郵便局へ出かけた帰り。
と言ってもいつものゴミ出し道であるが。
収穫を終えたのか、色づいた梅の実が道路に落ちていた。
熟した梅の香りほど高貴で誘惑に満ちた香りを私は知らない。
杏も、桃の実も、良い香りだが、熟した梅の香りには、
ちょっと尖ったものがあってほのかな主張がある。
可愛いだけのアイドルではないのよと言いたげだ。
若い頃、この匂いを嗅いでいるうちに、どうしても口にしたくなって何度かかじりついたことがある。
そして即座に現実の壁に跳ね返される。 固い。舌に来る刺激。香りのみじんも味覚には感じない。
後先きを考えずに目の前の物に飛びついてしまう誘惑。 恋愛小説のテーマにもなってしまいそう。
そんな思いを、若い頃したかな。 熟し梅の香りはそんなことまで思い出させる。