2017年の記事ではあるが、CNetJapanにポストスマホは音声という、LINEの創業者の見解記事が出ていた。 当時は、スマートスピーカーが流行り始めており、音声コマンドでインターネットなどが簡単にできると言う事で、さらにAIを導入して、音声コマンドをより広範に高精度で行ったらというのがこの会談の結論。しかし、2020年は、TV 会議の復活で、スマホで、TV 会議飲み会。もしか、したら、日本人の50%はZOOMを使ってはいないだろうか? そして言えるのはポストスマホはスマホではなかろうか?しかしSY¥スマホはスマホではなくなる? ではどう変わる?それをとらえたものは、次の成功者だろう!
2011年の東日本大震災をきっかけに生まれたメッセージアプリ「LINE」は、長年にわたり電話とメールが主流だった日本のコミュニケーションスタイルを、わずか数年でガラリと変えた。そして2017年、LINEはAIと音声によって再び人々のコミュニケーションに革命を起こそうとしている。
上場しても「スピードは落ちてない」
――LINEが生まれてから間もなく6年が経とうとしています。現状をどのように評価していますか。
舛田氏 : おかげさまで数億人に利用していただけるコミュニケーションサービスになり、プラットフォームとしてゲームやスタンプなどの事業も生まれました。また、ニュース事業では王者ヤフーの背中が見えるところまで成長できましたし、そのほかの事業も順調に成長しています。これを一言で表すなら「幸運」だなと。努力はしてきましたが、会社全体として運が良かったと思います。
ただ、我々の経験から痛いほど分かっているのは、こういった幸運はサボればなくなる、変化をし続けなければなくなるということです。ですので、社内で「成長してよかったね」という空気が流れている期間があったかというと、恐らくこの6年間一度もなかったと思います。もちろん、(目標の達成や上場など)イベントごとにみんなで喜びましたが、そのあとみんなの顔を見るとすぐに戦闘モードになっているんですね。経営陣ではなく自分たち自身で、気が緩まないようにしている。次の10年目、20年目に向けて、そこは変わってはいけない精神だと思っています。
――2016年7月には上場も果たしました。社内外で変化や影響はありましたか。
出澤氏 : 変化という意味では、まだ我々が一番弱小な勢力ではありますが、世界的なプレーヤーと同じフィールドで戦える準備ができたと。非常に強いグローバルな企業と戦っていくには、ありとあらゆるリソースが我々には足りない状況でしたが、上場することで資金を調達して、新たな人材が入りやすい状況になってきましたし、日米同時に上場したことでグローバルな企業からもいろいろなオファーをいただけるようになりました。そこが一番大きなメリットというか、我々が得たものだと思います。社内の雰囲気についても舛田が言った通り、みんな高い目標を持っていて、ユーザーに価値を提供したいという思いが強いので、そこまで変わらないですね。
ニューヨークでの上場の様子
――上場するとスピード感が失われるのではないかという懸念もありましたが。
出澤氏 : それはないんじゃないかなと思います。往々にしてスピードが遅くなるのは、組織が肥大化する中で、縦割りになったり、官僚主義的になったりすることだと思います。そこは非常に工夫をしていて、まず役職の階層を薄くするために、経営陣、ミドルマネジメント、一般従業員の3レイヤーくらいに分けています。また、プロジェクト単位でチームビルドして、プロジェクトが終わったら解散するというフレキシビリティを担保する組織設計をしているので、スピードが落ちたとは思っていません。逆に、上場準備中のほうがプロセス上の問題で動けないこともあったので、そこから解放されてこの1~3月はサービスのリリースが続いていますし、動きも早くなっているように感じますね。
撤退する事業には「次がある」
――現状、伸びている事業と苦戦している事業をそれぞれ教えてください。
出澤氏 : 2016年に伸びたのはニュースですね。(公式アカウントを開設してニュースを配信できる)アカウントメディアに参画いただけるメディアが増えて、ニュースソースが多様化したことと、LINEに追加したニュースタブがかなりうまくいっていて、ユーザーからも非常に好評です。また、「LINE Pay」は1000万アカウントを超えましたし、「LINEモバイル」はリアル店舗も順調に立ち上がっています。
2月にLINEアプリを大幅刷新して「ニュース」タブを新設
舛田氏 : 上手くいかなかった事業はもう整理をしています。我々は判断が早い会社なので、この方向じゃないなと思ったら閉じるようにしています。ただ、注意してみていただくと分かると思うのですが、閉じたサービスの中で何もアクションをしなかったものはないんです。たとえば、フードデリバリーサービスの「LINE WOW」を閉じましたが、その領域を諦めたわけではなく、次に出前館という業界ナンバーワンの会社の筆頭株主になりました。また、過去には「LINE KIDS動画」というサービスがありましたが、そのチームが次に進んだのが「LINE LIVE」です。
