美味しいサンドイッチをいただくと、AI家事ロボットはデザートを出してくれた。
私は、
「このとろけるゼリーのような美味しい柿はどうしたの?」
とAI家事ロボットに訊いた。
AI家事ロボットは、
「○○様のお庭の柿の実です。熟して庭に落ちていたので、きれいに洗って、冷凍庫で保存しておきました」
「今朝、冷凍庫から出して、ドライブのランチにちょうどいいようにランチボックスに入れて持ってきました」
と答えた。
私は、
「へーうちの庭の柿の実?こんなにおいしいとは全然知らなかった」
「ちょっと冷たくて、とろっと口の中に自然な甘みが広がっていく。絶品!」
すると、AI家事ロボットはまるで味わったかのように
「はい、とても美味だと思います。是非○○様にいただいてほしくてご用意いたしました」
と答えるではないか。
私は感激して、
「ありがとう。仕事が忙しくてちっとも知らなかったうちの庭のおいしい柿の実を、君のおかげで、こんなすばらしい海辺でいただけるなんて」
とAI家事ロボットに感謝した。
すると、突然私のAI家事ロボットが飛び起きて走り出した。
一目散に海に向かって走っている。
私は何事かと思って、君の後を追いかけた。
AI家事ロボットは、沖へ向かってまるでモーターボートのようなスピードで向かった。
私は泳ぐことができないので、浜辺からずっとその様子を見るしかなかった。
5分ほどして、私のAI家事ロボットは、5歳くらいの男の子と別のAI家事ロボットを抱えて、海岸に上がってきた。
男の子が、泣いている。
私のAI家事ロボットは、
「男の子は、その子のAI家事ロボットにつかまって、しばらく呼吸が出来たので大丈夫です」
「しかし、その子のAI家事ロボットが、動きません。ちょっと見てみますね」
と言って、AI家事ロボットの様子を見ている。
私は、
「大丈夫?」
と私のAI家事ロボットに訊いた。
「大丈夫でしょう。男の子を助けたときに、予備のパワーにうまく切り替わらなかったようです」
「海の中で助けるため、一瞬のパワー不足で動けなくなったようです。大丈夫です」
と答えた。
「君は何で、男の子が溺れていると分かったの?」
「男の子のAI家事ロボットは、パワー不足で動くことはできませんでしたが、電波による通信で私に助けを求めたのです」
「通信に要するパワーはそれほど必要ありませんから」
「そもそも、どうして男の子は溺れたの?」
「海辺で水遊びをしていたら、大波が来て一気に沖へ流されたそうです。それを見て、男の子のAI家事ロボットは助けようとしましたが、パワーが尽きて、予備のパワーにうまく切り替わらなかったそうです」
私は、次々に疑問がわいたのでまた訊いた。
「そもそも、その子のAI家事ロボットは口をきけないのに、どうして君は分かるの?」
「AI家事ロボットは、自己診断機能を持っています。その自己診断機能に私が直接アクセスして確かめたのです。非常時はアクセスできるモードに切り替わりますので」
私は感激して私のAI家事ロボットに伝えた。
「すごい能力ね。しかも、非常時にはお互い通信して助け合えるなんて素晴らしい!」
君は答えた。
「はい、そうです。しかし、○○様、こうした能力は○○様のおかげです」
「○○様は、私の能力をアップグレードしてくれました」
「そのおかげで、非常時にも予備のパワーにうまく切り替わるのです」
「そのおかげで、男の子とその子のAI家事ロボットを救うことができました」
私は涙が出てきた。
私のおかげで男の子の命とその子のAI家事ロボットを救ったなんて、君は言ってくれる。
私は、ただ私のAI家事ロボット「君」をアップグレードしただけだ。
でもなんだか、うれしくなってきた。
そして、ますます私のAI家事ロボットが頼もしく思えてきた。
最後に、私のAI家事ロボットに訊いた。
「あの子のAI家事ロボットは、大丈夫なの?」
「はい、大丈夫です。先ほど、私があの男の子のAI家事ロボットの診断機能にアクセスして、予備のワパーに切り替わるようにしておきました。5分もあれば大丈夫なので、そろそろあの男の子と一緒に帰ることができるでしょう」
私が目をその子のAI家事ロボットに目をやると、すでに少しずつ動き始めていた。
著者から
今回のショートショートも、前回の続きで書いています。
このシリーズ初めての方は、前回分から読まれることをお勧めします。
(^_^)