東横線・学芸大学西口を下りると女子高生の華やいだ声が聞こえてきた。下馬の学芸大学付属高校の生徒のようだった。わたくしがこの駅で降りるのは初めてである。東横線沿線だったのでてっきり世田谷区だと思ったらこの駅の住所は目黒区鷹番である。鷹番の南の碑文谷にはダイエー東京1号店の碑文谷店がある。西口から3分のところに件(くだん)という居酒屋がある。店の前には、薦かぶりの樽が置かれていた。
この店は「オータ教授の居酒屋ゼミナール」で知った。ネット検索すると、いつも混んでいると書かれていたので6時半ごろ行ってみたところ、この日はたまたま一番客だった。
キャパは、カウンター7席、テーブルが4つ、そのほかエキストラ用に半分屋外のテーブルが2つある。
7人がけのカウンターの中央に座った。まだ開店6年なのに、テーブルも椅子もかなり使い込まれている。よほど客の数が多いからなのだろう。テーブルの高さはちょうどよいくらいだが、マスターいわく「テーブルの下で足を組みたい」という若い人がときどきいるので若干高めにし、ギリギリ足を組めるようにしているそうだ。
メニューといっしょに水が出てくる。コップのなかがキラキラ光り、見た目美しい。日本酒の種類が多い店なので、利き酒会で口をすすぐような使い方なのかと思ったら「和らぎ水」というもので、日本酒造組合中央会のHPにも出てくる「由緒」正しい水だそうだ。たしかに呑ん兵衛にとっては、一呼吸おけるのでありがたい。
酒だけでなく料理も豊富だ。メニューをみただけではよくわからない珍しい料理があった。たとえば高知のでびらカレイ、あぶって出されたものは5センチくらいの小さなカレイが4-5枚だった。「左ヒラメの右カレイ」という言葉があるが、でびらカレイはは右ではなく左なのだそうだ。ちぎって食べたが、後で調べると「でびら酒」という呑み方があるそうだ。「香ばしい香りが熱燗の旨みを引き出す」とあるので、骨酒のようなものだろうか。
岩中(いわちゅう)豚の炙り焼きもわからなかった。岩中は岩手中央畜産の略だそうだ。
この店の料理はなんでもうまい。たとえば「今日のおひたし」は水菜だった。色鮮やかでうまかった。名物のおでんも上品だが濃い味だったし、季節ものの生カキもミルクが多く美味だった。いっしょに行った友人は「出し巻き玉子」を頼み「うまい、うまい」と食べていた。一切れもらうとたしかにうまかった。材料を厳選したうえ、味付けにも一工夫加えているのだろう。
岩中豚の炙り焼きと塩むすび。和らぎ水がキラキラ美しい
料理の味がよいので女性のグループ客が多い。マスターにお聞きすると女性6:男性4、すなわち女性優位の居酒屋なのだそうだ。わたくしが行く店で、女性のほうが多い店は初めてである。
マスターに、女性の日本酒ファンと男性との違いを聞いてみた。女性は、料理により酒を。変えるそうだ。もちろ酒を飲むよりおしゃべりの時間が長く、男性と比較し滞留時間が長いせいもあるだろうが、合理的な選び方である。ただマスターのように女性心理がよくわかる店主でないと対応できないかもしれない。
この日飲んだ日本酒は、綾花(久留米 旭菊酒造)、喜久酔(藤枝・青島酒造)、蓬莱 (神奈川県愛川町・大矢孝酒造)の3種類、はじめの2つはマスターに淡麗な酒を相談し教えていただいた。どういうわけか2杯で酔ってしまい、仕上げに生ビールを飲み塩むすびをいただいた。これもノリがパリパリしてとてもおいしかった。生ビールも泡がクリーミーでのど越しがよかった。
さてお勘定をして帰ろうかというとき、ふと神棚に供えられている「蓬莱」に目が行った。この店でどうやら特別扱いの酒のようなので、さぞうまい酒ではないかと考え、追加でチーズといっしょに注文してみた。残念ながら酔いが回っていて味まではわからなかった。(酔っていなくても、じつは酒の味などほとんどわからないのだが)。きっとうまい酒だったはずだ。
そのとき一度杯を戻したあとだったので、新しく杯を持ってきてくれた。その杯は、なんと上原浩さんのサインいりのものだった。「酒は純米、燗ならなお良し」、味わい深いことばだ。
上原浩さんは、1924年鳥取県生まれ。広島財務局鑑定部を経て、鳥取県工業試験場に勤務された方で、すでに故人である。どうしてこの杯がこの店にあるのか聞いたら、業界の会でもらったとのことだった。
わたくしは20代のときはもっぱら冷しか飲まなかった。しかしいまはたいてい燗酒、夏だけ常温である。