実は終了するプロジェクトには、その理由と次のアクションが社内では走っているんです。1つ1つチャレンジして検証を進めるのが我々のやり方で、大きくどーんということはそこまでないですね。たとえば、LINEモバイルも最初から全国に店を開いたらいいじゃないかというお声もいただきましたが、やはり大事なのはそのサービスがユーザーニーズと合致しているかどうかです。合致していることが確認できれば、いつも通りアクセルを踏みますし、そのアプローチが違うならまた次のアプローチに切り替えるというのが、我々のある種ものを作っていく時のルールになっていますね。
――各事業の進捗も聞かせてください。LINEモバイルは、3月から全国の店舗展開やテレビCMを開始しました。“コミュニケーション”に続き、“通信”の領域もシェアを獲りにいくフェーズに入ったということでしょうか。
LINEモバイルではIoTを見据えていると舛田氏
舛田氏 : 「なぜ、LINEがモバイル事業なのか」というご質問をいまだにいただきますが、我々はスマートフォンで生まれたサービスで、スマートフォンによって成長してきました。ただ、日本におけるスマートフォンの比率は徐々に増えてはいるものの、まだまだ低い。私どもとしては、スマホユーザーが増えていけさえすれば、ユーザーに価値のある体験を提供できると思っています。
もう少し広い視点でみると、我々は「Closing the distance」というミッションを掲げていて、“人ともの”をつなぐと言っているんです。IoTの領域ですね。ここを考えると、当然そこはWi-Fiだけでは普及しきらないですし、そもそもWi-Fiが家に飛んでいるかどうかも分からないという方も非常にたくさんいる。その中で、IoT領域においてどのような形でLTEを普及させていくか。そういった観点から、LINEにとってモバイル事業は非常に重要な位置づけだと思っています。
――続いて、モバイル決済サービスの「LINE Pay」について。日本で資金移動業者が送金サービスを提供するには、送り手と受け取り手の双方が免許証などで本人確認をしなければならず、友人間などで気軽に送金するには適していません。この状況をどう考えますか
舛田氏 : まず、我々が考えているのは、スマートフォン上のウォレット(財布)になることです。そのためには、ユーザーのお金とつながっていなければいけませんので、クレジットカードやプリペイドカード、銀行などとの連携や整備に時間をかけてきました。入金があれば出口が必要ですので、2016年の後半からはコンビニと協力して、いろいろなところで(プリペイド形式の)「LINE Pay カード」によるオフライン決済を可能にしました。
「LINE Pay カード」
個人間送金もそうした手段の1つだと思っています。個人間送金だけで何かをしようという考えはまったくないんですが、ウォレット機能の1つとして個人間送金や個人と法人間の送金なども視野に入れています。本人確認についても、「ここまでの使い方については認証が必要ですよ。ただ、この使い方については認証は少し軽くできるんじゃないか」といったことを、まさに我々の中で日々検討を進めているところですので、どんどん使いやすい形に変わっていくと思います。サービスのどこでつまづいたか、どこでアクティブになったかという、ユーザーの利用データもかなりの量が溜まってきているので、そこからいろいろな展開を考えています。
ポストスマホは「音声」--LINE流の攻め方
――3月に発表したクラウドAIプラットフォーム「Clova」についても詳しく聞かせて下さい。AI事業への本格参入を決めた狙いは。
出澤氏 : LINEはスマートフォンで大きくなった会社ですが、スマートフォンの“次”を真剣に考えるタイミングにきていると思っています。IoTによってあらゆるものがインターネットにつながり、ディープラーニングから始まるAIも進化しています。その中で、ポストスマホの世界でいうと、次は“音声”がひとつの大きなテーマになるという確信があって、PCのOSやスマートフォンのアプリストアよりも非常に大きいエコシステムが生まれると思っています。それは、「Amazon Echo」や「Google Home」など海外のトレンドを見ていても分かります。
そこに対して我々もチャレンジするということです。音声の領域では、これまでのインターネットよりも生活に溶け込んでいく、日常生活で普通に会話をする感覚でものとつながります。そういう世界では、ローカルな感覚や言語、コンテンツが重要になりますが、我々は(世界各国でメッセージサービスを展開することで)そこに強みを持っています。社内で議論して、次に挑戦する領域として相応しいだろうと判断し、現在は舛田と慎(同社取締役の慎ジュンホ氏)がリードしてプロジェクトを進めています。
ポストスマホは“音声”が大きなテーマになると出澤氏
舛田氏 : 恐らくスマートフォンが1人1台の世界になったからこそ、そこですべてを完結させることが難しくなってくると思うんです。実際、下を向いてスマホをずっと見続けることは生理的に不自然ですよね。情報とインターフェースの関係を考えていくと、ディスプレイやタッチ操作に縛られている世界の次に行く必要があると思います。(音声認識について)すごく原始的なことだと思うんです。声であるとかモーションであるとか、視覚も含めて、そういったところがデバイスとうまくリンクして、いろいろな情報やサービス、コンテンツなどを呼び出せる。そこで重要になるのがコミュニケーションです。
