日経が、『北海道、関東の東日本の送電線、5割超が空き不足 再生エネ普及に壁』と報じていた。新たな再生エネルギーを窮しきれないと言う。電力会社にすれば、既存の化石燃料による発電を再生エネルギーを利用した発電に切り替えるには、発電量が不足するので、簡単には切り替えられないのだろう?
送電線の空き容量不足が課題となっている
送電線の容量不足が深刻になっている。日本経済新聞社が大手電力のデータを基にまとめたところ、北海道や東京など東日本で送電線の5~8割が空き容量不足に陥っており、新規に発電所をつくるのが難しい実態が明らかになった。増えつつある再生可能エネルギーに現在の送電網では対応しきれない。容量不足は再エネの普及の足かせとなり、国のエネルギー政策に影響を及ぼしかねない。
送電線は発電所から家庭へ電力を送る役割を担う。送電線は停電に備えて、普段はピークの容量の半分しか使わない。電力会社は発電所を作る際に、送電線を使う権利を確保する必要がある。今回の調査ではこの権利が全て埋まり、再生エネなどの新設の発電所につなげない送電線を「空き容量不足」とした。
具体的には電力各社が自社のホームページで公開している送電線の空き容量の目安などのデータを基に、各地域の主要な送電線のうち、何割が容量不足の状態にあるかを調べた。
関東や東北では5割、北海道では8割近くの送電線が容量不足となっていた。西日本では関西と中国が2割程度の不足で、九州や北陸、四国では主要送電線では容量が確保されていた。
関東は首都圏の需要をまかなう大型火力発電が集中し、東北や北海道は風況が良くて風力発電が多く、空きが少ない。主要送電線に空き容量があっても、発電所から主要送電線につなぐまでの細い送電線が目詰まりしている例も全国である。
容量不足にはいくつかの理由がある。1つめは送電線の権利は先着順で埋まる制度の問題だ。送電線の整備は1970年代から本格的に進み、新設計画のあった大型の火力や原子力発電所で権利が埋まった。電力大手は原則、廃炉を決めた原発の権利は手放すが、未稼働でも今後の再稼働を目指す原発の権利は維持している。
2つめは発電の実態の変化だ。この10年で、太陽光や風力発電などの再生エネが普及し始めた。再生エネの発電所は山奥や過疎地が多く、現在の送電網では対応しにくいケースも多い。
そしてこの再生エネが急激に増えている。2012年に再エネの固定価格買い取り制度(FIT)が導入され、各地で太陽光や風力発電などの新設が相次ぎ、発電量が一気に増えた。
電力大手は再エネ事業者などが新規に発電所をつくる場合、容量不足の地域では送電線の整備にかかる費用を一部求めている。ただ、再エネ事業者からは「大手が送電線を増強しないせいで、発電所が増やせない」といった不満が出ている。
そのため国や電力会社は送電線の運用を見直し、空き容量を生み出す仕組みの運用を始めている。東北電力は普段は稼働していない石油火力発電所などの送電線の使用枠を一時的に開放する仕組みを導入した。この結果、空き容量が大幅に増えたエリアもあった。停電などの際に使う予備容量を一部使う試みも出始めている。
電力大手が整備した送電網は老朽化が進むうえ、太陽光や風力は天候によって発電量が変わり安定しないため送電線に負荷がかかりやすい。勢力を増す台風などへの耐性が弱まりつつある。
大型の火力や原子力発電所だけの「集中型」から、太陽光や風力などが様々な場所で発電する「分散型」へと発電の実態が変わる中で、つくった電気を有効活用する送電線の在り方が求められている。