日経によると『中国の決済、スマホ要らずの「顔認証」時代へ。完全監視社会へまた一歩』とのこと。中国の技術の進歩、加速度がつき始めたような感じがする。唯、顔認証や指紋認証あるいは手の平の静脈による認証などの基盤技術は、日本は10年も前から細々やっていて、精度や認識率は素晴らしいものになっている。問題は、日本の社会が取り入れる度量がなく、どっかがやれば導入すべっかという経営姿勢だから、基盤技術までもが遅れ始めている。
日本の後進国化は経営陣の問題だけでなく、一般日本人の旧時代性ではなかろうか?
以下、日経の記事の引用::::::
スマートフォンによるキャッシュレス決済が進んだ中国で、今度はスマホも使わずに決済ができる「顔認証決済」が広がり始めた。コンビニの会計カウンターでは、タブレット端末に自分の顔を映すだけで決済が済み、導入店は約1千店に達した。切符を使わずに顔認証で改札を通れる地下鉄も増え、顔認証決済の利用登録者は1億人を突破した。欧米ではプライバシー保護の観点から普及を法律で制限し始めたが、中国は顔認証の利便性を訴える。政府は普及を急ぎ、一段と厳しい監視社会をつくる狙いもあるとみられる。
コンビニ大手「セブンイレブン」は5月から、広東省など中国南部を中心に顔認証で決済ができる店舗整備を進め、現在約1千店舗で利用が可能となった。店員が会計カウンターで、お客が選んだ商品をバーコードで読み込むまでは従来と同じだが、その後が早い。お客はレジに置かれたタブレット端末に自分の顔を映せば、一瞬で支払いが完了する。スマホの専用アプリに事前に顔写真を登録しておくだけで利用できる仕組みだ。
顔認証で買い物ができる自動販売機も増えてきた。「顔認証元年」と位置づけ、普及を推進する政府も後押しし、利用は公共交通の地下鉄でも始まった。
「混雑する通勤時間帯でも、改札の出入りがスムーズでとても便利です」。広州市在住の女性会社員の何さん(23)は9月に市内の地下鉄で始まった「顔パス改札」の感想をこう語った。改札の上部にタブレット端末が設置され、利用者は改札を通り抜ける際、タブレットを見るだけで運賃の支払いが済む。北京や上海でも試験導入が始まり、来年は一気に普及する見込みだ。こうした動きから、2017年ごろから広がったスマホ決済も、今後は顔認証決済へ2年ほどで移行するとの予測もある。
一方で課題は多い。顔認証決済の利用には、事前に自分の顔写真をスマホに登録し、企業側に提供する必要がある。顔認証を一気に普及させたい政府は、12月からスマホ購入・契約時に顔写真の提供も義務づける。この点が問題だ。中国では17年に「国家情報法」が施行し、政府は国家の安全保障を脅かすと判断した場合、中国企業から情報提供を受けることが可能になった。だが中国政府は同法を根拠に個人の信用情報などあらゆる情報を企業から入手しているとの批判が国内外から絶えない。
こうしたなかで顔認証決済が生活に浸透すればするほど、中国政府は今後、犯罪者のほか一般人さえも、全土に張り巡らした約2億台の監視カメラと連動させ、人の動きや居場所、志向をより正確に把握し、監視することが可能になる。14億人の中国は「超監視社会」に近づく。
欧米では、プライバシーの侵害や人種差別を助長するとして規制強化に動いている。欧州連合(EU)が18年に施行した一般データ保護規則(GDPR)は、顔データを特別な保護が必要な「生体データ」として取り扱いを厳しく制限した。人を特定するために顔データを使うのは原則禁止だ。米国では今年に入り、サンフランシスコ市など既に4都市が警察など公的機関による顔認証システムの利用を制限すると決定した。ただ、世界で技術覇権を握りたい中国は今後、欧米などの先進国は避け、新興国でまず中国の技術の普及を狙う可能性は十分ある。
米商務省は7日、中国政府が顔認証技術を利用できる中国製の監視カメラを使い、ウイグル族の監視など人権を侵害していると批判し、関連の多くの中国企業に輸出禁止措置を科すと発表した。中国本土への抗議が続く香港では監視カメラで行動を監視されないようマスクや帽子を着用しデモをする姿が多い。
今後、我々の生活の様々な場面に顔認証技術が広がるのは間違いない。利便性とプライバシー保護のバランスをどう取るか。中国では今、使い勝手が優先される。普及を急ぐ政府や企業を批判する声は少ない。(広州=川上尚志、比奈田悠佑)