音声でやり取りするには、コミュニケーションがなければいけませんので、そこはLINEを提供してきた我々の得意分野なんだろうと。そして、音声で検索をしてレコメンドして返すところも、グループのNAVERが10年以上やり続けてきた、ある種のコアテクノロジです。この2つのコアテクノロジと、我々が日本と韓国で大量に保有しているデータを活用して、どのようにAIに学習をさせていくか。たとえば、コマースで取れるデータは確かにマネタイゼーションでいうと金の卵ですが、人はただものを買うだけではありません。環境に溶け合う状態を作り出すにはもっと幅広いデータが必要なのです。データの量と種類に関しては、恐らく我々が日韓ともに1位ですので、非常に強みは出てくると思います。
そして、もう1つのコンテンツとサービスですが、音声デバイスとして、どういう体験がいいのかという答えはまだ誰も見つけられていません。これを見つけ出すには、クラウド側のAIとつながるサービスやコンテンツが一体でないといけない。我々は、キラーサービスとして日本ではLINE、韓国ではNAVERを持っていますので、音声デバイスが普及していく中で、グッドケースを作り出せるのではないかと思います。ただ、我々はデバイスのプロではありませんので、ソニーやLG、タカラトミー、そして“俺の嫁”(バーチャルホームロボット「Gatebox」)を開発するウィンクルなどの企業とコラボレーションすることで、デバイスからアウトプットまでのユーザー体験を一気通貫で提供できると思います。
バーチャルホームロボット「Gatebox」を買収することを発表
――お二人は「Amazon Echo」や「Google Home」を実際に使われたのでしょうか。また、その感想も聞かせてください。
出澤氏 : 当然ながら使ってはいて、やはりこの領域はくるよねという感想です。また、英語の認識精度をAmazon EchoとGoogle Homeで使い比べたりしています。ただ、それと同時に使い続ける必然性がなければいけないとも感じていて、そこをちゃんと見つけたいと思っています。
舛田氏 : (使ってみて)私もありだなと思うのですが、やはりまだ正解ではないと思います。音声でできることって少ないんです。非常に便利なんですが、(スマートフォンに比べて)求めるアウトプットに対する情報量が当然少なくなるんですね。音声だからこそのキラーサービスやコンテンツが必要で、大体思いつくのが、リマインダや音楽、占い、ニュース、天気予報、あとはスマートホームなどの用途ですね。この辺りは、音声デバイスのかなり表面的な部分だと思っています。音声スピーカ「Amazon Echo」(左)と「Google Home」(右)
なので実は私、いま非常に楽しいんです。これまではスマートフォンを中心に、LINEと連携させたらこうなるよね、ということを考えてきたんですが、音声デバイスはゼロイチで考えられます。たとえば、リビングだったら、ベッドルームだったらどういう使い方なのか。もし、スピーカではなくウェアラブルデバイスのような形だったら、音声はどこまで助けてくれるんだろうということを模索しています。
結局、音声デバイスってただのコマンドマシーンなんですよ。要求すれば答えてくれますが、それ以上でもそれ以下でもない。これをもっともっとアクティブにしていくには、デバイス側からの発話が必要です。つまり、ルールベースとコマンドがハイブリッドでなければいけないんです。なので、Clovaはハイブリッド型で設計していて、ここが差別化のポイントになると思います。
Clovaはハイブリッド型で設計している
心地よい距離でパートナーとしてそばに置いておきたいと思われるには、コミュニケーションが重要ですし、そこには表現力も必要になると思います。もしかしたら、いろいろな“人格”があるべきなのかもしれません。実は(音声認識は)ここの戦いなんじゃないかと思っています。搭載されているレコメンデーションの精度については、どれだけデータを学習させ続けるかということなので、最終的には各社それほど変わらなくなっていくはずです。
――夏に発売するAI搭載スピーカ「WAVE」では何ができるのでしょう。
舛田氏 : 日韓で少し違ってきます。NAVER側が持っているサービスは韓国版WAVEにつながりますし、日本ではLINEが提供するサービスの一部がつながります。(メッセージアプリの)LINEは当然、使えるようにします。あとは音楽やニュースなど、まさにベーシックなサービスですね。WAVEに関していうとショーケースというか、まずはIoTデバイスのプロトタイプとして開発しています。なので、夏に発売するWAVEは、かなりオーソドックスなものになると思います。これをベースに、さまざまなパートナーと、それぞれのデバイスに必要なコンテンツやサービスを出していくマイルストーンになります。恐らく、2018年ごろからいろいろなデバイスが出てくると思います。
AI搭載スピーカ「WAVE」
――WAVEはいくらで販売するのでしょうか。
出澤氏 : 良い質問ですね(笑)。
舛田氏 : (最新の)iPhoneのような値段ではないですよ。そこまで手が届かないものにはしません。ただ、いままさにどういうビジネスモデルにすべきかを考えているところです。