ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 23 ( マレーシア軍の内情 - 2 )

2022-03-04 21:41:30 | 徒然の記

 せっかく江畑氏が詳細な説明をしてくれるのですから、、理解を進めるには、生徒も予備知識を持たなくてなりません。

 「マレーシアは人口の6割をマレー系、3割を華人系、1割をインド系が居住する国家である。」

 なんとなく知っていましたが、今回は日本との比較で考えることにしていますから、よく頭に入ります。

 「居住の形態は伝統的に、宗教、生活習慣、風習などを共有する民族同士が、集団で住む形式をとっていた経緯があり、また政治の支持基盤も民族毎であるという特色がある。」

 「共生社会」、「他民族社会」と、日本では取ってつけたように最近マスコミが宣伝していますが、マレーシアでは以前からそうだったのです。少数だから差別しているとか、多数の横暴だとか騒いで、社会が紛糾していないところを見ますと、その知恵と工夫を知りたくなる国の一つでした。

 次の二つの説明には、驚きました。

 ・政体は、立憲君主制である。

 ・小選挙区制を取るが、都市部と農村部の一票の格差は最大9倍に及び、農村部の票が強い状態となっている。

 ひとつずつ順番に驚こうと思います。まず氏の著書を読むまで、マレーシアが立憲君主国だと知りませんでした。日本の新聞やテレビが、マレーシアの国王について報道したという記憶がありません。

 「マレーシアの国家元首である国王 ( アゴン ) は、世襲でなく、」「13州の内の9州にいるスルタン ( 君主  )による、互選で選出され、」「任期5年である。」「世界でも珍しい、選挙君主制である。」「立派な王宮があり、王位にある間はここで執務を執る。」

 世界の広さを改めて知るとともに、マレーシアの社会安泰の秘密の一端を理解しました。最初の説明にありましたが、国民は宗教と生活習慣を同じくする民族が、集団となって暮らしているのです。ならば13州にはそれぞれの民族が集まって住み、君主が統治しているのではないでしょうか。

 江戸時代に各藩があり、大名が藩を治めていたことを思い出しました。江戸時代の幕府は徳川家の世襲でしたが、マレーシアでは有力な9州の君主が、交代で国王になるのです。これが、民族間の不公平や不満を出なくする仕組みとなっている気がします。

 君主も国民も、マレーシアという国で一つに結束しなければ、国際社会で生き延びられないと、心を一つにしているのではないでしょうか。1957 ( 昭和32 ) 年にイギリスから独立して以来65年間、この体制を保守り通したというのですから、大した国です。

 次の驚きは、選挙の一票の格差です。

 「都市部と農村部の一票の格差は最大9倍に及び、農村部の票が強い状態となっている。」

 日本のデータがありましたので、紹介します。

  ・平成29年の衆議院選挙時の、一票の格差 1.98倍

  ・ 令和元年の参議院選挙時の、一票の格差 3.00倍

  日本ではこの数字で、憲法に違反するかしないかで議論が沸騰しています。日本が普通なのだと思っていましたが、最大9倍でも問題にならないというのですから、驚きます。

 日本が普通なのか、マレーシアが普通なのか、どちらの国が進んでいるのかよく分かりませんが、積み重ねてきた歴史と文化の違いでしょうから、批判を控えます。反日左翼と保守勢力が国論を二分し、国の根っこをぐらつかせている日本と比較をすると、羨ましい気持ちになります。

 こういう国ですから、諸外国との軍事協力を行うことで、国家安全保障を強化する方針が取れます。兵器の購入を東西の双方から満遍なく行なっても、反対する野党がいません。他国との合同軍事演習も、熱心にやれます。

 予備知識を入れた上で、江畑氏の著作へ戻り、どのような国から武器購入をしているのか。その部分だけを、紹介します。

  ・通信衛星は米国のものを選び、打ち上げるロケットはフランス製。

  ・冷戦後の軍備近代化には、英国が支援を行い、首都にメンバーを派遣。

  ・2,270トンのフリーゲート艦をイギリスに発注、エンジンはドイツ製で27ノット

  ・主力戦闘機をロシアに18機、米国に8機購入決定。

  ・インドが艦載ヘリコプターの売り込みと訓練の提供を申し出。その7割が旧ソ連製

  ・インドはかなりの数のソ連製兵器を国産化しており、国産化率が高い。

  ・緊急展開部隊の計画に、当初オーストラリアの支援を得、後にイギリス、フランスの協力を仰ぐ。

  ・主力戦車はイギリス製、アルゼンチンからの申し出も、戦闘機とのバーターで受け入れ。

  ・対戦車火力はスエーデンから、野砲は米国に発注。

  ・まだ実現していないが、潜水艦保有計画のため、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダに海軍調査団を派遣。

