上は豊国・広重・国芳の合作「小倉擬(もどき)百人一首」、下は二代目豊国の「百人一首絵抄」という作品だが、これらも「源氏絵」と同じように、百人一首の歌の内容そのものを絵画で描いたものではなく、それから連想される事柄などを描いている。
例えば小倉擬では、「足ぴきの山鳥」の歌として、加賀千代女(国芳)が描かれている。「ながながし夜を独りかも寝む」から「起きてみつ寝てみつ蚊帳の広さかな」というわけだろう。それもいきなり蚊帳ではなく、蚊やりの煙で蚊帳を暗示するという連想の面白さを楽しんだのだと思う。
絵抄の方になると、背景に源氏香のマークをあしらい、そこからさらに須磨→行平→松風・鈴虫となってもっと絵を中心とした自由なものになっているようである。