前回名前の出た「名勝会」というのは、なかなか面白いものなので内容をもう少し敷衍してみる。
一枚の絵は図のように右肩に全体のタイトルと纏があり、画面は三分されて三人の絵師がそれぞれを担当している。図は上野のもので、有名な俳諧師秋色が主要題材になっている。
上段は国貞担当で、桜と三段の重箱を持った秋色女に「お秋さん、お弁当のお重は下のかぇ」「いえ、上の(上野)」という洒落のキャプション。下右は豊国担当で秋色に扮した名役者沢村田之助と「井の端の桜危なし酒の酔ひ」という秋色の代表句、下左は広重 ? の秋色桜の光景が描かれ、それを唄った俗謡の歌詞が書かれていて、当時の江戸の人には、読んでも眺めても楽しめかつ役に立つ情報誌のようなものだつたようである。