電話: 03-03-3794-6007
住所: 東京都目黒区鷹番3-7-4 関口ビル
営業: 17:00~00:00、月休
生ビール(サッポロ黒ラベル)550、生ビール580、日本酒多数、焼酎650
この店は「オータ教授の居酒屋ゼミナール」で知った。ネット検索すると、いつも混んでいると書かれていたので6時半ごろ行ってみたところ、この日はたまたま一番客だった。
キャパは、カウンター7席、テーブルが4つ、そのほかエキストラ用に半分屋外のテーブルが2つある。
7人がけのカウンターの中央に座った。まだ開店6年なのに、テーブルも椅子もかなり使い込まれている。よほど客の数が多いからなのだろう。テーブルの高さはちょうどよいくらいだが、マスターいわく「テーブルの下で足を組みたい」という若い人がときどきいるので若干高めにし、ギリギリ足を組めるようにしているそうだ。
メニューといっしょに水が出てくる。コップのなかがキラキラ光り、見た目美しい。日本酒の種類が多い店なので、利き酒会で口をすすぐような使い方なのかと思ったら「和らぎ水」というもので、日本酒造組合中央会のHPにも出てくる「由緒」正しい水だそうだ。たしかに呑ん兵衛にとっては、一呼吸おけるのでありがたい。
酒だけでなく料理も豊富だ。メニューをみただけではよくわからない珍しい料理があった。たとえば高知のでびらカレイ、あぶって出されたものは5センチくらいの小さなカレイが4-5枚だった。「左ヒラメの右カレイ」という言葉があるが、でびらカレイはは右ではなく左なのだそうだ。ちぎって食べたが、後で調べると「でびら酒」という呑み方があるそうだ。「香ばしい香りが熱燗の旨みを引き出す」とあるので、骨酒のようなものだろうか。
岩中(いわちゅう)豚の炙り焼きもわからなかった。岩中は岩手中央畜産の略だそうだ。
この店の料理はなんでもうまい。たとえば「今日のおひたし」は水菜だった。色鮮やかでうまかった。名物のおでんも上品だが濃い味だったし、季節ものの生カキもミルクが多く美味だった。いっしょに行った友人は「出し巻き玉子」を頼み「うまい、うまい」と食べていた。一切れもらうとたしかにうまかった。材料を厳選したうえ、味付けにも一工夫加えているのだろう。
岩中豚の炙り焼きと塩むすび。和らぎ水がキラキラ美しい
料理の味がよいので女性のグループ客が多い。マスターにお聞きすると女性6:男性4、すなわち女性優位の居酒屋なのだそうだ。わたくしが行く店で、女性のほうが多い店は初めてである。
マスターに、女性の日本酒ファンと男性との違いを聞いてみた。女性は、料理により酒を。変えるそうだ。もちろ酒を飲むよりおしゃべりの時間が長く、男性と比較し滞留時間が長いせいもあるだろうが、合理的な選び方である。ただマスターのように女性心理がよくわかる店主でないと対応できないかもしれない。
この日飲んだ日本酒は、綾花(久留米 旭菊酒造)、喜久酔(藤枝・青島酒造)、蓬莱 (神奈川県愛川町・大矢孝酒造)の3種類、はじめの2つはマスターに淡麗な酒を相談し教えていただいた。どういうわけか2杯で酔ってしまい、仕上げに生ビールを飲み塩むすびをいただいた。これもノリがパリパリしてとてもおいしかった。生ビールも泡がクリーミーでのど越しがよかった。
さてお勘定をして帰ろうかというとき、ふと神棚に供えられている「蓬莱」に目が行った。この店でどうやら特別扱いの酒のようなので、さぞうまい酒ではないかと考え、追加でチーズといっしょに注文してみた。残念ながら酔いが回っていて味まではわからなかった。(酔っていなくても、じつは酒の味などほとんどわからないのだが)。きっとうまい酒だったはずだ。
そのとき一度杯を戻したあとだったので、新しく杯を持ってきてくれた。その杯は、なんと上原浩さんのサインいりのものだった。「酒は純米、燗ならなお良し」、味わい深いことばだ。
上原浩さんは、1924年鳥取県生まれ。広島財務局鑑定部を経て、鳥取県工業試験場に勤務された方で、すでに故人である。どうしてこの杯がこの店にあるのか聞いたら、業界の会でもらったとのことだった。
わたくしは20代のときはもっぱら冷しか飲まなかった。しかしいまはたいてい燗酒、夏だけ常温である。
電話: 03-03-3794-6007
住所: 東京都目黒区鷹番3-7-4 関口ビル
営業: 17:00~00:00、月休
生ビール(サッポロ黒ラベル)550、生ビール580、日本酒多数、焼酎650