 まだありますが、ここで紹介を止めます。息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に知ってもらいたいのは、マレーシアという国が、「軍国主義国家」、「侵略主義国家」と、呼ばれていない事実です。日本が国防のため同様のことを計画すれば、中国、韓国が、激しい批判をします。同時に国内の反日左翼勢力が、一緒になり反対運動を始めます。

 「軍備の充実」は、即「軍国主義」、「他国侵略」でないことを、ASEANの国々は知っています。「軍備の充実」は、他国の侵略を抑える国防手段でもあると、彼らは理解しています。「平和憲法」を守れと叫ぶ共産党以下の野党は、日本をどうしようとしているのでしょうか。

 「九条を守りさえすれば、他国からは侵略されない。」と、野党と自民党内のリベラル政治家が主張します。今回のプーチン大統領の行動を見ても、同じ言葉を言い続けられるのでしょうか。国民の中にいる善意の「お花畑」の人々が言うのなら、致し方なしですが、政治家が現実を忘れ夢ばかり語っていると、日本が崩壊します。

 同じことを繰り返しそうなので、マレーシアについての報告を終わりにします。次回は「シンガポール軍の内情」です。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 22 ( マレーシア軍の内情 )

2022-03-04 13:23:38 | 徒然の記

 アジア諸国について知る貴重な機会なので、なるべく省略せず、やはり江畑氏の著作を紹介しようと思います。今回はマレーシア軍についてです。

 本題に入る前に、軍の構成をフィリピン、ベトナム、日本と比較してみます。

  マレーシア軍    陸軍 10万5千人  海軍 1万5千人  空軍 1万2千人

  フィリピン軍    陸軍 7万2千人  海軍 2万3千人  空軍 1万5千人

  ベトナム軍   陸軍 110万人     海軍 3万6千人  空軍 2万人

  自    衛   隊   陸軍 13万8千人    海軍 4万3千人  空軍 4万3千人

 「マレーシアはシンガポールやタイと並んで、高い経済成長を続けてきた。」

 ということで、ベトナムやフイリピンと異なり、防衛費がかなり使えます。1993 ( 平成5 ) 年のフィリピンの国防予算は、8億4400万ドルしかありませんでしたが、1991 ( 平成3 ) 年に立てた、マレーシアの「防衛力5ヶ年計画」では、24億ドルが投じられます。

 このほかにハイテク通信施設技術に、4年間で102.5億ドルなど色々な計画が並行して進められています。マレーシアの特徴は、広く諸外国との軍事協力を行うことで、国家安全保障を強化する方針を取っています。兵器の購入も西側東側の双方から、満遍なく行なっていますし、他国との合同軍事演習にも熱心です。

 ただしマレーシアも、近隣諸国と問題を抱えており、氏の説明を箇条書きで紹介します。

 ・ASEAN諸国との合同演習は増加傾向にあるが、シンガポールとは避けている。

 ・両国成立の歴史的経緯と、民族、宗教、領土の問題が絡んでいる。

 ・マレーシアが抱える反政府組織・イスラム原理主義者を、タイが支援しているため、関係が悪化したままである。

 ・フイリピンとは、東沙諸島の領有県問題で、海軍同士の小競り合いがあり、関係が冷えている。

 それでもマレーシアはASEAN加盟国の一員として、これらの国々と連携し、一つのまとまりとして活動しています。大国の影響を受けながらも、地域の安定と平和のため努力しているところは、見習うべきものがあります。ここでもう一度、ASEAN各国の名前と人口を一欄で見てみましょう。( 人口は、令和2年現在です。 )

  1.   マレーシア   3,237万人                      7.  インドネシア         27,352万人

  2.  フィリピン    10,958                               8.  タイ                 6,980

  3.  ベトナム          9,734                              9.  シンガポール        569

  4.  ラオス      728                            10.  ブルネイ                   44

  5.  カンボジア       1,672                               11.  東チモール         132

  6.  ミャンマー      5,441  

 ASEANの中で人口が一億人を超える大国はインドネシアとフィリピンで、これに次ぐのが 9,700万人のベトナムです。江畑氏の説明で、フイリピンとベトナム軍の内情を知りますと、マレーシアの安定ぶりが分かります。

 1957 (  昭和32 ) 年にイギリスから独立し、「ルックイースト ( 日本を見習え ) 」と言ったマハティール首相が率いている国で、小さな半島国家であると、マレーシアについて知っていることと言えば、ほんの少ししかありませんでした。

 いわば私の認識は、日本のことを「中国大陸にの横に浮かぶ、小さな島国」と言う欧米人に似ていました。不愉快な気持ちになりましたが、自分もマレーシアについて、同じことをしていたことを教えられます。

 次回はもう少し、マレーシアについて勉強し、息子たちに報告したいと思います。 

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