せっかく江畑氏が詳細な説明をしてくれるのですから、、理解を進めるには、生徒も予備知識を持たなくてなりません。
「マレーシアは人口の6割をマレー系、3割を華人系、1割をインド系が居住する国家である。」
なんとなく知っていましたが、今回は日本との比較で考えることにしていますから、よく頭に入ります。
「居住の形態は伝統的に、宗教、生活習慣、風習などを共有する民族同士が、集団で住む形式をとっていた経緯があり、また政治の支持基盤も民族毎であるという特色がある。」
「共生社会」、「他民族社会」と、日本では取ってつけたように最近マスコミが宣伝していますが、マレーシアでは以前からそうだったのです。少数だから差別しているとか、多数の横暴だとか騒いで、社会が紛糾していないところを見ますと、その知恵と工夫を知りたくなる国の一つでした。
次の二つの説明には、驚きました。
・政体は、立憲君主制である。
・小選挙区制を取るが、都市部と農村部の一票の格差は最大9倍に及び、農村部の票が強い状態となっている。
ひとつずつ順番に驚こうと思います。まず氏の著書を読むまで、マレーシアが立憲君主国だと知りませんでした。日本の新聞やテレビが、マレーシアの国王について報道したという記憶がありません。
「マレーシアの国家元首である国王 ( アゴン ) は、世襲でなく、」「13州の内の9州にいるスルタン ( 君主 )による、互選で選出され、」「任期5年である。」「世界でも珍しい、選挙君主制である。」「立派な王宮があり、王位にある間はここで執務を執る。」
世界の広さを改めて知るとともに、マレーシアの社会安泰の秘密の一端を理解しました。最初の説明にありましたが、国民は宗教と生活習慣を同じくする民族が、集団となって暮らしているのです。ならば13州にはそれぞれの民族が集まって住み、君主が統治しているのではないでしょうか。
江戸時代に各藩があり、大名が藩を治めていたことを思い出しました。江戸時代の幕府は徳川家の世襲でしたが、マレーシアでは有力な9州の君主が、交代で国王になるのです。これが、民族間の不公平や不満を出なくする仕組みとなっている気がします。
君主も国民も、マレーシアという国で一つに結束しなければ、国際社会で生き延びられないと、心を一つにしているのではないでしょうか。1957 ( 昭和32 ) 年にイギリスから独立して以来65年間、この体制を保守り通したというのですから、大した国です。
次の驚きは、選挙の一票の格差です。
「都市部と農村部の一票の格差は最大9倍に及び、農村部の票が強い状態となっている。」
日本のデータがありましたので、紹介します。
・平成29年の衆議院選挙時の、一票の格差 1.98倍
・ 令和元年の参議院選挙時の、一票の格差 3.00倍
日本ではこの数字で、憲法に違反するかしないかで議論が沸騰しています。日本が普通なのだと思っていましたが、最大9倍でも問題にならないというのですから、驚きます。
日本が普通なのか、マレーシアが普通なのか、どちらの国が進んでいるのかよく分かりませんが、積み重ねてきた歴史と文化の違いでしょうから、批判を控えます。反日左翼と保守勢力が国論を二分し、国の根っこをぐらつかせている日本と比較をすると、羨ましい気持ちになります。
こういう国ですから、諸外国との軍事協力を行うことで、国家安全保障を強化する方針が取れます。兵器の購入を東西の双方から満遍なく行なっても、反対する野党がいません。他国との合同軍事演習も、熱心にやれます。
予備知識を入れた上で、江畑氏の著作へ戻り、どのような国から武器購入をしているのか。その部分だけを、紹介します。
・通信衛星は米国のものを選び、打ち上げるロケットはフランス製。
・冷戦後の軍備近代化には、英国が支援を行い、首都にメンバーを派遣。
・2,270トンのフリーゲート艦をイギリスに発注、エンジンはドイツ製で27ノット
・主力戦闘機をロシアに18機、米国に8機購入決定。
・インドが艦載ヘリコプターの売り込みと訓練の提供を申し出。その7割が旧ソ連製
・インドはかなりの数のソ連製兵器を国産化しており、国産化率が高い。
・緊急展開部隊の計画に、当初オーストラリアの支援を得、後にイギリス、フランスの協力を仰ぐ。
・主力戦車はイギリス製、アルゼンチンからの申し出も、戦闘機とのバーターで受け入れ。
・対戦車火力はスエーデンから、野砲は米国に発注。
・まだ実現していないが、潜水艦保有計画のため、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダに海軍調査団を派遣。
まだありますが、ここで紹介を止めます。息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に知ってもらいたいのは、マレーシアという国が、「軍国主義国家」、「侵略主義国家」と、呼ばれていない事実です。日本が国防のため同様のことを計画すれば、中国、韓国が、激しい批判をします。同時に国内の反日左翼勢力が、一緒になり反対運動を始めます。
「軍備の充実」は、即「軍国主義」、「他国侵略」でないことを、ASEANの国々は知っています。「軍備の充実」は、他国の侵略を抑える国防手段でもあると、彼らは理解しています。「平和憲法」を守れと叫ぶ共産党以下の野党は、日本をどうしようとしているのでしょうか。
「九条を守りさえすれば、他国からは侵略されない。」と、野党と自民党内のリベラル政治家が主張します。今回のプーチン大統領の行動を見ても、同じ言葉を言い続けられるのでしょうか。国民の中にいる善意の「お花畑」の人々が言うのなら、致し方なしですが、政治家が現実を忘れ夢ばかり語っていると、日本が崩壊します。
同じことを繰り返しそうなので、マレーシアについての報告を終わりにします。次回は「シンガポール軍の内情」です。