日本で雙六・双六といった場合、二つの違ったゲーム、即ち「盤雙六」と「絵(道中)双六」を意味し、現代では後者の絵すごろくをいうが、かつては前者の盤すごろくがふつうであった。
盤雙六は「バックギャモン」という西欧のゲームの古い形で、富裕の家庭などの女性に好まれたようである。
不詳 鳥居清倍 鳥居清広



歌川豊国 喜多川歌麿


歌川豊国 鈴木春信


揚州周延 二点


水野年方

富岡英泉

◎ 下は絵双六
落合芳幾 歌川小国政



◎ 運命の女神といってもいろいろあるということで簡単に整理しておく。
まずフォルトゥナというローマ神話の女神が一般的に有名だが、同じ女神がギリシャではテュケという名で呼ばれ、ヴィーナスとアフロディテ、ダイアナとアルテミスと同じようなものだから、同一の画像がどちらかの名前であったり、二つの名前が併記されたりする。
テュケにはネメシスという姉がいて、テュケの与える運命の調整など当たる。ただ作品は多くない。
ギリシャには別にクロト・ラケシス・アトロポスの三女神からなるモイライという運命を司る神がいる。
フォルトゥナ テュケ ネメシス
モイライの絵は三人の連続した役割を描くので単独のものは数少ない。
クロト ラケシス アトロポス
◎ ところで昨日提起した下の絵のように「モイライは姉妹のはずなのにアトロポスだけが老婆とされる不自然さ」について私なりの解釈を述べたい。
まずモイライ三姉妹の母はテミスという「掟、法、必然」の女神であり、ローマ神話のユーティスティアと対応し、下の絵のように剣と秤を手にした姿で描かれる。この姿は後の「正義・公正」のジャスティスと同一である。このテミスを二人の妹テュケとネメシスが助手として助けていたのである。つまり末の妹テュケがばら撒く運をネメシスがフォローしテミスが決定づけるのである。これはモイライと同じパターンといえる。
最終決定者はどちらも最年長の姉にして母のテミスと長女アトロポスのはずなのだが、モイライの場合の姉アトロポスが母テミスと錯綜、混同されたのではないか。母と二人の娘として運命を司る三女神としてなら絵の不自然さはないことになろう。
ユーティスティア テミス テミス
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