多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

昭和のくらし博物館

2008年02月29日 | 博物館など
大田区南久が原にある昭和のくらし博物館を訪れた。この博物館はいまから9年前の1999年2月28日に開館した。台所用品、裁縫の道具など日常生活に使われた昭和30年前後の日常用品が展示されている。最大の特色は建物そのものである。

6人家族が1951年(昭和26年)8月から実際にくらしていた住居で、館長は長女が務める。1階3間2階2間の建坪18坪(約60平方メートル)、当時の住宅金融公庫融資限度枠ギリギリの規模と予算で建てられた、初期公庫住宅として典型的な設計との説明がある。設計者は父親だった。
この博物館を訪れたのは3回目である。黒の板壁が、西宮にあった祖母の家とよく似ていてなつかしかった。

私がもっとも気に入っているのは2階にある4畳半の子ども部屋だ。この部屋は高校生、中学生、小学生の三姉妹が使っていた。座り机には富山房の詳解漢和、三省堂の明解国語辞典が置いてある。机は2つだが3人でどのように使っていたのだろう(小学生は1階のちゃぶ台かな)。
壁には「こぶたのとんちゃん のりものすごろく(「幼稚園」昭和29年正月号の付録 小学館)が貼ってある。足でころがすスクーター、バス、豆自動車、ロバの車など当時の子ども向け乗り物の楽しい絵柄だ。表面に絵が描かれたピクチャーレコードが数枚展示されていた。たとえば横浜港から異人さんに連れられていった「赤い靴」の女の子、ねずみの大将が立っている「俵はごろごろ」など童画風の絵である。ベビーピアノが6台もあった。50代くらいの女性グループは「なつかしい、なつかしい」の連発で「猫踏んじゃった」などを弾いていた。
ちょうど、とても風の強い日で窓ガラスの木枠がガタガタ不気味な音を立てていた。そういえばこんな音ときどき聞いたなあ・・・。窓の外には庭の樹木、そして近所の住宅街が展望できる。
2階のもう一間は下宿人用の貸間として使用された。いまは企画展示スペースとなっており、「家で病気を治した――家庭看護の時代」展をやっていた。農村医療、結核と急性伝染病、助産婦(産婆)の歴史、町医者の建物などが展示されていた。かつては自宅出産は普通だった。1896年(明治29年)新産婆という制度が出来、1年以上学術修練して試験に合格した20歳以上の女子に資格が与えられれることになった。女性専業の職業ということから、植民地下の台湾原住民のうち成績のよい男子は警官、女子は助産婦にした話を思い出した。
町医者の建物は、大正から昭和初期に建造された医院の写真の展示だった。開業医は洋風家屋を医院にすることが多く、いま残っていれば文化財ものだろう。(たしか青梅の赤塚不二夫会館は入院施設のある外科病院の建物を使っていたが、洋風ではなかった)
急な階段を下りると玄関脇に父の洋間の書斎、ちゃぶ台のある茶の間、氷式冷蔵庫や床下収納がある台所、座敷がある。南側の板の間には1933年製のシンガーの足踏ミシンが置いてあった。当時とても高価だったそうだ。
犬山の野外民族博物館リトルワールドの野外展示は「たったいままで家族が生活していたが、ちょっと人間だけいなくなった家屋により諸民族の生活を展示する」がコンセプトだが、この博物館はまさに人間のくらしを再現する施設である。
その先には1992年に増築した新しい談話室がある。ちょうど雛祭りの季節なので「春待ちどおし ひなまつりのおかけじ」展をやっていた。おかけじとは北関東地方で、初節句に男の子には武者絵、女の子には女性の絵を贈って並べて飾る掛け軸である。わたくしは初めて目にした。
スタッフの方がていねいに暖かいお茶とカリントウを出してくださった。座敷机には小泉館長の数多い著書、背中の壁にはなぜか「9条の会」のポスターが貼ってあった。
50代の女性グループは3つ玉、4つ玉のお手玉に挑戦していた。
なお増築部分の2階は亡くなった知代さんのアトリエだったようで、ろうけつ染めの作品が展示されていた。

☆この博物館から50mくらい歩いたところにとてもレトロな2階建てアパートがあった。廊下が、いまの建物の2倍くらいありそうだった。椎名町にあったトキワ荘はこんな建物だったのだろうか。隣の鵜ノ木八幡神社は紅梅が咲き誇っていた。


住所:東京都大田区南久が原2-26-19
電話:03-3750-1808
開館日:水曜日~日曜日
開館時間:10:00~17:00
入館料:大人500円、高校生以下300円
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