ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 30 ( カンボジア軍の内情 )

2022-03-10 23:06:55 | 徒然の記

 今回は168ページ、カンボジア軍に関する江畑氏の意見の紹介です。東南アジア諸国の軍事状況を教えられ、日々進行するロシアのウクライナ攻撃のニュースを見ていますと、日本との比較を考えずにおれなくなります。

 「平和憲法」「平和外交」「軍隊の放棄」「専守防衛」「非核三原則厳守」「武器輸出禁止」という日本の現在を、東南アジア諸国はどう見ているのか。

 「世界に例のない、高い理想を掲げた素晴らしい日本だ。」「世界の国々は、日本を見習っていくべきだ。」

 そう言って外国の人々が称賛してくれていると、政治家も学者もマスコミも、ずっとそのように国民に語ってきました。

 「敵が攻めて来たら、どうやって守るの ?」

 不思議そうに質問してくる外国人には、

 「そうならないように、外交努力をするのです。」「真心と誠意は、必ず通じます。」

 そう言って説明し、得意になっていた若い日の自分がいます。江畑氏の著作を読み、ウクライナの戦争を目の当たりにしますと、独りよがりだった自分が分かります。

 東南アジア諸国は、何世紀にもわたり欧米の大国に武力で支配され、20世紀になり独立したかと思えば、周辺国に脅されたり、侵略されたり、支配されたりしています。日本国憲法の前文を、東南アジアの国民の誰が本気にするのでしょう。

 「日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を、深く自覚するのであって、」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、我らの安全と生存を保持しようと決意した。」

 東南アジアの政治家だけでなく、一般国民も、日本国憲法の文言を信じるはずかないと、確信します。こういう呑気なことを言っていたら、国ばかりか、彼らの家族も生きのびられません。

 「敵が攻めて来たら、どうやって守るの ?」という単純な質問は、日本人への不信感から発せられていたのでした。

 学生時代に、同じクラスだった韓国人の朴君が、冷ややかに言った言葉を思い出します。

 「自衛隊は軍隊じゃないの ? 」「戦車も大砲もあるし、軍艦もあるのに、軍隊でないとなぜ言い張るの。」

 それでも私は、自衛隊が軍隊ではないと、何を言われても否定しました。世界はこれから平和になり、その先頭を切っているのが日本で、世界は軍備全廃の過渡期にあると信じ、彼の意見に同意しませんでした。

 「国全体を、アメリカに守られてるじゃないか。」「日本は、自分で国を守っていないから、そんなことが言えるんだ。」

 当時の私は朝日新聞の定期購読者でしたから、平和主義・人道主義者でした。NHKの良識を信じ、彼への反論も高邁な精神論だったと思います。その過渡期は50年経ってもそのままで、ロシアや中国の侵略を見ていますと、100年経っても過渡期が終わらない世界が見えてきます。

 ソ連や中国だけでなく米国の国際金融資本家たちも、戦争での金儲けを狙い、騒ぎのタネをせっせと撒いています。

 今の自分なら、もう少し正面から彼と向き合い、まともな話ができただろうと思います。まさか朝日新聞やNHKが、反日・左翼のリーダーだったとは、思ってもいない自分でした。あれから50年以上経過していますが、朴君に言わせれば「日本の欺瞞」はそのままです。つまり、現実を無視した「日本国憲法」の空論を訂正していません。

 自衛隊を軍隊と呼ばない日本人は、彼らの目に、「嘘つき」に見えているのだと、気づく時が来ています。というより、とっくの昔に過ぎています。現在のままの日本人が何を語っても、国内外の過酷な戦争に直面しているアジアの人々には、通じないだろうと思います。

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 謙虚な軍事評論家・江畑氏の言葉を心に反芻しながら、168ページ、氏の著書に戻ります。

 「1993 ( 平成 5 ) 年 5月の選挙により、カンボジアに新しい政権が誕生した。」「新政権は7月に、フランスとの間で軍事協定を結び、」「軍の再建に、フランスの援助を仰ぐこととなった。」

 単なる好意で支援するのでないことが、氏の説明で分かります。

 「フランスが国際援助として、広く軍事面での教育・訓練を積極的に行なっているのは、」「周知のことだが、教育は軍幹部の価値観、思考方法をフランス寄りにするだけでなく、」「兵器、装備も、フランス製が採用される可能性が大きくなる。」

 「教育・訓練の協定は、カンボジアへのフランスの影響力を、」「今後長く、確固としたものにすることを意味する。」

 国際社会の公正と信義が、フランスのどこにあるのでしょう。カンボジアの新政権も、そうしたことは分かった上でのフランス接近です。

 「新生カンボジア軍の規模は、総兵力13万人程度になるが、」「パリ和平協定によれば、カンボジアはいかなる軍事同盟も結ばず、」「軍事的中立を守ることになっている。」

 「が、果たしてこれが守られるものかどうかは、次第に疑問視されるようになっている。」

 その理由として氏が挙げているのが、次の点です。

 ・シアヌーク国王は、北朝鮮と中国との結びつきが非常に強い。

 ・この両国が、カンボジア軍に強い影響力を及ぼすことになれば、隣国タイは再び、国境地帯の動向に大きな不安を抱くことになる。

 ・カンボジア軍は、フランスだけでなく、中国やロシア、インドネシア、或いはオーストラリアへも兵器の提供を求めているらしい。

 ・カンボジアは、タイやベトナムの密輸団や海賊に領海を侵犯されているが、カンボジアは対処していない。

 ・ベトナムやタイにとっては、カンボジアが密輸団と海賊に、逃げ場という聖域を提供していることになる。

 ・カンボジア政府が好んでしていることでなく、海軍、沿岸警備隊の壊滅で、取り締まりたくても取り締まれない状況だからである。

 ・過去13年間にわたる内戦の結果、沿岸防衛より、国内河川の監視作戦に重点が置かれている。 

 カンボシア軍と政府の窮状がまだ説明されていますが、スペースがなくなりましたので、続きは次回といたします。

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