をみてもらったとか、なんとなく予想がつきますが、それでもタイやフィリピンの国ぐるみの腐敗とは、比較にならない気がします。 

 江畑氏の説明を、箇条書きで紹介します。

  ・1991 ( 平成 3 ) 年 、多くの市民の支持を受け、腐敗したチャチャイ政権転覆のクーデターが発生した。

  ・1992 ( 平成 4 ) 年 、利権を貪ってきた軍部が成立した新政権と対立し、ついには市民との流血の衝突となった。

  ・軍部の強硬手段が裏目となり、民間暫定政権が設立し、軍部の幹部将校のパージを実行した。

  ・チュアン政権は、軍部に力を与えていた多くの法律を破棄し、タイの民主化に努力している。

 「軍部による政治支配の終わりが達成されない限り、タイの経済発展に限界があることはハッキリしている。」

 こう言って氏は、投資額成長率が低下している事実を示します。

  ・1990 ( 平成 2 ) 年   対前期比 23%

  ・1991 ( 平成 3 ) 年   対前期比 15%

  ・1992 ( 平成 4 ) 年   対前期比 3.5% に低下

 氏はこの原因をタイのインフラ整備の遅れと、政治腐敗による社会の不安定さにあると指摘します。

 「バンコクの交通事情一つをとってみても、急速な経済発展に比べて、」「あまりにインフラが欠如しており、成長率が維持できるのかという疑問がある。」「同時に軍部の賄賂腐敗体質が、本当に払拭されるかという疑問がある。」

 タイの兵器調達先は、世界11ヶ国に分散していますが、安全保障のためのリスク分散というより、賄賂一つでどのような兵器でも調達するという、軍部の体質が大きいと説明します。今後もその体質が改善できない理由を、次のように語ります。

 「タイは他の東南アジア諸国に比べると、なお多くの国境問題を抱えていて、」「いつ武力衝突が再発するか、わからない状況にある。」「これが軍部、特に陸軍の役割と発言力の強さを、今後も保証する要因となるだろう。」

 「タイはこの地域で唯一、外国勢力の支配を受けない独立国家を維持してきた。」と言われても、内情を知りますと見習うものがありません。

 国境線については、カンボジアとの間に803キロ、ラオスとの間に1750キロ、ミャンマーとの間には1800キロ、さらにマレーシアとの間には506キロがあります。領海宣言は12カイリですが、タイは200カイリの経済専管水域を主張し、関係国との領海問題も抱えています。

 氏の説明は、ここで終わりますが、日本と比較するまでもなく、前途多難な国です。次回はカンボジアになります。

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