多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

四谷に移転した韓国文化院

2009年08月18日 | 博物館など
韓国文化院は駐日韓国大使館の一部門で、日本における「韓国文化の総合窓口」の役割を担っている。1979年池袋サンシャイン60で開院し、95年に南麻布に移転した。30周年に当たる今年5月、四谷三丁目に移転オープンしたばかりである。ビル正面のカーブは、韓国の伝統民族舞踊「僧舞(スンム)」をイメージしたデザインだそうだ。

まず4階に上がると、ビルの中に「サランバン」が復元されている。サランバンとは、朝鮮王朝時代の書斎や応接間(男性の居間)である。屋外に出られるようになっており3階屋上に当たる部分にマダン(広場)とハヌル庭園が造園されている。サザンカ、キャラ、スズラン、サツキ、ライラック、ハイビャクシン、クロマツなどの木や植物が植えてある。ちょうど小雨が上がったところで緑が美しかった。マダンの正面には、陶器のかめが大小合わせて22個並んでいた。

メインは3階の図書映像資料室である。わたしは杖鼓(チャング)と伽耶琴(カヤグム)の音楽を聞きたくてやってきた。係の人に聞くと、CDだけでなくDVDもあるとのことだったので見せてもらった。当然ながら機器は韓国製で、DVDプレーヤーはサムスン、ディスプレーはLG製品だった。
カヤグムは日本の琴とよく似ているが、音はもっと太く、素朴で力強い。8人で合奏している曲を聴いた。
チャングは鼓を大きくしたもので、日本のように手で打つのではなくバチで打つ。新体操のような長いリボンを宙に舞わせ、ピリ(篳篥<ひちりき>に似た管楽器)、ケンガリ(鉦)と合奏しながら踊っていた。
またプク(太鼓)と独唱によるパンソリも見た。ウィキペディアによれば、パンソリのパンは多くの人々が集まる場所を意味し、ソリは音を意味する。19世紀に人気のあった音楽で、口承文芸のひとつである。黒い帽子の男が座ってプクをたたく。右手はバチ、左手は手のひらで、木の胴を打つこともある。歌は演歌か浪花節のように「情」を出す語り物だった。紺と白のチマチョゴリの女性が扇子を振りながら泣き、語り、詠嘆していた。

図書のほうは、韓国語による図書15000冊、日本語による図書8000冊を所蔵している。東亜世界大百科辞典18巻、韓国開化期教科書叢書20巻が書棚に並んでいた。背表紙は日本の本と同じだが、本を開くと中はハングルでまったく読めなかった。
韓民族独立運動史資料集の別巻2―9巻は、全ページ治安維持法や国民総動員法で検挙された朝鮮人の身上記録だった。たとえば2巻は「金」という姓の人ばかりで、氏名、住所、生年月日、住居はもちろん、罪名、刑務所名、入所年月日、出所年月日、指紋番号、身長などのほか、前科、顔写真までそのまま掲載されていた。1冊600pほどなので、すごい人数の人が刑務所に収監されたわけである(なかには不起訴の人もいた)。またこの資料集16巻には、1919年(大正8年)の三・一独立運動の訊問調書が掲載されている。「京城天道教中央総部ニ来タ事ガアルカ」「本年3月4日ニ朝鮮独立万歳ヲ唱ヘツツ行進シタノカ」「左様デス」といった調子だった。
駐韓日本公使館記録40巻は、1冊のなかで前半がハングル、後半は原文である日本語だった。明治28年の記録には漢訳文も掲載されていた。 
「千葉民団半世紀」「民団新宿60年の歩み」「朝鮮統治資料集」は日本語、「大韓民国史資料集 32巻」「南北関係資料集」は英語である。歴史的に翻弄されたため、このようにいろんな言語の書物が収納されていた。
伊藤亜人琉球大学大学院教授が寄贈した300冊以上の本が並んでおり、マンガも含まれていた。雑誌もたくさん並んでいた。女性誌の表紙デザインは日本の雑誌そっくりだった。総合誌は、日本の「世界」「中央公論」などの雑誌より種類が多く、ページも分厚かった。言論の自由が生きているからだろうか。
調査の目的を絞って来館すれば大きな収穫が得られそうな資料室である。

資料室の奥の一角に観光コーナーがある。韓国紹介のビデオが流されていた。たまたまわたくしが見たときは、農村の草取りと、とうがらし、とうもろこし、梨などの収穫の風景だった。太鼓をたたき歌を歌いながらの収穫作業で、伝統音楽がいまも生きているようだった(観光用の映像である可能性もあるが)。
パネル展示で、慶州、仏国寺と石窟庵、宗廟(チョンミョ)などの世界遺産、2012麗水世界博覧会、グリーンツーリズムなどが紹介されていた。また韓国版「花より男子」の等身大パネルも設置してあった。わたくしがまったく知らないSUPER JUNIORI LOVE BIG BANGのパネルも展示されていた。
2003年の韓流ブームが、日本のさらに若い世代にも及んでいるようだ。7月初め、「東方神起の東京ドーム・コンサートチケット譲ってください」と書いた画用紙を大きく掲げる女性を、水道橋駅前で目撃した。

住所:東京都新宿区四谷4-4-10
電話:03-3357-5970
●図書映像資料室
開館日:月曜日~土曜日(祝日、韓国3大節(3/1, 8/15, 10/3)は休館日)
開館時間:10:00~17:00 (水曜日は21:00まで)
入館料:無料
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北の三角地帯・赤羽まるます家 | トップ | パペットが登場した8.15行動 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

博物館など」カテゴリの最新記事