大きな原発事故は、福島の前に2つありました。アメリカのスリーマイル島、ロシアのチェルノブイリで、いずれも世界を震撼させた放射能災害です。福島がさらに注目を浴びたため、これを機に「脱原発」の世論が世界規模で高まりました。
電気が、人間にとって不可欠のエネルギーというのは事実ですから、「再生エネルギー」が拡大進展すれば話が変わるでしょうが、今は選択肢が3つしかありません。「化石燃料」、「原子力」、「再生エネルギー」、どれかを減らせば、どれかを増やさなくてなりません。
人間の生存に不可欠なものは、同時に国の安全保障にも不可欠です。「食料」「電気」「水」など、安全保障に直結する資源には、めざとい国際資本が手を伸ばし政治と結びつけます。
米国の大統領選挙時のマスコミ報道や、ウクライナ侵攻に関するロシアのニュースを見た経験からしますと、国家的規模でなされるプロパガンダは真偽不明です。誰が事実を伝えているのか、どの報道を信じれば良いのか判断がつきません。
電力問題に関する報道も、似ています。権威のある機関が学者の意見を紹介しますが、依って立つ場所が違うと正反対の説明を伝えます。
「武漢コロナ」騒動では、国際機関も当てにならないことを教えられました。中国の力に屈したWHOは、中国に忖度し事実を報道する邪魔をしました。中国の対応を称賛し、中国政府に見習えとまで言いました。
「電力」・「エネルギー」問題についても政治がからむと、誰の意見が正しいのか庶民には判断できないのだと、そんな気がしています。諦めているのでありませんから、本題へ戻り最後の項目を紹介します。
〈 日本の原発稼働状況 ( 令和4年 ) 〉 原子力規制委員会
運転中 4基
停止中 26基
廃 炉 24基 計 54基
これを見ますと、日本の原発の総基数は54です。しかし前回紹介した日本原子力産業会のデータでは、33基となっていました。
4 日本 3,308.3 ( 万KW ) 33 基
日本原子力産業会のデータは一年前のものですが、たった一年でこの違いが生じたのでしょうか。専門家の説明を読みますと、原子力船「もんじゅ」の発電機や、研究用の東海村の原発を加えたり除外したり、いろいろあるようです。
国家的な重要問題であるだけに、情報も微妙な取り方があり、私たち門外漢が判断する難しさを教えています。
おそらく私もそうなのでしょうが、原発肯定、反対の立場に立つ人間が、自分に都合の良いデータを使い、各自意見を述べているのではないでしょうか。経産省の荻生田氏を曖昧だと批判しましたが、「電力問題」については、現時点では世界中が曖昧です。
その良い例が、2月3日の産経新聞の報道でした。
「原発の必要性を激しく議論する、賛成派と反対派両方を動揺させるニュースが、欧州から飛び込んできた。」「EUが、原発を地球温暖化抑制につながる〝グリーン〟な投資先として認定する方針を、打ち出したのだ。」
「EU欧州委員会は2月2日、原発について、低炭素社会への移行を促進する手段としての役割があると指摘。環境に配慮した投資を促すため、グリーンな投資先を認定する「EU分類」のリストに、原発を追加する法案を示した。」
さすがの産経新聞も驚いたらしく、記者の感情をそのまま記事にしています。
「東京電力福島第1原発事故を経験した日本からすれば、原発とグリーンは到底結びつかない。」
「しかしそこには、自国の利益のためには環境問題ですら利用する、欧州のしたたかさがかいま見える。」「外交を苦手とする日本は、心してかかる必要がある。」
国益が絡むと、他国は簡単に豹変する・・要するにこういうことです。「脱炭素社会」の優先を決め、原発利用を元に戻すのですから、私は産経新聞と違った見方をします。「欧州はしたたか」なのでなく、「欧州は右往左往している」のです。
日本が混迷していて、なんの不思議もありません。
「原発肯定とか、反対とか、喧嘩でもするような議論をやめましょう。」「どちらが間違っているわけでもないのですから、現実を踏まえながら考えましょう。」
これが私の現時点での結論であり、反対する人々への提案でもあります。
次回はまた、江畑氏の著作に戻ります。