日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
このプラットフォーム上で思いついた企画を実行、仮説・検証を行う場。基本ロジック=整理・ソートすることで面白さが増大・拡大
 





映画「ル・アーヴルの靴みがき」で実は気になっていたのは、いつもにも増して、やけに飲酒シーンが多いことだった。

逆にこちら「キリマンジャロの雪」ではまるで違う感覚で、主人公の老夫婦(写真)が「酒」について感じること。
彼らは、夕方に庭でお酒をたしなみつつも、自問自答する。

「こうしている自分たちは、若い人達からはどう見られているんだろう、と。
実際はたくさんの悩み事をかかえている状況なのだけれど、そんな中でそれだけ素直で柔軟な思考を持つ夫婦ってあり得るのかなと思った(笑)

その「素直」な感覚がずっと継続し、心地よくなっていく不思議な映画だった。


冒頭後しばらくして、この老夫婦は、タイトルのキリマンジャロのあるアフリカ旅行を子供たちからプレゼントされる。
そして物語がさらに展開するのだが、アイロニックなことに、実はアフリカの環境の視点からみたら、犯罪都市のマルセイユさえ天国にみえるのだ。
そんな視点の変換が、ところどころに散りばめられている。

この点において、他にない感覚で、今作がとても新鮮なのだった!

幸せ・不幸の感覚の分かれ目は、それぞれが直前に感じとって持つに至った価値観で左右される。
近作でいうと、まるで「ファミリー・ツリー」のように、ハワイの生活は当たり前になってしまい、その価値を見失ってしまうのだ。



一方で、ある人物が言葉を吐き出すたびに、救いようもない現実が主人公たちにそして観客に焼き付けられる。
ギリギリのバランスから、説得力がさらに濃く発揮されているところに、監督の名人芸がこれまた発揮されていた。

公開は今週末から岩波ホールで。
この「濃さ」という点において、なかなかにお勧めの一本。



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